太眉隊長の悩み

隊長さんと出会って4年。


最初は副隊長と隊長という関係だったが、長い付き合いと度重なる旅路で初のフレンズと人間の間での付き合いが確立された。



告白はまさかの隊長さんからだった。


今まで片道としか思っていなかったが、想いの寄らない展開に思わず私は涙を流してしまった。


もちろん、回答はオーケー。


そして現在に至る。


探検隊での活動は変わらなかったが、活動中もスキンシップが多くなった気がした。


フレンズで初めての恋人が私だからなのか、周りの目線が多くなった気がする。


そんな中、私と隊長さんは同じ屋根の下で一つの家庭を築いた。


一般的な恋愛ではなかったと思うけど、私はこれで十分だった。


これ以上はないんだなって確信していた。




そんな幸せの真っただ中、パーク・セントラルに召集がかかった。


定期健診についてだった。


隊長さんには「すぐに帰ってきますから、家で待っていてください!」と言い、一人で行った。


本音は、体の云々に関してあんまりがっかりされたくなかったっていうのがあった。




終わったのが夕方だった。


意外にも手間がかかって、予定よりもだいぶ遅くなってしまった。


木の葉から夕陽の赤が滲み出ている。


空も黄色く、赤がかっていた。


どことなく、気持ちをふわふわさせるような。そんな感じがした。


横から吹く風が少し冷たく感じた。


ジャパリパークにも一応四季は感じられるのだが、気付いたら春、気付いたら夏というのが当たり前だった。


でも、今だけは”秋”と強く感じられた。




家に着くと、外の世界とは打って変わって温かく美味しそうな匂いが鼻に生き渡った。


マフラーを取りながらリビングに行くと、そこには料理をしている隊長さんがいた。


「あ、ドール。帰ってたんだ」


「ごめんなさい、隊長さん…こんなに遅れてしまって…」


「いや、大丈夫だよ。それよりもこれ食べて。外、寒かったでしょ?」


そういい、木のお皿に盛りつけた。


それは…


「ホワイトシチュー!」


というと、隊長さんは微笑んだ。


なぜこんなにもはしゃぐのかというと、隊長さんが作るシチューは他の人、料理人ですらも比べても格段に美味しいからである。


さらに冷え切ったこの体には打ってつけの料理である。


そして、目の前の料理に釘付けになった。


体だけだなく、心までもがぽかぽかになった気がする。


そして、食べることに夢中になっている時に一つ、思ったことがある。


(あれ…?隊長さんは…?)


シチューを食べ始めた時ちょうどにいなくなったが、どこにいったのだろうか。


気になって、目の前の料理も手につかなくなった。


そしてふと、廊下の方を見て見ると隊長さんの部屋が不自然に開いていた。


そこからは冷たく、鋭い空気が漂っていた。


普段だったら、覗きとかはあまりしないのだが今回ばかりは気になった。


好奇心が湧き、つい覗いてしまった。


「うーん、やっぱりフレンズは保存期間が短すぎるんだよなぁ…」


そしてその場をあとにした。

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けもフレ短編小説保管所 コイル @Ahuro_01

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