空腹のルンバ

夏秋冬

空腹のルンバ

家に帰るとなんだか掃除が行き届いておらず、ルンバはどうしたのかと探すと部屋の隅で丸くなっている。

「どうしたのだ?掃除が行き届いておらぬではないか」と問うと

「大方はやっています、わたしだっていつでも完璧というわけにはいきません」と答える。

まあ、そういうこともあるかな、と思ったが、そんな仕事の質が上がったり下がったりするようでは困る。というか、そもそもなぜ下がっているのか。

そう思い

「どうしたのだ?何かあったのか?」と問うと

「別に」と拗ねたようなことを言う。その吐息からは少し酒を飲んだことが知れる。

「お酒を飲んだのだね」となるべく優しい調子で言ったつもりだったが

「わたしだってお酒くらい飲みます、あなただって飲むでしょう、お互い様です」と、こじらせていて、私にまで不機嫌をぶつけてきている。


取り付く島もないと思い、夕食の支度を始める。

すると、気付いた。

ルンバの充電ドックのコンセントが外れているではないか。ルンバがドックに接続すればバッテリーに充電されるものだが、大元のコンセントが外れていればドックに入っても充電できない。だからあんな部屋の隅で丸くなっていたのかも知れない。

そして別の部屋の片隅で花瓶が倒れているのも見つける。どうしたのか。部屋は締め切りになっているので風が入ったり動物が忍び込むこともない。

花を捨て、こぼれた水を拭き取れば片付けは終わった。そんなことをしている内にルンバは充電ドックに入っていた。


「さきほどはすいませんでした」ルンバが遠慮気味に話しかけてきた。

掃除中に花瓶を倒してしまった、しかし自分では片付けることもできない、自分に嫌気が差して拗ねていたがバッテリー残量は減る、しかし充電ドックに入っても充電できない、コンセントが抜けているのも掃除中に自分が引っ掛けたのだろう、ますます自分が嫌になって酒など飲んでしまった。

という顛末であるらしい。


腹が減れば誰でも機嫌が悪くなる。ルンバにだってそういうこともあるだろう。笑い話にしてこの話はおさめた。ルンバも苦笑していた。


しかしどうやって酒を飲んだのかはよく分からなかった。

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空腹のルンバ 夏秋冬 @natsuakifuyu

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