レベル3 女騎士ゼーダ
ドラゴン危機を切り抜けた(?)のち、もう森の奥にいる気になれなくて、早々に引き返してきた。
いきなりドラゴン種と遭遇するなんてそうはないことだろうけど、やっぱり森のモンスターって怖いね。
ポヨン♪ ポヨン♪ ポヨン♪……
さて、こうして人の道に戻って来ると、今度はすんなりと三人組の冒険者と遭遇した。
剣士風の男がひとり、弓矢を持った男がひとり、杖を持った女がひとり。
クックック、おあつらえ向きだ。
覚悟しろ、人間どもめ!
と思ったが……
「おい、見ろよ。スライムだぜ?」
「へえ、この辺りじゃめずらしいわね」
「どうする?」
冒険者三人は互いに顔を見合わせて相談する。
「放っておけよ」
「そうね。わたしたちスイーツ・リザータもD級冒険者になったわけだし」
D級!?
D級まで来るともう初級とは言えない。
おそろしき中級冒険者だ……
「そうそう。スライムなんてノミみたいな経験値だろ。オレたちが倒しても意味ねーって」
「うふふ、言えてるわね」
「おい、スライム。あっち行けよ。シッシッ」
コ、コイツらぁ……スライムを何だと思っていやがる!?
でも彼らは中級冒険者だ。
悔しいけど、俺はスライムを噛み潰しながら彼らが通りすぎるのを待つ他なかった。
ヒヒーン……!!
そんな時だ。
ふいに馬の
彼らの目線を追うように俺もそちらを見るとそこには立派な黒い軍馬にまたがる女騎士の姿があった。
「お、おい。あれって……」
「あの鉄仮面……薔薇と
女騎士はフルフェイスの
堂々と胸を張った装甲の金属質な乳房。
左手には軍馬の
右手には壮麗なウィングド・スピアの施された槍。
白いパンティのような尻をどっしり
「うっ、なんてイイ身体してやがる」
「ちょっと、あんたたち。ヨダレ(怒)」
「あ、ヤベ……」
いかめしい鉄仮面にムチムチな女体が妙に官能的なのか、冒険者のオス♂二人は急に発情しまったようだ。
ちなみにスライムである俺は、どんなにムチムチでも人間のメスに発情したりはしないけどな。
いや、これはマジで。
だからこそ、女騎士の強さがダイレクトにわかるのだ。
この女はデキる。
メチャクチャ強い。
俺のスライムとしての危機察知能力が、全力でヤバイといっている。
あっちで呆けている中級冒険者なんてメじゃない。
あんなのと関わったら経験値がいくつあっても足りないぞ。
俺はなるべく彼女の気を引かないよう、ドブのわきでウ〇コのごとくプリっとしていた。
そう。
あれほどの使い手ならスライムなんて相手にしないだろう。
ただ、目を合わせてはいけない。
ガンつけたとか、思われてはいけない。
ふにゅう…………
「……おい!」
びくぅ!!
女の勇ましい怒鳴り声にビビッて思わず見ると、鉄仮面の目穴から青い瞳がこちらを
ヤバっ、目合った。
「な、なんでしょうか……」
「そなた、只者ではないな。何者だ?」
うわっ、めっちゃ
「何者って、ただのとおりすがりのスライムですけど」
「嘘を申せ! その並々ならぬ闘気……スライムなどであろうはずがない。はやく正体をあらわせ!!」
「正体、と言われましても(汗)」
こちとら生まれも育ちもスライム。
400年の修行で
「あくまでしらばくれるつもりか? ならばそなたの体に直接聞いてやる。 覚悟!」
鉄仮面の女騎士は馬上でクルクルと槍を回したかと思えば、突如その穂先をこちらに向け、猛然と突いてきた。
「ぎゃッ、危ない」
「おのれ……逃すか!」
とっさに
「ちょ、ちょっと危ないじゃないですか。勘弁してくださいよ」
「むむ……その身のこなし、やはり只者ではないな」
聞いちゃくれない。
「ならばもう容赦はせぬ。受けてみよ、ウインドブレイカー!!」
騎士がそう唱えると、槍の切っ先から物凄いスピードで風の刃が飛んできた。
こ、これは避けれない……
避けれないなら耐えるしかない。
キュイーン……☆
俺は瞬時にボディの硬度を高めた。
ボディの硬度を高めるだけならば修行120年目に完成していたが、瞬時に硬さを変化させる修行はだいたい280年目くらいに完成したのだっけ。
いずれにせよ、これでなんとか致命傷は回避できるはず。
ヒュオオオ……ガキン!!
すると風の刃は俺のボディを跳ね返り、逆に女騎士の顔の方へ飛んでいっってしまった。
「なッ……!」
意中の外だったのか。
女騎士は馬上で身をひねって刃をかわそうとするが、完全には避けきれず、その鉄仮面の左半分を削ぎ落としてしまう。
ツツー……ぽたっ、ぽたっ……
破れた鉄兜から、人形のような若い女の顔が露出する。
その白い
「すいません、すいません! わざとじゃないんです」
これで敵対の意思があると思われてはたまらない。
俺は駆け寄り、すぐさま女へ回復魔法をかけてあげた。
ポわぁああ……☆
「ッ! いつのまに間合いを……」
「ああ、治ってよかった。女性の顔に傷がついたら大変ですもんね」
「!!……♡」
すると、女騎士は何故かボーっとしてこちらを見つめていたが、もう攻撃はしてこなかった。
やれやれ。
俺が刃向かう意思のないか弱きスライムだって、やっと信じてもらえたようだ。
「な、なんだあのスライム……」
「信じられないわ」
振り返ると、さっきの中級冒険者があんぐりと口を開けていた。
どうしたんだろう?
よくわからんけど、みんなボーっとしているうちにこの場を去った方がよさそうだ。
「じゃ、じゃあ。俺はこれで……」
そぉー……
「待て!」
しかし、女騎士の勇ましい声にビクッとなる。
「ひっ、まだなにか?」
「そなたがスライムであるかどうかはもう追求しない。何かよほどのワケがおありなのだろう。ただ……どうかお名前だけでも教えてはいただけないだろうか? 私は『薔薇と
名前か。
覚えられてまた敵対されたら厄介だとは思ったが、断ってまた敵対されるのも怖いから、素直に答えておこう。
「ええと、俺の名はスラ。さすらいのスライムです」
「スラ様……さすが立派なお名前♡」
立派かなぁ?
スライムだからスラだなんて、犬だからポチみたいなネーミングよりもテキトーな気がするけど。
でも、ゼーダとかいう騎士はなんだか知らんけどそれでポー♡♡っとしていたので、その
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