第15話

15


さらに一年が過ぎた。


ぼくは相変わらず両方の世界を行き来して、交渉する役目を担っていた。

基本は、あちらの世界の資源を安く仕入れて、こちらの世界の技術を高く売る、だ。


魔族の領地はほぼ掌握しており、スカラーは現地の統治者の地位に収まった。

エクセルライド王国はローウェル付近の土地を割譲せざるを得なくなり、その代わりに銃器を買い付けている。

その威力で他国を圧している。

そうなると、他国はこちらと友好関係を結ぶようになる。

エクセルライドとは表面上は友好的だが、その実、潜在的には敵対関係のままだ。

いずれ制圧する必要が出てくるだろう。


ぼくは魔族領に屋敷を構えた。

魔族領というのは正しくない。

スカラーが発案して「新規に名称を」ということになり、ニュージャパンという国名になった。

……なんか変な感じだ。

そして、ぼくはニュージャパンの有力者の1人ということになっている。

つまり国籍はニュージャパンだ。


屋敷には、アイナ、加美香、タリサ、如月が一緒に住んでいる。

恥ずかしながら、4人と結婚した。

……うはあ。

俗に言うハーレムというヤツだ。

異世界転生・転移ものではお約束だろう。


……というか、結婚しないと死ぬと皆に一斉に脅されたのだった。


まあ、それはいい。


「アルくん、今日は何食べたい?」

アイナが聞いてきた。

「もちろん、私だよね?」

如月が妙なシナを作っている。

『死ね』

「アホ」

タリサと加美香がジト目を向けている。

『皆、寿命に限界があるから、私と一緒にリッチ化して…』

「どんだけ生きる気だよ?」

「そうですよ、ご先祖様、1世紀以上生きてるとかババアを通り越して、クソババアですよ」

「肉だよね、肉!」

ギャーギャー。

いつも煩い。

だが、これはこれで幸せだ。

「あ、アルくん、逃げるな!」

「まてー」

「まてー」

『リッチ化ぁッ!』


うへえ、カンベン。



「アルフレッド殿」

ビクトールさんがやってきた。

「どうやら、魔王が出現したようですな」

「へえ…」

ぼくは懐かしい単語を聞き、ちょっと驚いた。

「じゃあ、魔王討伐に行かないとですね」

冗談めかして言うと、

「その手がありますな」

ビクトールさんは、ポンと手を打った。

「経験者がいて良かったですな」

「いや、あの、冗談のつもりだったんですが…」

「何をおっしゃいますやら」

ビクトールさんは、部屋の入り口の方を見やる。


そこには、


エドワード、トラビス、タリサがいた。

そして新たな仲間として、アイナ、加美香、如月もいた。


「さあ、いくぞ、アルフレッド」

「新たな冒険にな」

『久しぶりの冒険…』

「わーい、楽しい冒険」

「ふん、私がいないとアルくんはダメなんだから」

「ねえ、面白そうだよねー」


「……いくか」

ぼくは立ち上がった。


新たな冒険に。




完。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界勇者くん @OGANAO

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ