第21話

「え?防具?」

「……やっぱり何にも考えていなかったんですね」


えっと、防具の存在は知っているわ。今まで使った事がなかっただけよ。私もファルスもは考えてもいなかったわ。レコはおいおいと驚いて様子。


「レコ、防具は必要なの?」

「当たり前です。これから先命がいくつあっても足りませんよ」


私の質問にレコは大袈裟に溜息を吐きながら肩をすくめているわ。


「まぁ、今まで子供の体型で防具が合わなかったし、そこまで強い魔物と戦う事はなかったですからね。ついでに防具も見に行きますか」


 そのまま私達はレコと一緒に防具屋へ向かう事になった。どうやら王都に住んでいた頃、行きつけにしていた防具屋らしい。武器屋の4軒隣の古ぼけた防具屋に入っていった。


レコ曰く、頑固ジジイで客を選ぶが防具は一級品なのだそう。




 ギギギと今にも壊れそうな扉を開くとカウンターの向こうにおじいさんが1人座っている。店には防具という防具は飾られていない。不思議に思っていると、


「ジジイ、生きていたか」

「レコか、久しぶりだな。今日はどうしたんだ」

「この子達に初心者防具を見繕ってほしいんだ」

「ツケにはせんぞ」

「お嬢様が一括で払うから大丈夫だ」


おじいさんは胡散臭そうにレコを見ている。確かにレコはちょっと胡散臭そうに見えるわ私でも。


「おい、坊主。ちょっと来い」


おじいさんはレコの後ろにいた私達に気づいたようだ。私達をジロジロと見た後、ファルスはおじいさんに呼ばれて前に出る。おじいさんはカウンターから出てファルスに剣を構えさせてじっと何やら見つめている。


「……合格だ。次は嬢ちゃんだ、おいで」


私はおじいさんに言われた通りに剣を構えたりした。


「ふむ、レコ。たまにはいい仕事をするんだな」

「たまに、は余計です。ジジイ」

「坊主は力任せに攻撃するタイプだから隙も多くなるな。覆うタイプの防具がいいだろうが、動きにくくなるから服の中に着られるような軽めの鎖帷子だな。嬢ちゃんは身体強化するのに特化しているようだから軽い物がいいな。革を中心にした胸当てとガンレッド、グリーヴが良さそうだな」

「おじいちゃん、凄いわ。一目見ただけで身体強化が分かるなんて」

「当たり前だ。この道何十年もワシはやっとるんだ」

「ジジイ、お嬢様はちょっと訳アリだ。魔力無しとなっている。その辺を含めて頼む」

「そうか、分かった。では身体強化した時でも魔法が他に見えないように陣を施しておくのと装飾を施して置くことにしよう。原型の在庫はあったから出来上がりは3日後だな。では前払いで金貨30枚だ」


 レコは袋に入った金貨を渡した。おじいさんは小袋を受け取るとさっさとカウンターの後ろへと入っていってしまった。それにしても初心者防具で金貨30枚は法外な値段だわ。


 町のギルドでもカウンター横に初心者用武器と防具が売られていたけれど、金貨10枚がいいところなのよね。貴族が使う武器や防具には装飾や宝石が施されて金貨数百枚はするらしいのだけど。父から出掛けに貰った金貨の殆どを防具に使ったのではないかしら。貰っていて良かった。


そうして私達は一通り買い物をしてから邸へと戻った。

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