第8話

 流石に先ほどの鳥達と違って魔鳥も近づく私達に気づいたようだ。警戒音を出しながらこちらに向かって走ってきた。

魔鳥達が近づいたその時、私は身体強化して高く飛び上がった。魔鳥がその様子を目で追う。その間にファルスが横へ走り、隙を突いて一匹を倒す。私は上から魔鳥に切りかかり倒す。さぁ、残りの三匹をどうするか。

私が一匹と睨み合い、ファルスが二匹と戦っている。早く、そして力の限り剣を振ると身体強化も掛かっているので力技ではあるけれど攻撃してくる嘴もろとも剣を叩きつけ切った。


あーあ。


これって一歩間違えば剣の刃がこぼれちゃうから嫌なんだよね。


 ファルスは二匹の猛攻撃を防ぐ事で精一杯みたい。助けに入ろうかと思っていると、レコが加勢してくれたわ。私達とは違いさっと魔鳥の横へ入り込み首を切り落とす。なんてスマートなんだろう。二匹ともあっさりとレコによって倒された。


「納品分は終わったね。では帰るよ」


 私たちは一人二匹ずつ魔鳥を抱えて町に戻る。ファルスが遠い目をしていたのは仕方ないわ。馬車で怒られてしまいなさい。


そうしてギルドへ納品分を持って行った。


もちろん依頼は成功よ!


「残りの三匹はどうしますか?」

「先生、一匹お土産に持って帰りたいです」


私はすかさず声をあげる。


「そうだね。じゃぁ、残りの二匹は買い取りで一匹は持って帰るよ」

「有難うございます。魔鳥の買い取り価格は……」


 そうして報酬金と買い取りのお金を四人で分け合いギルドカードへと入金してもらう。


 カードを満面の笑みを浮かべながらカードを受け取るレコを見ていると、ふと疑問に思った。レコは冒険者登録をしてからせっせと小遣い稼ぎをしていたのではないだろうか。まぁ、王都からこんな片田舎に左遷されたも同然だものね。

そして村はあまりやることがないし、貯蓄を趣味にしているのねきっと。


 まぁ、そんな事はさておき、私はギルドカードを眺めて感動に浸っていた。だって自分で初めて稼いだお金よ!これから何があるか分からないもの。しっかり貯めなくては。


レコを馬鹿に出来ないわね。私も貯蓄虫になろうと心に誓う。


 村に帰る馬車に乗り込んだ私達に待っていたのはやはり重苦しい反省会でした。


「さて、ファルス君。言い訳はあるかね?」

「……えっと、突進していった、こと、かな」

「そうですね。まだ魔鳥だったから良かったものの、他の魔獣なら確実に死んでいたね。ファルスは明日からちょっと別の特訓メニューを組み入れることにする。マーロアはどうかな?」

「えっと、魔鳥に身体強化を使った事と剣を叩きつけた事ですね」

「まぁ、身体強化は良かったと思うよ。魔鳥の弱点は上から攻撃だからね。叩きつけるように切ったのは確かにいただけなかった。剣が折れてしまうから。でも、二人とも肝心な事だけどなんで首ばかりを狙うんだい?

弱点ではあるけれど、まず動きを止める事を考えなくてはいけなかったよね?君たちはまだまだ初心者だ。首ばかりを狙っているから隙だらけだった。まだFランクの魔物だから怪我をせずに済んでいるけど、まずそこから変えていかないといけない事は分かった」


先生は眉に皺を寄せ私達に咎めるような視線を向けている。


「まぁ、レヴァイン先生、今までマーロア達は村の近くで食糧を得るために小さな魔獣を中心に狩りをしていたのです。美味しく食べる為に血を抜く事が無意識にあるのではないですかね。中途半端に強い分、今までなんとかなっていたと思うんですよね」


レコは先生を宥めるように話す。私はレコの言葉にぐうの音も出ないわ。


「……そうか。マーロア達にとって魔獣は食糧という意識なのか。だからお土産なのか」


 レヴァイン先生は魔獣=食糧の考えはなかったようで妙に納得しているようだ。そうか、王都で魔獣は出ないと聞くし、魔獣=害獣、駆除するものと考えているのかもしれない。


倒せれば何でもいいのね。


 私もファルスも先生の考えとの違いに驚いたわ。先生は私達と住むようになって食卓に上る肉は魔獣の肉しか出ていないのに。気づいていなかったのかしら?美味しいに越したことはないのだけれど。

 きっとレコは王都出身で村に住むようになったから違いに気づいたのね。まぁ、それでも攻撃を避ける事や弱点を探さずに首ばかり狙うのは未熟だと今日の事で感じたわ。


もっとやりようがあったと反省ね。


 先生もそれ以上は叱る事はなかったけれど、課題が見えたと言っていたわ。明日からの実技は恐ろしい事になるかもしれない。


 


 そうして村に帰ってビオレタにお土産を渡した後は自由時間になった。夕食は勿論今日狩った魔鳥焼きやスープが出てきた。臭みもなくてとっても美味しかったわ。因みにレヴァイン先生は何か思う事があったのかお肉を黙々と食べていた。


単に美味しかっただけかもしれないけれど。

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