映えスポットで行われるお茶会が物騒すぎる件について話そうか3



「クゥちゃんとてもお腹が空いてるみたいだね、珍しい」


 テーブルマナーなどを気にもせずクロは素手でお菓子を勢いよく食べる。今まで機嫌が悪かったのは空腹が原因か?原因なのか??

 空腹状態の時に機嫌悪くなる人ってほんとめんどくさいから嫌いなんだよなぁ……兄貴とか兄貴とか兄貴がすごくいい例に当てはまる。


「ずっと、使いっぱ…だった、ので。はら、へりました」

「なるほどね…本当に助かったよ、おかげでヒイロちゃんもケガをしなくてすんだ。ありがとう」

「シィさんに頼まれたから、動いただけっす、から。雑魚、助けるとか、最悪っす」

「あはは……そ、そんなこと言っちゃダメだよクゥちゃん」


 クロのさりげなーく混ぜ混んだ暴言に対してシロさんは苦笑いをする。なぁシロさんよ、こいつのどこがいいんだ?こんな性格クソ野郎と親友……しかも大親友とか申し訳ないけどイカれてるとしか思えないのですが。


「クロくん今日はご機嫌ななめなのねぇ……学校で何かあったのかしら?」

「別に……。イキって生半可にアリスになった雑魚が嫌いなだけです。見るだけで不快なんすよ」


 むっしゃむっしゃとハムスターみたいに食べ物を食いながら毒を吐く野郎。口を開けば暴言しか出てこないこの人一体どんな教育を受けて育ってきたんだよ。

 こいつの沸点わかんないから何も言い返さない。1言ったら100で帰ってくるでしょ絶対。めちゃくちゃ怖いんだけどこれからどう接していけばいいんだろう。

 とりあえず帰ったらクークルちぇんせーの質問を投げよう、それがいい。


「あ、そうそうヒイロちゃん。帰りたくなったら帰る場所を想像すれば帰れるからね。あそこに浮いてる時計が現実世界の時計だから……目を閉じて“帰りたい”って思いながら場所を想像したら移動できるから覚えておいてね」


 そう言いながらシロさんはふわふわと浮遊する時計に指を指す。奇妙な針の付いた時計が表している時刻はまだ朝の4時近く。兄貴が起きる時間じゃない。まだここに居て贅沢なお菓子を食べても問題はないかな。

 日の出まで腹いっぱい美味いお菓子を腹に詰めてやる、太らない程度に制限はかけるけど。


「すぐ喰われるだろうし覚える必要なんてないんじゃないんですか?」

「ちょっとクゥちゃん、シーー」

「ぅ……ごめんなさい」


 注意されてシュンっと分かりやすく、不貞腐れた犬みたいに落ち込むクロに心の中でざまぁみろおおお!!と全力で叫ぶ。しょぼくれたクロは更にムッとした顔をしてお菓子をヤケ食いし始める。見ててこっちが吐きそうになるくらい食ってるけどもしかして見せつけて胸焼けを起こさせる嫌がらせをしてるとかか!?

 私も対抗したいけど甘いものより辛いものが好きだしお菓子は太るからここは対抗しない。大量のクリームがクロの顔に付いていて見てるだけで吐きそう、セルフ吐き気製造マシンじゃん。やめろよ。


「ちょ、クゥちゃんそんなに急いで食べなくてもお菓子は逃げないって。顔クリームだらけじゃん、ププッ」

「まひょく、ぎれ、た、んす。はら、へって、ひにそ、だから……うへ、これレモンパイかよ」

「アナタそんなに早く食べてたら喉につまらせちゃうわよ!もう、最近の男子高校生は食い意地が張ってるのね……シロくんを見習いなさい!」

「うるへー。んぐっ、シィさんと俺は違いますから……俺はそこの雑魚と仲良くするきぃないですから!」


 ギロリという効果音がつきそうなくらい睨まれて思わず「あ?」と声を出してしまった。


「半端もんが生き残れるわけねぇし、その場の半端な理由でアリスになった弱虫で馬鹿なやつとなんで同じチームなんだよ……腹立つわ」


 独り言のように小さく言うクロだけど全部、全部まるまるきれーに聞こえてるんですが。そのお喋りなお口裁縫セットで縫い縫いしてやろうか……腹立つが抑えろ自分。

 私の方が落ち着いているし精神年齢もアイツよりかは多分上なので右から左へ聞き流してやった。あれ、もしかしてアイツ小学低学年の男子と同じな気がするぞ。


「まぁ!レディーに失礼よ⁉アナタ人が変わったみたいになって一体どうしたのよ!」


 酷く驚いた様子のアイさんはクロのそばに行き、熱がないかを確認する。大丈夫そいつ小学低学年の男子だから正常運転だよ、多分。化けの皮が剥がれてやんの、ザマァ。


「女の子には敬意をもって紳士的にお話しなきゃダメよ?新人ちゃんにそんなに強く当たるなんてアナタ自分が言ってるのに自分がしてるんじゃない」


 1番年上のアイさんにしばかれたら大人しくなるかな……いい制裁になるんじゃないかと期待したけど――


「クソガキな年下は嫌いなんです。仕方ないでしょ?コイツチビだし雑魚だしわがままだし使いもんになんねーだろ」

「この子と全く話してないでしょうアナタ」

「こいつを助けてやった日に喋ったし、人間の時のやつも知ってるし……助けてやった時見たし」

「それは喋ったに入らないわよ……全く」


 いくら言ってもこいつには効かない様子……しばらく言い争いが行われ、アイさんが結局折れ「アタシ帰るわッ」と叫び帰ってしまった。

 アイさんってメンタル意外と豆腐みたいでクロにちょっと強く責められたら涙目になってた。めちゃくちゃどうでもいい発見かもしれない、うん。


「ほんとなんでこんな雑魚がアリスに選ばれたんだろうな。間抜けで自分のことしか見てられない、ろくな敬語も使えねーし。早死にしたらマジでネタだわな」


 ギャハハっと腹を抱えながら笑うクロに言い返したい欲に駆られる。しかしここはお茶会をする場所であり、喧嘩をする場所じゃない……体育館裏とは違うはずだ。


「流石にそれは言い過ぎ。僕、怒るよ?」

「ご……ごめんなさい」


 またシロさんがクロに一括するとクロがしょぼんと顔を悲しそうな顔になった、シロさん絶対飼い主向いてるよ。飼い主に任命した方がいいよ。

 心の中指を立ててザマまぁみやがれクソ男と思った瞬間クロが睨んできた。まさかテレパシーを使える魔法とかじゃないよなと冷や汗が止まらない、こいつの魔法ってエスパーか!?

 心を読むって魔法って戦闘においてあんまり強くないのでは……知らんけど。


「ごめんねヒイロちゃん、クゥちゃんは魔法の影響で気性が荒くて……」


 魔法のせいで性格が変わるなんて少し可哀そうだと思ったけどだからと言って許すわけはない。これは立派な名誉棄損だ、侮辱罪とかにも当たるでしょ。

 というかシロさんに怒られたクロがブツブツと私を見ながら愚痴をお経のように呟いてマジホラーになってる。軽くホラー映画になってるからやめてもろて。まぁアレは放置だ放置。触らぬ神に祟りなしって言うしね。


 ――数十分後


 懲りずに呪詛を呟いていたクロが突如立ち上がって「帰ります」とシロさんに宣言した。

 おうおう早く帰れと思ったけどシロさんが引き留めてしまい何やってんだよアンタアアァって心の中で叫び散らかす。ほんと何やってんだこの人。


「クゥちゃん帰っちゃうの⁉」

「ん。帰ります」

「えぇ僕とゲームしないの⁉今日行くって言ってたじゃんー!あと40分だけ!40分だけ……ちょーっとだけでいいから!ね?ちょっとだけ、ね?」

「ちょ、その先っちょだけみたいに言わないでください……」

「1戦だけ……1戦だけだから…」

「語弊が生まれる言い方っすそれ、ゲームってちゃんと言って下さいよ……」


 必死に引き留めるシロさんにクロは不機嫌な声で「帰りますから」とキッパリと言う。

 別に帰りたいのなら勝手に帰っていいだろうと思うけどシロさんだって人だから仲が良い人とは長く居たいんだろうな、しかし血で血を洗う喧嘩が起こるかもしれないことも考えて欲しい。


「な、なんで帰っちゃうの?今日は――」

「雑魚がいるから嫌なんです。雑魚といたらイライラしてたまらないんですよ、雑魚が移る」


 嫌味たらたらな口調でやたらと〝雑魚〟を強調してくるクソ野郎クロ。切れ長の白い目が私を捉えて殺意を放っていた。

 マジで先輩怖すぎるんだけど……治安悪すぎてクークル先生、クークル知恵の袋に質問投げて対処の仕方を教えてもらいたい。


 

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