Chapter.27 変遷


次の日担任の教師に就職に切り替える事を報告した。

一時間近く面談した。教師は親に説得すると言ってくれたが

父があぁなるともうだめなのも分かっていたし何よりポッキリと心が

もう折れてしまった。自分の中で何かが終わってしまった。


そのままただ卒業を待つだけの日々。

就職は適当に決めた化粧品会社の営業。


私以外に一緒にオープンキャンパスに行った3人は受かって

それぞれ思い思いの慰めの言葉をかけてくれたけど

私を行きたかったなー!なんて笑いながら辛かった。


人をこんなに妬ましく思ったのは初めてだったかもしれない。

そして当然ながら特進科で就職だったのは私1人だった。


意気込んで編入して来ただけに本当に恥ずかしかった。


私の心は憎悪と嫌悪に支配されていた。

もうどうなったっていい。私は何にもなれない人間なのだから。


でも母はこの時私が進学を断念せざるを得なくなった事を

反対してくれていたらしい。でも母も働いてなかったし父は聞く耳を

持たなかったという。


そんな事ももうどうでもよかった。


颯太も言葉を失ってた。だからもう何も言わないで、そうお願いしたのだ。

彼は無事大学に合格し春から大学生になる事が決まっていた。


よかった。

それでいいんだ。



そしてそのまま卒業を迎え私は化粧品の営業に就職したが

同級生たちが楽しい学生生活を送っている最中

売れもしない大量の化粧品を持ち歩いて練り歩いている自分を

ふと鏡越しに見て幾度となく悲しくなった。


なんで、こんな事になっちゃったんだろう。

それだったら初めから目指したりなんてしなきゃよかった。



颯太もこの頃になると大学の友達と夜ビーチに行ってナンパしてたり

それぞれ置かれている環境が変わり私達の関係の歯車も狂い始めていった。



ある夜だ。

酒でべろべろに酔った颯太から電話がかかってきた。



『今からさぁ、知り合った女の子そっち連れて行っていい?』



『え?』



『なんか彩花に相談したい事があるって言うからさぁ』



『明日私仕事なんだけど…』



『ま!とりあえず行くから!』



相談ってなんだろう、まさか好きになっちゃったから颯太と

別れてほしいとかかな。そうしたらなんて言おう…。



それからしばらくして本当にその女の子と颯太が来た。


『初めましてぇ、こんな夜遅くにごめんなさいぃ!!』


拍子抜けするほど明るくほんわかした子だった。



『あ…どうぞ、あがってください。』


『ありがとう!』



その後話を聞いていると彼女の名前は千春で1個年上のレズビアンで高校の時から

付き合っている彼女がいるのだが上手くいってないんだと言う話だった。



最初は彼氏がナンパして連れてきた女というのもあって警戒していたし軽蔑していたが気付いたら意気投合していて連絡先も交換していた。


『ちぃ、今度彩花ちゃんを遊び誘っていい?』


『うん、もちろん。遊ぼ。』


『何曜日暇なの〜?』


『土日だったら。』



次の土曜日に遊ぶ約束をした。

千春はその約束を取り付けて帰って行った。


『な?!彩花と気が合うっしょ?!』


酔った颯太がそう言って私の肩に腕を通してきた。


『うん…』


『ちょっと俺寝るわ!朝起こして!朝から授業あるからさぁ』


そう言ってゴロンと横になった。



一緒にいるのに寂しい。

1人より2人でいる方が寂しい。何故?



いつの間にか付けるようになったブルガリの香水も

高校の時は坊主だった髪も金髪になって

颯太が遠くに行ってしまった様な感覚を感じた。



そっと背中に抱きついて眠りについた。



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沈む蓮 松 謝花 @matsusyaka0000

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