映えスポットで行われるお茶会が物騒すぎる件について話そうか2
「ヒイロちゃん、お茶会は勝手に出て来る魔力回復のお菓子を食べて仲間と仲良く話したりする時間だから気を使わなくていいからね」
「怖がることはないわっ!フレンドリーにお話して関係を深めましょ!!親睦会!」
アイさんがそう言った瞬間、テーブルの上に各アリスをモチーフとしたと思われるティーカップがぽふんっと可愛らしい音を立てて現れた。私の柄はオレンジ色の鹿のイラストが書かれた可愛らしいカップになっている。
くっそシャレオツで高そうなんだけどこれ、割ったら賠償金請求されるとかじゃないよな……。
「めちゃ高そ……壊したら弁償とかやないでね?」
「大丈夫だよ、割ってもすぐ治るから!」
「そうよ!アタシたまーにこれで熱燗飲んで割っちゃうのよねぇ」
これで酒飲むとかこの人、大丈夫か。これに入ってるの酒限定とかだったら私未成年だから飲めないんですが……と思いながらカップの中に入れられた液体を嗅ぐと私が最近割と気に入っているレモンティーの匂いがした。
一口、口をつけるととんでもなく美味しい正真正銘のレモンティーが入っていてテーブルをふと見ればご丁寧にカットレモンが置かれてた、いつの間に出てきたこのレモン。
「す、すごっ!」
すごい、凄いけどなんで私の好み知ってるん……この机、怖!!
「レモンティー好きなんだね」
「さ、最近ハマっとって……」
「レモンティーいいわよね!!アタシも好きよ!」
この2人、レモンティーの美味しさを理解できる人達だったか。これは、これ仲良くできる兆しが見えた……はず!
「レモンの味がしてこう、ふぁってくる感じがじがしてええっすよね……スッキリするっちゅうゆーか…」
「分かるわ!!ふわっと来てスッキリする感じがたまらないわっ!」
分かり合える人と初めて出会った。レモンティー好きに悪い人(多分)はいないと思う、思うから現在アイさんの好感度は爆上中。シロさんよりアイさんへの信頼度は今現在高い。
某隣の先輩は「レモンティーなんて味のしない苦い茶だよ、ゲテモノ」とか抜かしてたからやっと分かり合える人ができた、それだけでもハッピーだ。ちょろい?知ってるわ。
というかこれを用意してる人、私の好み把握してるとかキモイけど凄いな。家の冷蔵庫絶対勝手に誰か開けたでしょ、汚いんだから開けるなよ。
全員同じレモンティーなのかと思ったらそうじゃないみたいで隣に座ってるシロさんは抹茶ラテ的なやつが入っててアイさんは青……というよりは水色に近い見たことも無い飲み物?が入っていた。オシャレだけどなんか食欲が失せる色をしてる、エイリアンの血とかじゃないよね?
「そ、それ…飲めるんです?」
「飲めるわよ、バタフライピーミルクティーなんだけど可愛くて美味しくて最高の紅茶なの!一口飲んで見る?」
「え、遠慮します……」
青色系の食べ物にはお隣さん(Sくん)の作る料理でトラウマがあるから食べれない。
青色の見た目が良さそうなデザートを食べて地獄を見た、作った本人は美味しいとか抜かしてたけど常人の私には腐ったプリンみたいな味がした。マジでトラウマ。
私と離れた場所に座ってるクロのティーカップをバレないようにそーっと覗いて見たらなんということでしょう、ラテアート付きのホットミルク的なやつが入ってた。え、お前それ飲むの??
意外すぎてじっと見ていたらクロと目が合ってしまった。
「こっち見んな、うざい。ムカつく」
不機嫌な顔でそう言ってからクロは自分のものを飲み始める。
「ア、アナタたち、ちゃんと仲良く……ね?」
「無理ッス。却下」
「アナタ、狩りの時は私情を挟まないでね?思春期の男の子ってムズカシイわね。男の子分からないわぁ!」
一応アイさんも男なのでは……と思ったけど口に出さなかった。
私はクロに何も返さず目の前に置かれたレモンティーを大人しくご馳走になる。何も言い返さないと分かったクロは大人しく紅茶を啜り始める。最初から大人しく紅茶啜っておけよ全く。
ちびちび紅茶を最初は飲んでいたけど思った以上に美味しくて3杯も一気しちまった、都会の女子が行くスツバに置いてある感じがしてすごく都会を感じた。これが都会の味、これが都会の嗜好品……すごい!!
「みんなそれぞれ好きな飲み物が用意されるんだよ、好みが変わったらちゃんと別のものが用意されるから毎日同じってことにはならないから安心してね」
「ほへー毎日変わる時もあるんか……バリエーション豊かとかすごいっすね…めっちゃ美味い」
「僕も初めはびっくりしたよ、とっても美味しいからつい飲みすぎて動けなくなっちゃったんだよね。お腹が膨れちゃって動けなくてだるまみたいになってた」
懐かしむようにシロさんがそう言うとクロがブフッと紅茶を吹き出す。ポーカーフェイスを保っている様子だったけど肩がピクピク動いてて誤魔化せてない。
バレてるぞ、もうバレてるから隠さなくていいぞ。お前笑ってるだろ、大人しく笑え。
「ちょっとクゥちゃん笑ったの聞こえたよ!!?」
「す、すみません……あんなにふとくなったのシロさんぐらいで、思い出したら……ぷっ」
「僕だけじゃないよ、アイさんだって食べすぎて風船みたいになってたじゃん!」
「シロさんの、レベルが…ふっ」
「あー!もう!そんなに笑わないでってば」
カップを持ったままふるふると震えるクロにシロさんはすこしムスッとした顔で怒る。
今のシロさんは細いけどどれだけ丸っこく、デカくなっていたんだろう。私の想像力は乏しく飛んだ想像はできないから想像がつかない。けどかなりデカかったんだろうな……。
飲み物で体型変わるとか流石魔法少女特典(?)だ。
「アタシも動けなくなったわね、酒が出ないのは悲しいけどここの紅茶はどこよりも美味しいからついぐびぐび飲んじゃうのよねぇ、もういっぱいよこしなさぁい!」
「え、酒出ないのにこれで酒飲んだんですか?」
「持参したのよ!」
アタシのお気に入りのシャンパンも出しなさいよ!と文句を言いながら机をバシバシ叩き、アイさんは紅茶を一気する。動画で見た酒ヤクザの飲み方してるけど大丈夫なのかこの人。
ひょっとしてだけどアイさんだけ現実の方で沢山飲んで酔ってからここに来てるんじゃない?現実でもこのノリなのか少し気になるんだけど。
「2人とも大変なことになったからヒイロちゃん気をつけて飲んでね、アリスを続ける限り多分ずっといじられるから……」
「お、おん……気をつけます」
「最初はまだアリスとしての体ができてないから次の5杯で止めた方がいいよ」
「そ、そうなんすね」
気がつけばもう4杯目に突入していて一旦飲むのを止める。シロさんとアイさんに笑いものにされるのはいいけどクロにされるのは絶対にゴメンだ。
「そろそろメインが来る頃かな……」
シロさんがそう言うとまたぽふんっと可愛らしい音を立てて見たことも無い程の量のお菓子___ケーキ机の上に現れて空中に手で掴めるシュークリームやマカロンが現れた。
「これがアリスの魔力を回復するお菓子。飲み物でも多少は回復するけどこっちの方が吸収されやすいからこっちをメインに摂取してね」
ふわふわと宙に浮かぶお菓子は色んな種類があってとてもカラフル。青色と血のように赤いケーキとか紫とか黒はちょっと不味そう、というより絶対毒入ってるでしょ。ヤバいオーラを感じるんだけど。
まぁそれ以外のものは全部美味しそうでめちゃくちゃ食べたい、育ち盛りだからいっぱい食べたい。家では親が少ししか食べ物を買ってこないからほぼ毎日、年中無休で腹が空いている。
「ぜ、全部自由に食べてええんですか……?」
「食べていいよ。無くなってもすぐに新しい別のお菓子が出てくるから……でもあんまり食べすぎるとこれも太っちゃうから気をつけて。滅多に食べすぎることなんかないけ___」
シロさんが私に教えてくれている途中でテーブルがガタン!と音を立てて揺れた。ティーカップがひっくり返らないように脅威の反射神経でカップを守ったけど少し溢れ守りきれなかった、すまん紅茶。
揺れた原因はクロがお菓子を特売の日に現れるおばさん達の如く宙に浮かぶお菓子を取ったからでクロはサッサっサッと自分の好きなお菓子を取っていく。こいつがもし詰め放題のあるデパ地下にいたら奥様たち大発狂レベルだ___
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