第22話

 そうして邸で過ごす事1週間。無事に買い物も済み、やることが無くなったので朝の鍛錬以外は静かに部屋で過ごしたわ。


ようやく寮へ入る日となった。私とファルスは学生用の騎士服に帯剣して執務室へと向かった。執務室では父と珍しく母、オットーがいたわ。きっと私を待っていたのね。


「お父様、お母様。私は寮に行ってまいります」

「あぁ、無理はするな。何かあったらいつでも帰ってこい」

「勉学に励むのですよ」

「はい」


そこに親子の別れのような、惜別の思いはなかった。私とファルスは父と母に一礼した後、私達はさっさと馬車に乗り込んだ。

父も母も眉1つ変える事無く、淡々としていたわ。彼等にとってはただの通過儀礼のような感じにも見える。結局あれから父は私には何も言ってこなかったわ。貴族の家族とはこういうものなのかしら?


「ようやく寮生活が始まるのかぁ。楽しみだよな」

「そうね。短い間だったけれど、息苦しかったわ」


 私達は寮の入り口で侯爵家の馬車を降り、御者にお礼を言ってそのまま寮へと向かった。寮はもちろん男子寮と女子寮とで別れている。女子寮の方が塀に囲まれていたり、結界が張られていたり、警備兵がいたりと厳重となっている。


そして貴族寮と平民寮と別れているらしい。事務から聞いた話によると貴族寮は1人部屋のようで侍女を付けていいようだ。もちろん風呂場もキッチンも備えている。私の場合はというと貴族寮に入っても良かったみたいだけれど、平民寮に入ったわ。もともと平民になるつもりだったしね。


「じゃぁファルス、夕ご飯に食堂で」

「おう、またあとでな」


 私は女子寮の寮母さんに寮での暮らし方の説明を聞いて一番上の階の部屋へと入っていく。平民でも上位成績者は上階になるらしいわ。私は魔法鍵を扉に掲げて開錠して部屋に入る。これは最初に必要な手順らしいわ。


 次からは私自身と登録許可をした人(例えば侍女)は鍵が無くても入れるようになるらしい。魔法でどうやっているのかしら?ちょっと気になる所よね。そうして部屋に入ると荷物がドサリと置かれていたわ。


 少しワクワクしながら荷物を戸棚やクローゼットに仕舞っていく。部屋はとても綺麗な部屋だった。最低限の物が置かれた感じだけれど部屋はまぁまぁ広い方かしら。部屋の内装については有能な魔術師の卵や錬金術士の卵は部屋の広さも含めて色々とカスタマイズするらしい。

扉を開けると森が広がっていたり、ミステリアスな空間が広がっていたりするのだとか。寮母さんが偶に部屋の管理の時に訪れて発覚し、叱られるらしい。


そう寮母さんが言っていたわ。私には出来そうにないけれどね。片づけをずっとしていたら気づいたら時間が経っていた。


……そろそろ夕食かしら。


 私は区切りの良いところで片づけを止めて食堂へと足を運ぶ。どうやらここでも貴族と庶民は違うらしい。まぁ、庶民は無料だしね。平民でも成績上位者は貴族の食堂でも食べられるらしいのだが、何だか食べづらそうな気もするわ。


因みに上位成績者には校章にリボンが付いていてそれが目印になっているの。

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