なんかヤベェ帽子野郎と旧友に再会したんだけど情報量多くね?6
「もう!!もう!僕が我慢してあげてるってーのによォー?身を弁えろ雑魚共!!」
「あ、アナタちょっと――」
カチカチっという謎の音が響き、帽子屋の身体全体がブレる。
「赤のアリス、キミはもう少し優しさを捨てろ。その生半可な優しさがあるから強くなれない。狩らなきゃ狩られるぞ」
そう私に言った後、再び帽子屋の姿が消えて双子の手足が飛んだ、ただ飛んだだけじゃなくて手足の肉が散り散りになって飛んだ。
「な、なんこれ……」
人形のように四肢が切断された2人は目を見開いて悲鳴をあげた。
たった数秒で辺りは血まみれ。至る所に肉が飛び散っていて生臭い。この地獄をつくった本人は呑気に2人に中指を立てて「ざまぁみろ」と言いながら笑ってる、殺してはないけどこれはやりすぎだろ。
「やりすぎやろアンタ……」
「そうよ、アナタこれはやり過ぎよ‼」
双子は首に傷はあるけど繋がっている、死ぬことは無いけど傷がエグい普通の人間じゃ1番おしゃん。確定で死んでる。魔力で身体を無痛にできるけどあんな一瞬じゃ無理がある、考えられないほどの激痛の中魔力を操作するなんて無理だ。
仲間じゃなくて敵として帽子屋が私達の前に現れなくてよかった……心の底からそう思う。もし、この殺意が自分に向いていたらと考えたら恐怖でしかない。
「アンタら大丈夫……やないでね」
「っ、うるせぇ。構うな……!」
魔力の扱い方は知っているようで素早く体を回復させて立ち上がる双子。
「フン、治しやすいように切ったし心配しなくていいよ。さ、みんな帰るよ!かえーる!げこげこ」
不機嫌を極めた帽子屋が私の手を繋ごうとしたその瞬間――私の肩から腕にかけて吹き飛び、帽子屋の姿が消えた。
右腕の感覚が無い上に魔力が体から異常な速さで漏れ出てく。回復しようとしたけど魔力が何故か操れない、いつものぐっとしシュッができない!
「っ、あともう少しだったのに!クソ‼」
「大丈夫、大丈夫。先に雑魚をやろう……アイツが“破ってくるまで”に」
私の腕を飛ばした犯人であるハンマー野郎が私の腕だったものを地面に投げつけ武器を私に向けてきた。
帽子屋が殺れないから私を殺してやろうってか……クソったれ!!クソ野郎!!
「ヒイロちゃん、避けて!」
「っ、わかっとる!」
バカデカいハンマーを持ったヤツが私に突っ込んでくる。異端者レベルで攻撃のスピードが早いし攻撃がくっそ重い。
巨大な武器で来るならこっちもデカい武器、大太刀で対抗するけど腕が折れそう。腕が片方ない分受け流すのだけで精一杯、そんな私を見てケラケラ笑ってるしこいつホント性格悪い!!クソだくそ!
アイさんが応戦してはいってくれたけどやばいぞこれ。
「ヒイロちゃん、上!」
アイさんに言われてすかさず地面を蹴り、足でハンマー野郎の腕を蹴り飛ばす。
ハンマーは1つだけじゃないようでデカいのとは正反対の小さい工具用ハンターで私の頭をかち割ろうとしてきた。一歩間違えたらかにみそ状態になってた、まじで危なかったんだけど。
「動きが生温いなぁ。チビで雑魚の癖にこんなヤツをお守りしてるってホントだったんだな!」
「うっせ黙れハゲ、ヒョロガリキノコに言われたかないわ!シネ!2回死ね!」
アイさんと協力してハンマー野郎を叩きシロさんは斧野郎と1対1でやり合ってる。戦い方は異端者戦の前と同じぐらい強くてシロさんの方が押してて斧野郎がちょっと焦ってる。
「殺しちゃダメよ、ヒイロちゃん!!あくまで気絶を狙うの!」
「これ気絶狙うとか無理っすよ!」
「殺しちゃアタシたちが女王サマに罰を食らうわ!」
双子は見た目通りの水魔法を操るようで私にとっては弱点属性となる存在。ここから離脱しようといつものように想像したけどお茶会の場所に行くことができない、多分こいつらが妨害してきてる。
「ラズ、そろそろできた?」
シロさんを相手にしている斧野郎がハンマー男___ラズと呼ばれるヤツに声をかけ、ラズが「できた」と不気味な笑みを浮かべて答えた。
何をしてくるか分からないから一応2人から距離をとる。かなり腕を治せたからあともう少し時間があればいつも通りの立ち回りが出来るのにっ…。
「兄ちゃんできたよ。じゃあ、死ね虫けら達」
そう言ってから斧男が親指を口に当て、小指を地面に向ける。
訳の分からない攻撃を仕掛けて来ると刀を構えたけど動いたと同時に大量の水が空から降り注ぎ、私達を飲み込んだ。
「はは、これでラズ。あの帽子屋の悔しそうな顔が見れるね」
「そうだね、兄ちゃん」
水の中に立つ2人の声が脳内に響く。
アリスになったおかげで窒息死はしないけど属性的に酸素は必須だから苦しい、意識が飛びかけててヤバい。酸素を求めて上に上がろうとしたけど体が思う様に動かない。くっそ動なってんだよこれ。
アイさんは水属性だから問題はないみたいだけど私同様に体が動かないようで焦った顔で私に手を伸ばそうとしてシロさんは意識を完全に失っていた。
「ラピはね、あの狂った帽子屋よりヤサシイ。だから苦痛なく首を落とす」
ラピと自分のことを言った斧男は死んだ青い目で私達をじっと見つめる。こっちみてんじゃねぇ、殴るぞこら。
「兄ちゃんはそんなんだから舐められるんだぞ」
「ラズ、そんなこと言わないで」
色のない顔で私を見下す2人に心の中で中指を立ててやる、魔力が漏れさえしなければこんなやつすぐにぐぃっと捻ってポイしてやれたのに。
「じゃ、キミから先に始末して――」
ラピが私の両手を掴み、ゆっくりと締めつける。
何がヤサシイだ、ゆっくりじわじわと締め付けるなんていたぶって殺すのと変わらないだろカス。首の肉が手に徐々に食い込んで痛い、魔法が一切使えないからもろに痛みを感じる。くっそ、こんなチンピラクソ野郎に殺られるなんて最悪だ。マジでクソ、マジで永遠に末代まで呪ってやるからな。
絶対死んだら祟ってやる。
「ひ、い……ロちゃ」
アイさんがそう言った瞬間――異常なほどの冷気と殺気が辺りを包み込んだ。
「ッ、兄ちゃん離れて‼」
ラズがそう叫んだと同時に水が一気に消滅し、
「てメーらハンプティダンプティ!!僕の管理するアリスに手を出した罰として追放シテやる!!!!」
空の上に見下すように現れた帽子屋。
いつものへらへらとした声でそう2人に告げる帽子屋だけど明らかに怒っていると分かる。激おこ、マジおこ。本能がヤバいって警告してるレベルで怒りを感じる、これは本気でやばたにえんだ。
「コイツだけでもや――」
ジワジワ絞めるんじゃなくて本気で握り潰そうとしてきたけどそうする前にソイツの姿が消える。
「兄ちゃんッッ‼」
ラズが叫んだと同時に私の前に帽子屋が現れ、地面に四肢がバラけた。力なく首が無くなったその体は地面に倒れる。見間違いかと思って目を擦ったけど地面に転がるのは私を絞めていた男で間違いない、同じ服……。
「赤のアリス、怪我は?」
「な、なんちゃーないけど……」
殺してなきゃ殺されてた、だから何とも私は言わない。所詮赤の他人だ、だけど、だけどさ、ここまで酷いやり方でやるなんて……。
これは本気でやりすぎ、こんなの女王サマとやらに許されるんだろうか。
「や、やりすぎやないのこれ……」
「僕の管理しているアリスに手を出したんだから同然。そう、同然の結果!ふふ、僕を怒らせた方が悪い。コイツはキミを殺そうとしていた、だから僕が殺した、ね?」
帽子屋はニッと口元上げ、私にラピの首を見せてきた。
「手で握りつぶそうとしてたから同じようにゆっくりしてやった。時間で!!どう?どうかな?同じようにしたけどどうかな?」
「テメェ!てめぇ絶対に殺してやるッッ‼」
恐怖の表情を浮かべ動かなくなっている自分の片割れにラズが怒りに身を任せ帽子屋に突っ込んで来た。
ラズが足を動かした瞬間、両足がバッサリと消える。痛みで悶絶するラズに帽子屋は静かにして!と言いながら口に黒い泥のようなモノを突っ込む。
「てめーは引っ込んで。僕は赤のアリスと話してる最中、なんで雑魚が不思議の国の住人なんかになれたのか、はあ。やだなぁ」
大きなため息を吐いたと同時に帽子屋の顔が鋭い歯の付いた口に変化し、ラピの頭部を口の中に放りむ。
衝撃的すぎて空いた口が塞がらない、こ、この人……今、人を食ったよな?
確実に口の中にぶち込んだよな、な?
「な、なんしてんそれ」
「魔力食ってんの、不思議の国の住人って頭に詰まってるんだよ」
大きな口がそう言葉を発し、数回咀嚼して元の頭に戻る。頭部が戻った後、帽子屋は「魔力ねぇじゃん」と小さく呟き、私の口に手を突っ込んできた。
いきなりすぎて歯を立てたけど帽子屋は気にすることなく突っ込む。あの人と同じように食われるとか勘弁してくれよ……と思っていたら___
「魔力回復させてるから暴れないでよ、ちゃんと飲んで。案内人の魔力を貰えるなんてフツウないからね‼」
喉の奥にひんやりとした液体が伝う。
数秒、それを飲まされ手が口から離れると口の中が鉄臭くて吐きそうになった。まさかとは思うけど血じゃなかろうな?
「これくらいでいいかな」
「っ、あんた、なに飲ませたんよ!」
「血だよ!ちぃー!」
本気で血だったのかよ!!
鉄の味がしないから別の何かだと思ったけどまじかよ……。
「なんで血ィなんか飲ませるんやし!!」
「魔力を渡すには血か唾液を相手に摂取させなきゃいけない。涙でもいいし別の物でもね。僕のアリスは……腕落とすか」
意識を失ったシロさんの口を開かせてから自分の腕を切り落とし、出てくる血を丁寧に飲ませる。私の時くっそ適当だったのになんだコイツ。
「帽子くん、アナタ――」
「青の子、元気そうなら赤のアリスを連れてお茶会に行って」
「あの子も……殺すの、帽子くん?」
「当たり前。分かったらサッサと行け。それとも僕のやることに文句を言いに来た?」
「っ……分かったわ」
殺さないで欲しいとアイさんは言うつもりだったんだと思うけど帽子屋の機嫌が一気に下がったから何も言わなかった。言ったら、口を挟んだら殺される……。
言われた通りに私たちは急いでお茶会に向かった___
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます