第7話
私達は先生と三人でしゃべりながら町の外へと出た。村へと戻る方向へ道を少し歩いてから草むらの中へ入っていく。ずっと雑草だと思っていた草は先生の指摘により薬草という事が判明した。どうやらこの草むらは薬草と毒消しに使う草の群生地のようだ。
「こんな所に一杯あるんだな。俺、全然気づいてなかった」
「ファルスもロアもナイフを取り出して丁寧に上の葉を摘んでいくんだ。間違っても根本から引き抜いてはいけない」
「アレン先生それは何故ですか?」
「葉は何枚か切り取っても次が生えて来るけれど、引き抜いたり、根本から切ってしまえば生えなくなる。必要な時に取れないと困るだろう?自然の物は次に繋げるために根こそぎ持って行ってはいけないんだ」
「そっか。勉強になった」
そうして先生の講義を聞きつつ薬草と毒消しに使う草を取ったその足でゴブリンの巣に向かった。ゴブリンは偶に村にも出るので私達は何度も倒した事があるし、簡単だと思う。
ゴブリンは人のひざ丈より少し大きめの魔物で小鬼のような姿をしている。彼らは攻撃的で、尚且つ集団で生活している。ゴブリンキング等リーダー的な奴は少し大きい個体になっているので見分けもつきやすい。初心者向きの魔物といってもいい。
因みに全然可愛くないし、素材も取れないので旨味は全くない。
「先生、あっちにゴブリンの巣があります」
「よし、倒しておいで」
先生は後ろで見守るスタンスのようだ。私達は目で合図しながら頷く。ファルスが先制攻撃し、私は逃げるゴブリンを切っていく。
ゴブリン位なら身体強化を使わずに倒す事が出来る。1年間基礎をしっかり身につけたおかげで以前より楽に退治出来ているんじゃないかしら。
私自身、とても強くなったと実感しているわ。それはファルスも同じだったようでゴブリンを逃がしてしまう数もかなり少ない。むしろファルス一人で巣を全滅させることが出来るのではないかしら。私はそう思いながら一匹また一匹と退治し、ファルスが20匹ほど倒しただろうか。
「アレン先生、巣にゴブリン居なくなったー」
ファルスの声がした後、先生は巣の中を確認する。
「ファルス、雑さが残っているね。これは後々命取りになるから気をつけるように」
そう言って一匹のゴブリンを捕まえて出てきた。先生は私に向かってゴブリンを投げてきた。仕方がないので私がゴブリンを切り、討伐は完了した。
私達はゴブリンを拾い集め巣に投げ込む。そして【ファイア】を唱え、ある程度焼いていき、砂をかけて巣ごと簡単にだけれど埋める。
ファルスはゴブリンの返り血で全身ドロドロになっていたわ。先制攻撃する人は大体そうなるけどね。私は【クリーン】を唱えてファルスも先生も私も綺麗にする。
慣れているとはいえ、匂いを付けたままは他の魔獣も寄ってくる原因にもなるからね。
「さぁ、クエストを完了したので帰るよ」
「「はーい」」
私たちは今日の反省を楽しくしゃべりながら町へと戻っていく。アレン先生は私達の動きの良いところ、悪い所等を話してくれた。
次はもっと上手くやれそうな気がするわ。
ギルドに戻って私達は手続きを済ませると、Eランクに昇格したの。
「先生Eランクにあがりました!」
「おめでとう!これで次から討伐に向かえる。まぁ、今日は帰るよ」
そうして私たちは村へと帰った。家に帰って夕食を取っていると、勿論話す内容は今日の討伐の事。聞いて聞いてと始まって私もファルスも一杯話したと思う。そして討伐にはレコが一緒に付いていきたかったらしい。ちょっと悔しそうだった。
もちろんレコもこの村に来てから冒険者登録しているらしく、ランクはBなんだとか。全然知らなかったわ。王都では護衛だけで冒険者登録しなくても過ごせていたらしいのだけれど、村に来るとギルドカードが活躍するらしくて冒険者登録したのだとか。
先生とよく剣術談義に花が咲いていると思っていたのよね。実はレコも強い人だったとは。これから実力を付けるために討伐も増えていくらしいのでその時はレコも一緒に来てくれるみたい。
四人でPTとなって魔物退治ってなんだか面白そうだわ。けれど、レヴァイン先生は勉強の事を忘れてはくれなかったみたい。
翌日はみっちりと勉強だった。ファルスが死んだ魚のような目をしていたのは仕方がないわ。
そして数日の勉強を終えて討伐に行く日。今日はレコも一緒に付いて来てくれるらしい。私達が出る準備をしているとレコは準備万端、玄関前で『遅いですよ』と待っていたわ。
「アレン先生、今日は何の魔獣を狩るの?」
先生が掲示板を見ながら答える。
「君たちはまだ駆け出しだからね。今日は魔鳥にしようかな」
「魔鳥ですか?私、まだ見たことがないです。村の近くには居ないですよね?」
「そうだね。魔鳥は七面鳥に似ているがとても獰猛で町の東側の平原に生息しているんだ。数匹の群れで生活しているから見つけやすいが、とても獰猛なので気を付けないといけない。ゴブリンと同じくらいの大きな鳥だよ。これを5匹分納品」
依頼書を持って受注する。今回は四人パーティで申請したみたい。
私は魔鳥に内心ドキドキしている。だって、偶に我が家の食卓に上る肉だったはずだもの。お土産に持って帰ればビオレタはきっと喜んでくれるに違いないわ。
そうして私たちは町を出て平原へと向かって歩く。1時間くらいあるいたかしら。目の前に広がる平原にポツン、ポツンと数匹単位で暮らしている魔鳥。鳥と言っても飛ぶことは出来ず素早く走る鳥。
七面鳥に似ているといえばイメージしやすいだろうか。角が3本生えて嘴には牙が付いていて噛み付いたり、突いてくる。
「さぁ、着いた。まずは二人で倒してごらん。駄目そうなら援護に回るから安心して」
私が口を開くよりも先にファルスは【ファイアボール】を打ち込んだ。するとどうだろう。魔鳥は飛び上がり、足でファイアボールを地面へ叩き落として消してしまった。そして怒ってファルス目がけて三匹の魔鳥が突撃してくる。
「ちょっと!ファルス!何やっているの、駄目じゃない」
私は怒りながら斜め横に走り、ファルスから距離をとる。ファルスは残念な事に魔鳥達に突かれているわ。自業自得ね。私は剣を鞘から抜き一匹の魔鳥の後ろからそっと近づき首を刎ねる。
二匹目が私の方に気づいたけれど、私は素早く二匹目も首を刎ねた。首が長いおかげで注意さえ他で引いていたら簡単だわ。そうして三匹目もすぐに終わった。
「いやー突かれた所が痛い。頑張って防いだんだけど、あいつ等俺の剣をさっと避けるんだぜ。酷いよな」
「ファルスが怒らせたからよ。でも私は無傷だったわ」
二人でしゃべりながら次の群れに走っていく。あと二匹。お土産が欲しいもの。次に近いのは五匹の群れだった。
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