訳ありありJCの私、なんか変な化け物に襲われてやべぇヤツに囲まれたんだが

エモくない青春してたら不思議の国に迷い込んだんだが1





 2月上旬――。





 年上幼馴染の男の家に私は転がり込んでお泊りしている、断じて恋人同士ではないから安心しろ非リアの民達よ。



 異性が夜に2人きりだったら何かの間違いが起こるとかどーたらこーたらって言うけどマジでお互いそんなことをする気は無いからな!!



「あーにゃむにゃむなんたらチキン食いたいー」



 私、紅葉暮羽モミジクレハは田舎に住む何の取り柄もないただのフツウな中学2年生の女。


 田舎に生まれでいままで都会に出たことがない純粋な田舎っ子……いや、こうして学校を平気でサボってし少し違うか。髪も茶髪な上にピアスも開けているし純粋とは言わないかもれいないけど中身はピュアピュアな純粋JCだ。



「あーーつかれたあー」



 何もしてないけどすごく疲れた、めちゃくちゃだるい、はぁ……生きてることがめんどくさい、そんな時ってない?あ、私だけか。


 悲観的な感情は芋ずる式に出てくるのでこのままではやばいたふわふわで触り心地抜群の黒いカーペットにぐでぇーっと倒れ、適当なおもしろ動画を漁る。しかし流れてくる動画は全部グルメ動画で飯テロをされ腹の虫がなり始めた。


 ふざけんな!と思いながら飛ばすと更にまた美味しそうなご飯が映し出され、また飛ばせばまた飯が流れてくる……マジでふざけてんだろこのアプリ。


 私は空腹に打ち勝つため、最愛のスマホをシャットアウトした。まじで最近のアプリ怖いわ。



 暇になってしまったのでとりあえず先輩に話しかけよう、ゲームしてるけど暴言吐いてないし多分今は大丈夫なはず……。

 


「ねー。こないだトーキョーに住んでる従兄弟が来てさー、そん時私がふつーに“のうがわるい”って言ったらキレられたんやけどさー……なんでなんー?」



この間起こった出来事を唐突に話せば先輩はゲームの手を止めて呆れながら私の方を見た。



「東京の人に自分たちの方言が伝わるわけないでしょー。クレハ、馬鹿なの?」

「そんなん知らんしぃ……」

「使い勝手が悪い、とか使いにくいとかで言わなきゃ勘違いされて当たり前……あ、また負けた。ほんとムカつくこのゲーム……アンストしよ」



 そう言ってスマホに中指を立てる先輩――黒枝茨遠クロエダシオンはスマホを置いて別のゲーム機を取り出しゲームをする。そのゲーム機、さっき負けたって言ってやめてたのに気が変わるのが早いなおい……。


 先輩は2つ年上で今は高校1年生で現役DKと言うやつ。高校生の割には中世的な声と見た目で常にニコニコと胡散臭い笑みを浮かべてるから狐目女って近所の悪ガキがあだ名を付けてた、んで悪ガキはシオン君にボコられてた、ざまぁねぇ。


 シオン君の家は私の家の真横でベランダからこの人の部屋に侵入できるほど近い、いつもベランダから毎回彼の自室に上がるからめちゃくちゃ楽。お隣さんが知り合いって最高だろ。まぁ今日は泊りなので靴をわざわざ履いて玄関からこんにちはしましたけど。



「キャラコンクソ、雑魚ばっか無理ぃ」

「シオン君それさっきおんなじこと言よったけど」

「言ってたっ――うげ、これ絶対つみじゃん」



 さっきから何度も負け続けているのによくやるもんだ、ずっと負けているゲームのなにがおもしろいんだ?まぁゲーム好きにしか分からない良さがあるんだろうな、知らんけど。



「そんな負けるゲームほんと面白いん? 引退せんの?」

「しないよ。やらなかったら大体後でやった方が良かった!ってなるのがオチだしやめたら後で絶対後悔する……クレハもそういうタイプでしょ」

「……多分」

「そういうタイプだよ、はぁ……ちょっとトイレ行ってくる」



 ゲーム機をポイっとベッドの上に投げて部屋から出ていく。


 数分後――シオン君がお菓子を持って戻って来た、かなりの量の多さにちょっと引いたけどありがたーく食べてやる。新発売の気になってたお菓子あるぞ、流石我が先輩。



「これ、全部食べていいからねー」

「え、いいん?」

「このお菓子嫌いだからいーよ、食って」

「んじゃ遠慮なく食べるわ」

「あーんで食べさせてあげようか」

「殺すで」

「冗談だわ」



 クスクスと悪ガキのように笑ってからシオン君は置きっぱなしにしていたゲームをまたやり始める。はたから見たら恋人に見えるらしいけど断じて違うからな、何度でも言う、この人とは付き合ってない。

 マジでこの人は違う、この人はマジで性格が悪い。自由人だし気まぐれだし適当だし金使い荒いし、ズバッと言葉を言ってくるしとにかくヤバい。倫理観は辛うじて残ってるみたいだけど道徳心が……。


 付き合っている女は本当に物好きだと思う……クズがモテるというのは多分このことなんだろう、知らんけど!


 そんなクズ先輩は私より女の子みたいな容姿をしていて声も自分よりか高い、そして私よりも女子力がある。私のブリーチをし過ぎてギシギシになった茶髪に比べて彼はブリーチをしているのにも関わらずサラサラで赤みのかかった黒髪はマジで弄りがいがある。


 髪が少し長いから下ろしていれば完全に女(本人に言えば殺されるから秘密だけど)だから腹立つんだよな、分けろよその女子力、よこせこら。分けろ。



「シオン君なんか腹立ってきた」

「え、自分何かした?」

「存在が罪」

「理不尽、最低」

「シオン君だから仕方ない」

「えぇー」



 理不尽なんて社会に出たら当たり前なんだよ、社会と言うよりもうなんだろ、人間の世界が終わってると思う。

 私もちゃんとしたJCだったら今頃は沢山の友人に囲まれて恋人とぎゃんこらして楽しいアオハル……学生のあこがれの存在“青春”を送っていたんだろうなぁ!と心の中で愚痴を呟いてから再び私はぼけーっとスマホで動画を見始めた。



 深夜11時――



 いつもなら余裕で起きている時間だけどオールをしているせいでとても眠い、気を抜けば一瞬で夢の世界へグッバイできそう。夢の世界と現実の世界をうろうろとしていたらシオン君がトドメをさすかのように毛布を掛けてきた、変なところで気が利くからマジでこの男ずりい……クズイケメン野郎が。



「寝てもいいよ、無理して起きる必要ないしさぁ」

「うー……」

「はは、もう寝落ちしかけじゃん。てか顔、事故ってる」

「うっせー、殴るでぇ」

「写真撮っとこ」



 前言撤回、コイツはただのクズクソ野郎だ。


 

「その顔写真撮って友達に回していい?」

「マジで、マジでクズ……」

「嘘うそ、そんなことしないよ。ほら、もう早くおねんねしな」



 ぽんぽんと優しく頭を撫でられて目がついに開かなくなる、眠りに誘うプロだこの先輩……恐ろし。もう耐えられない、これは夢の世界へ行くしかない……レッツ夢の中へ…………。



「寝る、もう寝る、触んなぁー」

「ふふ、わかった。俺、ちょっと課金カード買ってくるから出るよ」

「課金って……分かったけんど深夜徘徊で補導されんようにね」

「大丈夫、お休み。行ってくるねー」



 そう言ってシオン君は部屋の電気を消して部屋から出ていく。

 補導時間をとっくに回っているのによく外に出かけられるな、なんて思いながら私は夢へ飛び込みかけた……だけど、



「寝れん!ねれーーんんんっっ!!」



 シオン君が居た時は眠気が強くてすぐに眠れる状態だったけどあの人が居なくなった途端に目が冴えてしまった。先ほどの眠気はどこへやら……全く眠気を感じない。

 なんだこのクソ迷惑な現象は。



「はぁ……せっかく寝れる思ったのに。はー、待つか」



 これは眠るのを諦めてシオン君が帰って来るのを待ってようと部屋の電気を付け、相棒のスマホで動画を見る。コンビニまではそこまでかからない、往復20分で帰って来られるからすぐ……都会民からしたら遠いかもしれないけど私らにとっちゃすぐだからな!



「あの人、何しとんやろ……」



 もうそろそろ帰って来てもいい頃、というよりかは帰って来てないとおかしい時間なのにシオン君は家に帰って来なかった。

 更に時間が過ぎ、1時半を回る。



「遅い、遅すぎん?」



 メッセージと煽りスタンプを何件か送ったが既読は付かない、試しに電話をかけたけど繋がらず、ムカついてスタンプを大量に送っても何も返って来ない。


「なんで出んのやし……はぁ。探しに行くか」


 音信不通状態にかなり心配になって探しに出ることにした、思ったら即動くのが私の特性だから何の迷いもなく準備をする。2月の深夜に部屋着(半袖半パン)で出歩くのは流石に気が引けるから勝手にクローゼットを開け着替えた、後で怒られても音信不通になるのが悪い。



「よっし、張り切っていくでー!」



 深夜の外出は少しだけ心躍る、私の小さい時の冒険心はまだまだ健在のご様子。



 さぁ不良野郎を探しに行くぞ!!

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