第65話

 半日ほど進んだ頃、馬車は馬の嘶きで急に停まった。どうやら街道に魔獣が出たらしい。魔獣除けの玉が投げられたがどうやら効果がないので暫く停車する事になった。


街道を通る馬車には安全が確保されるように街道にも馬車にも魔物が嫌う匂いや音などが付けられている。中には乗客の魔力を少しずつ貰い結界を張って移動する馬車もある。この馬車は魔獣から見えにくくする隠ぺいの魔法が掛けられているらしい。


暫く待っていたが、魔獣はまだ留まっているらしいので私達は御者に話をして様子を見に行くことにした。


「先輩、ブラッディベアの縄張り争いだと言っていましたよね。依頼書にありましたよね?」


「そうだな。ここで討伐して一枚減らしておくか。ブラッディベア一頭だ。この時期、どうやら繁殖期のようで縄張り争いが色々な所で起こるらしい。今回もそのうちの一つだろう。ファルス、剣を磨いて貰ったんだ試してくればいい」


「えー俺?分かった。行ってくる。試し切りって事だよな。そう言われるとワクワクしてくる」


 ファルスはそう言いながら鞘から取り出してブラッディベアの前に立った。この時期の繁殖期の魔獣はいつもより気性も荒い。ファルスを見つけると唸りながら攻撃態勢を取り、突進してきた。ファルスはというと、ブラッディベアの攻撃を避けた瞬間に反撃する。


すると、いつもなら反撃の際に切る傷は致命傷を負う程ではないのに、ブラッディベアの肩口から大きく血が吹き出し、そのまま倒れた。


「えっ!?おい、嘘だろ?」


ファルスが驚いて口にしている。


「ファルス、驚いていないで止めを刺せ」


先輩の言葉にハッとしてすぐに首を落とす。


「おぉぉぉ!!凄く切れる。切れ味が凄いことになっている」


 ファルスは驚きと興奮に包まれているわ。そんなに切れ味が凄いのね。私も敵を切ってみたくなったわ。アルノルド先輩がクマを焼いて血の匂いを消して街道脇に埋めた。御者さんはお礼を言ってまた移動し始めた。


冒険者が一緒だと心強いのだろう。さっきより皆の不安は和らいだようで車内からは笑い声や歌声も聞こえてきた。そして到着した北部の村。一日中の馬車はさすがにお尻が痛いわ。


 村についたのは夜になる頃だったので私達はそのまま宿を取ることにしたの。もちろん私は1人部屋でファルスと先輩は相部屋になった。食堂で食事をしながら明日の朝の打わ合せを行い、シャワーに入ってからベッドへ入った。流石に移動日はこんなもんね。なんだかんだで疲れてすぐに眠ってしまったわ。

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