なんかヤベェ帽子野郎と旧友に再会したんだけど情報量多くね?5
翌日___
日付が変わっても帽子屋が拠点に現れなくて私が痺れを切らしてウサギを召喚した。めんどくさい、だるいと言いつつ一応顔は出していたからちょっとだけ心配。
来てるはずのシロさんも見当たらないしどうしたんだろ。
「帽子屋いつ来んねん、もう1時やけどどうなっとるん」
「まだ来てないの?いつもの時間に案内するように言ったのになぁ」
「アンタまた変な……余計なこと言ったんやないんそれ」
「アナタ火に油を注ぐようなこと言ったんじゃないのかしら?」
人を煽る天才のウサギが絶対何か言ったとしか思えない。元々ウサギの言葉でキレてたしコイツがどうせキーキー喚いたんだろう、ウサギだから殺されなかっただけな気がする。
もしアリスだったら速攻胴体と頭が永遠にさよなら状態だっただろうな……。
「言ってないよ!!凄く怒っててそもそも寝床に入れてくれなかったし!!はぁ」
「へー……どんまい」
「とりあえず!場所を繋げるから狩り終わったらボクの名前を呼んでね!その間にあの子が現れたら呼ばなくていいからぁ」
そう言ってウサギはドアを3回叩く。
ドアを叩いた後に「今回は樹海だから死者が出てても自殺志願者だし気にせず倒しておいで」とかアホな事を言ったからぶん殴った。
やっぱコイツが油を注いだ、マジで口縫いつけた方がいいんじゃない?不謹慎クソ変態野郎とあだ名で呼んでやろうかな。
「気をつけてね!行ってらっしゃい!!」
ニコニコ顔で手を振ってからウサギは姿を消す。私達もさっさと狩りに出向こうとドアを開けたその瞬間――
「ちょ、どけ‼邪魔だよ赤のアリス‼」
帽子屋が私の足元に転がってきた、それも全身黒い土だらけで……。
「ぎゃ!なにしゆのやし帽子屋!」
ゴキブリを見た時と同じような悲鳴を上げて私はアイさんの背中に反射的に隠れる。
言ったら絶対に殺されること間違いないから言わないけどめちゃくちゃ巨大化したGに見える、見えちゃうから急に近づかないで欲しい!!完全なるG!!
「アナタ案内の時間はとっくに___」
「僕のせいじゃないッ!アイツらいきなり現れて攻撃してきやがったの!!僕何もしてないのにさぁ?意味わかる?もう、もう!なんなのあの2人‼」
地面から起き上がって薄暗い森を指さす帽子屋は珍しく息が切れてる。
立ち上がったけど少しフラフラしてて思わず体を支えようと手を伸ばしたけど私の手が触れそうになった瞬間、帽子屋は私の手を避けて「触んないで」と言ってきた。前だったらムカつく、と思ってたけど知っているから色々あったんだし仕方ないかと私は手を収める。
異端者、と言っていないからアリスが帽子屋のことを襲っているんだろうと思うけど一体なんでここに私達以外のアリスが……。私達が倒すはずだしまさか横取りとか何とか言うやつなのか!?
割と平和主義なんで対人戦だけは勘弁して欲しいんだけどな。
「他のアリスがおるってことやんな?そのアリスって横取りとかじゃないん?」
「そうアリス!横取りは違う!わかんない!!知らないね!!」
「アナタ、そのアリス達に何かしたって訳じゃないの?」
「してないよ!ウサギに言われた通りに異端者を監視しに来たらいきなり現れて、それから攻撃してきた!僕じゃなかったら僕のアリスが怪我してたよ、ムカつく!!殺してやる!!」
よく見たら服がいつもより破けてて手足は血が所々出ている。アリスより強い案内人にここまで傷を追わせるなんてかなり強いアリスがここにいるんだろうけど何故か気配がない。
大きなため息をついてから帽子屋はいつも被ってる大きな帽子を取って地面に置いた。帽子をかぶっていない帽子屋を見るのは初めてだけど黒い髪が逆立っていてホラー映画に出て来そうな髪型でちょっと怖い。
「僕のアリス、でできていいよ。出ておいで」
帽子に呼びかけると中からひょこっとシロさんが出てきた、怪我をしている様子はなく、ピンピンしている。この帽子一体どんな作りをしてるんだよ。
帽子屋はシロさんが出てきたらすぐに帽子を回収して頭の上に乗せていつものスタイルに戻った、覗くなってウサギが言ってたけどこれは覗きに入ってないよな?後で殺されない?大丈夫そ?
「帽子くん怪我してない?」
「してない!大丈夫だよ!!」
「良かった。ヒイロちゃんもアイさんも来てくれたんだね、助かったよ」
かなりボロボロだけどたしてないに入るのか……案内人ってどれぐらいタフなんだろ。
「赤のアリス、ウサギから何も聞いてない⁉教えろ!」
「なんも聞いとらんけど……アンタが喧嘩吹っ掛けたんやないの?」
「なにも言ってないっ‼僕は悪くない!悪くないもん、悪くな___ああもぉおおおっ!!」
帽子屋に突如乱暴に突き飛ばされ、地面に転がる。前日雨が降ったのか地面がぐちゃぐちゃで一瞬で服と顔が泥まみれになってしまった……べちゃべちゃして気持ち悪い。
「アンタ、いきなりなにす――」
文句を言いかけた瞬間――巨大なハンマーが帽子屋に向かって落ちてくる。
殺意も気配も魔力も感じなかった、もし帽子屋が突き飛ばしてなかったら今頃ミンチになっていたかもしれない。
地面に突き刺さったどデカいハンマーはすぐに消えて深いクレーターが地面に残された。ミンチどころじゃない、生ハムみたいにペラペラになってたぞこれ。
「おメーら、僕の案内してるアリスに手を出すなよ。切り落として欲しいの?」
ドスの効いた声と共に帽子屋の顔が二重にブレた、分身?をした瞬間奇妙なノイズの音と鈴の甲高い音が鳴り、帽子屋の姿が消える。
姿は見えなくなったけど帽子屋は魔力駄々洩れの状態ですぐに追いつけるから多分大丈夫……大丈夫だけどちょっとキレてるからアリスが殺されないか心配だ。
「ヒイロちゃん、アナタ怪我は⁉」
「平気や、なんちゃーない」
泥から起き上がっていつも使ってる太刀を出しておく。次はちゃんと反撃して泥だらけにしてやる、覚悟してろマジで……。
「帽子屋、アイツ馬鹿正直に突っ込んでったけど大丈夫なんやろうか」
「ヒイロちゃん、不思議に国の住人はそれぞれアリスとは違った魔法が1つ使えるし魔力もアリスと違って多いから帽子くんは大丈夫だよ。あの子は強いから大丈夫」
そう言ってシロさんは消えた帽子屋に向かって呑気に「がんばれー」と声をかける。大丈夫と言ってもさっきボロボロだったし心配でしかないんだけど。
「あの帽子屋ボロボロだったけど本当に大丈夫なのかしら?」
「僕を守って魔法を使ってなかったので……魔法があれば帽子くん、強いんですけど色々と不安定だからすぐに感情的になってうっかり殺しちゃうかも。次殺しちゃったら流石に追放されるかもしれない……」
「それ止めんとマジでヤバいヤツやんけ!」
急いで帽子屋の後を追う。
さほど離れてない場所で帽子屋は2人とやり合っていた、1人はデカいハンマーを持っていてもう1人はバカでかい大きな斧を持っている。似たような見た目をしているけど双子のアリスなのか?
「帽子屋!ちょっと落ち着きや!!」
大きな声でそう呼びかけたけど私への返事はなく、2人に対して文句を叫んでいた。戦いながら移動する3人に全速力で追いつき、飛びこんで攻撃を受ける。
流石に1人で止めるのはキツいから使い魔シカチャンを呼び、ハンマー野郎の武器を吹き飛ばしてもらったけど衝撃でシカチャン自体消えてしまった。よく頑張った、後で褒めてやるぞシカチャン。
「アンタら何があったか知らんけど住人にアリスが勝てるわけないんやから大人しく殺し合いすんのやめや」
「お前、僕らの邪魔すんな!どけ!」
「邪魔。邪魔です」
双子のアリス?にじろりと睨まれるけど私は2人を好きにさせるつもりはない。帽子屋を襲った2人は近くで見ればみるほどとても似ていて髪も目も青く、黒と灰色の学生服を着ている。
帽子屋はギャンギャン私に暴言を吐く2人に暴言を吐いて攻撃はしないけど機嫌がすこぶる悪い。私1人じゃすぐにまた殺り合いを始めるだろうから誰か来て欲しいと思ったアイさん達もやってきた。我が救世主達よ…-ありがとう。
「ヒイロちゃんが言う通り2人共勝てるわけがないんだからやめなさい、下手に案内人に手を出したら追放されるわよ」
双子はお互いを少し見つめ合った後、大人しく武器を収める。意外と聞き分けがいいな、根はいい奴ら……なのか?
「ちょっとキミら、その腐った底辺人間の態度なんとかならないわけ?うざい。腹が立つ、嫌い、嫌なヤツ。ムカつく」
「ま、まぁ落ち着きや。シロさんが呆れてるで」
「帽子くん、落ち着いて……ね?」
「……へっ!!僕はオトナだから黙ってやる。僕は女王サマのオキニだから!へっ!!」
落ち着いた帽子屋にほっと一安心したのも束の間___2人が収まった火に油を注ぐ。
「話し終わった?コイツ、殺していい?」
「もういいだろ、殺してやる」
「殺ろうか」
武器を再び構えてやっと落ち着いた帽子屋に襲い掛かる2人。
マジで勘弁してくれ、マジで誰か2人を止めてくれと私は叫ぶ。発狂してもいいでしょ、マジでなんなんだよこの2人!!
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