訳アリありJCの私、先輩にめちゃくちゃ嫌がらせされるけどこれってなにハラってなんだろ

映えスポットで行われるお茶会が物騒すぎる件について話そうか1



「よーし、ついた。ヒイロちゃん、ここがお茶会の場所だよ」


 行きと同様目を閉じて浮遊感を耐えていた為、地面に足が着いたのを確かめてから恐る恐る目を開く。するとそこは赤薔薇以外の花は咲いていない大きな庭園でその入口部分と思わしき場所に私達は立っていた。


「す、すご……なんやここ」


 大小様々な赤い薔薇はとても綺麗……SNSとかだったら絶対バズるレベルに綺麗で豪華だけど、だけど__


「う、うげぇ……ひぬ。うぇえええ」


 めちゃくちゃ吐きそうで映えぇと言っている暇は私には無い。こんな綺麗な場所で場ゲロはしたくないけど今喉の所まで色々来てる、あともう少しでこんにちはする、やべぇ。


「み、水とか、水とかないんすか……」

「向こうに行けば大丈夫だよ。ヒイロちゃん乗り物酔いしやすい体質なんだね」

「めちゃ酔います、絶叫系も無理っす……おげぇ、しぬ」

「これから大変だから頑張ってね、ふふっ」


 ゲロりかけて死にそうになってる私を見て笑いを必死に堪えるシロさんに少し殺意が湧いた。シロさんとクロもしかして親友じゃなくて双子とかじゃないよな……地味に性格が似てる気が。いや似た者同士だから合うってやつか。


「笑わんといてくださいよ……」

「ふふ、ごめん。ここまで酔う人初めてみたから、ぷぷ」

「意地クソ悪いです」

「ごめんごめん。じゃ、向こうに行こっか……ふっ」


 謝ってる割にはまだ笑ってるシロさん、この人意外と性格が悪い!私の良い人レーダーは老化が進んでポンコツになってるな、使えねぇ。粗大ゴミに出してやる。


「さ、こっちこっち!」

「ちょ、まっ急に引っ張ったら___」

「大丈夫大丈夫!アリスの体が馴染んだら体が変わるから大丈夫だよ」


 容赦なくグイッと腕を引っ張られながら道を進む。まだ気持ち悪さが残っているせいで気を抜けばそのまま中身がハローと顔を出しそう。一旦その場で休ませて、マジで。一生のお願いだから、マジで吐く。


「でそ……まじでる、ちっとだけ休ませて欲しいんすけど」

「もうすぐそこだから頑張って、すぐに着くから」


 にっこにこのシロさんは私のヘルプの声を無視してどんどん歩いていく。この人、絶対に人の話を聞くという言葉が存在してないでしょ。

 すぐに着くと言われて死にかけで歩いた、歩いたけどなかなかつかなくて途中で死んだ。死にました。花壇の土に今日食べた夜ご飯をこんばんはさせてしまい割と本気でシロさんに呪いをかけてやろうかと思ったね。許せん。人がマジゲロしてる時に隣で爆笑してるなんて悪魔だよ、あの人絶対悪魔か何かだよ、誰だよ天使なんか言ったやつ。

 吐き終えた後、更にちょっと歩いてやっと着いた。何がすぐ着く、だ……全然かかってるやないかいと言いたかったけど一応先輩ではある人なので心の中で愚痴を吐き散らすだけで我慢する。


「ここがみんなが集まる場所。次回からはここに直ぐに来れるようになってると思うから歩かなくていいからね」


 丘の上に立てられた赤茶色の簡易的な休息スペースの下に辿り着いた。超金持ちの庭においてありそうなほどオシャレな建造物は大きな公園に置いてある休憩スペースぐらいある、凄く金かかってそう。

 つか最初からここに飛べば済む話だったじゃん、吐かなくてすんだのにクソ。


「最初っからここに来たら良かったやないですか……」

「この場所を覚えてもらうために必要なことだから仕方ないよ」

「嘘こけ……」

「嘘じゃないよ、ほら。早く行かなきゃみんながお腹を空かせたまま待ってるから怒られちゃう」


 再びグイッと腕をまた引っ張られて私はその建造物に入っていく。

 中は時計をモチーフとした丸い大きめの白テーブルと椅子が置いていて椅子とテーブルがめっちゃ高くてびびった。

 2つの席に既にアイさんとクロが座っていて喋っていて、クロの表情がさっきと全く打って変わって柔らかくて穏やかな表情をしている。こ、コイツ……こんな柔らかい顔もできるんだ(煽り)。


「そんで俺がさ……あ」


 クロと目が合った瞬間、クロはさっきと同じ不機嫌な顔に秒速で戻る。そしてそのまま低い声で「生きてたのかよ」と文句を言った後に机に伏せて寝始めた。

 何なんだこの男、マジでコイツ嫌い。こんな協調性も欠片もない暴君な野郎が仲間とか無理すぎる、きちぃ。こんなのが先輩?無理すぎるんですが、パワハラ上司ってやつじゃん。

 やっぱブラックだ魔法少女。


「ぼ、僕の隣に座って、クゥちゃんの隣は気まずいもんね…。はは……」


 あの態度には流石にシロさんも引いている様子、そりゃ引くよこんな性格悪いヤツをみたら。裏で陰口叩いて本人の前では仲良くする陰湿な女子よりかは多分マシだけどさ、マシだけど腹立つ!


「と、隣失礼します……」

「どーぞどーぞ!」


 そう言ってから私はシロさんが座る席の隣に腰をかける。席は全部で5つあり、時計回りにアイさん、クロ、シロさん、私、空席になっている。

 空席の場所にはどんな人が座っているのかを尋ねたらシロさんが「僕も見た事がないけど一応いるみたいだよ」と教えてくれた。

 何か訳アリアリな匂いがして深堀して話を聞くのは申し訳ないのでそれ以上私は聞かなかった、ちゃんと人の境界線は守る主義を掲げてるからね!親しき仲にも礼儀ありを徹底的に、シオン君からクッソ言われた言葉めちゃくちゃ役に立つから凄く重宝してる。


「何が始まるんやろ……」


 ここで何が始まるのやら、と辺りを見渡していると___


「よっと!2人共おつかれさま、可愛いかわいいアリスちゃん達、今日の主役が来たよー!」


 私達が席に座ってから少したった後、ウサギが灰色の煙と共にいつものぽふんと音を立てて現れた。


「赤のアリスだね!名も無きアリスから一歩昇格だよ!よかったよかった、怪我はある?魔法は?武器は出せるようになったかい⁉どんな武器に選ばれたのかな?ハンマー?斧?それともナイフだったり弓だったりする?」


 現れるなりとんでもない早口で喋り初めるウサギ。ギリギリ聞き取れたけどもう少しゆっくり話して欲しい。というか他のアリス達も皆こんな感じに質問攻めされたのかな?クロとか絶対ウサギ殴って黙らせてるでしょ。


「聞き取れたけどもう少しゆっくり喋ってくれん?あとキーキー声なんとかして、叫ぶのマジでうるさい」

「う、ごめんごめん。つい興奮しちゃってね、声に関しては仕方ないから我慢して!」

「今叫ぶのやめろって言ったんやけど!?」

「叫んでないもん!普通に喋ってるだけだし!!酷いよ赤のアリス!!」


 何度言っても多分聞かないなコイツ……このうるさいキーキー声に慣れるしかなさそう。慣れた時には聴覚がイカれてる気がするけど。


「もうええわ……。とりあえず怪我はせんかった。魔法と刀が出たき多分出せるんやと思う。で、そんな時、へんな声が聞こえたんやけどあれ誰なん?」


 聞かれたことに答えるとウサギは見たことの無いほどの酷く驚いた表情に変わった。私の隣にいたシロさんも不思議そうな顔をしている。

 声が聞こえるのが普通だと思ったけどどうやら違うみたい、ひょっとしてあの現象はよろしくないことの前触れとか言わないよね、言わないよね!?怖すぎるんだけど、ホントやめてよ……。


「ヒイロちゃん、あの時変な声が聞こえたの?」

「それってどんな声だったのかな?普通の人?それとも小さい子の声?男の声だった?それとも女?」

「えっと、ちゃらけた感じの男の人の声やった。関西出身の人なんかなめーっちゃそっち方面の言葉やって、その人から武器と属性言われた後に期待してるとかなんとか言われたけんど……」


 あの時のことを話すとウサギの顔がさっきよりも一段と険しくなった。絶対良くないことやん、絶対ダメなやつやん……どうしよ、私死ぬかなんかするんか?

 悪夢の始まりとかマジでそんなの要らねぇからな。


「ほへー……僕の時、そんな声聞こえなかったのになぁ」

「ふんふん、これは新しいパターンだ!新しいね!教えてくれてありがと!!とりあえず怪我がなくて良かったよ」

「ウサギさん、ヒイロちゃんのアレは今まで聞いたことない事例だったの?」

「そうだね白のアリス。何かあったら困るからボクは今からに戻って探してみるよ!!じゃあボクはこれで!みんなまったね!」


 少し考える素振りをしてからウサギは姿を消した。あの青年の声は何だったんだ、特に気にしなくてもいいんだろう。

 まぁ難しい事は考えずその時になったらでいっか。きっと何とかなる。もしかしたら強運の意味を持つかもしれないし……。

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