第11話

 それからの数日はファルスと二人で変わらず復習や基礎訓練をしていた。


「さぁ、またランクを上げに行くよ。今日の依頼を達成すると二人ともDランク昇格になる」

「やった!ようやくだね!」


私達はDランクに浮かれ、おしゃべりが止まらないまま馬車に乗り込み、隣町のギルドへと向かった。ギルドに到着すると、先生はいつものように掲示板を見渡して依頼書を受付に渡して依頼を受注した。

 今日はローンダイルという魔獣のようだ。大きさは三メートル程度のワニ型魔獣で草原や沼地を生息域としているらしい。やや獰猛な肉食魔獣で強力な顎を持ち、小動物をパクリと食べてしまうらしい。


 特徴的なのが硬い皮膚。普通に剣では切れないらしい。そんな彼等が何故Dランクなのかといいうと、大きな口を開けた時、口に向かって魔法を投げ込むといいから。体の中は弱いらしくすぐに倒せるらしい。

 問題なのは口を開く時だ。攻撃する為に口を開くか、餌を食べる時に口を開くか。私は草原へ向かう最中にどうやって攻撃を口の中に入れるかを考えていた。やはり餌を持って行った方がいいのか。


先生に質問してみる。


「先生、ローンダイルの口を開けさせるにはやはり餌を途中で狩った方がいいのですか?」

「ん?ロア。そんな事をしなくてもいいよ。簡単に倒せる方法がある」


「そうなのですか?」




先生にローンダイルの話を聞きながら草原に到着する。


 何頭かは沼地の方でじっとこちらを見つめている。どうやら警戒しているようだ。ここにいるローンダイルはあまり大きくないようで一メートルを超えているくらいだろうか。

 先生が言うには大きいものだと4メートル超えなのだとか。初心者から毛の生えた程度の私達には丁度いいのかもしれないわね。


「では1頭だけ狩ってみる。よく見ておくように」


そう言うと先生は魔法でローンダイルの目の前で【ライト】を使った。私達が夜本を読む明かりよりもかなり明るく、眩しい位だ。ローンダイルは突然目の前が明るくなり目が使えなくなり、慌てたのか頭を振っている。


そして口を開けた時に【アイスランス】を唱えた。口の中から杭のように氷の槍が刺さりすぐに息絶えた。


「本当だ。あっけないな。俺にも出来そうだ」


ファルスはそう言うと先生がやったのと同じように魔法でさっくりと1頭を倒した。


「さぁ、ロア。見ていないで君もするんだ。ローンダイルあと3頭でクエスト完了だ」

「はい、アレン先生」


 魔力が少ないとはいえ、ライトやアイスランスを出すくらいは私にも出来るわ。ライトの代わりにアイテムを使っても良さそうな気がする。癇癪玉でいいかも。私はそんな事を考えながら沼から出て日光浴しているローンダイルに魔法を唱えて倒してみる。


上手くいったわ!


 レコと先生はうんうんと笑みを浮かべながら私とファルスが倒したローンダイルに縄を掛けている。残る二頭はファルスと難なく倒してクリア。こんなに簡単にDランクに上がっていいのかしら。意気揚々とファルスと私は倒したローンダイルを引っ張って先生達と合流した。


これでランクが上がるわ!


 ファルスと私は浮足立って言葉数も多くなる。先生とリコにまぁまぁ落ち着けと言われつつ、ギルドへとやってきた。


「依頼達成おめでとうございます。ファルス様並びにロア様Dランク昇格しました。次回からはD、Cランクのクエストを受ける事が出来ます。Cランクへの昇格ポイントは250ポイントです」


 受付の女の人がにこやかに説明してくれた。Cランクまで250ポイントか。大体1枚の依頼書で1~2ポイントなの。Bランク以降の依頼書ともなれば1回で5ポイントもあるらしいんだけどかなり難易度が高いとのこと。


因みにCランクからはFやDランクの依頼を受けてもポイントは付かないらしい。先生達はランクの低い私達がPTとして組んでいるためポイントは付いているらしい。



 私達は久々に町で買い物をして帰る事にした。Fランクの報酬は洋服を1枚買う程度のものだったけれど、貯めてきた私達はそこそこのお小遣いになっていた。


「マーロア、ファルス。二人は何を買うつもりかな?」

「俺は剣に付ける飾りが欲しい」

「私はビオレタとユベールに美味しい物を買って帰りますわ」

「あー俺もそうする!」


 いつも二人には感謝しているし、折角貯めたお小遣いを初めて使うのはやっぱりビオレタとユベールの為に使いたいわ。結局私もファルスもビオレタとユベールにお花とクッキーと果物を買って帰る事になった。

先生もレコも微笑みながら馬車に乗ったのは言うまでもない。


 私とファルスは家について早速ビオレタとユベールにお土産を渡して『ねぇ聞いて!今日はローンダイルを狩ったんだ』と二人に話をする。ユベールやビオレタは優しく今日あった事を聞いてくれたわ。

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