付章
ちょっとした後日談。
職員さんの前でひとしきり泣いた後、僕の頭は自分の固有魔法のことでいっぱいだった。この魔法で何ができるのか、本質はどこにあるのか。色々試してみたいと思っていたし、候補も無数に浮かんでいた。
たぶん、そんな子供を何人も見てきたのだろう。
「春人くん?三年前、私が最初に教えたこと、覚えてるよね?」
「最初に教えたこと?基本知識の確認と、生活魔法の実践?」
笑顔でゆっくりと首を振る職員さん。おかしいな、さっきまでの笑顔と雰囲気が違うような…
「それじゃないとすると、私的利用の、規則と、ばっそく…」
にこり。今までで一番怖い笑顔だった。小学校3年生のころ、セミを授業中に解き放った時の広岡先生の笑顔くらい威圧感があった。
「そう、未資格者による固有魔法の私的利用の禁止と破った際の罰則、覚えてるよね?春人くんがわざと破る悪い子だとは思わないけど、浮かれてたでしょ、今。高校生になったら思う存分使えるんだから、今は我慢!わかりましたか」
「ハイ…」
返す言葉もない。はっきり言って、忘れていた。帰ったら試す気満々だったのである。
「わかればよろしい。どうしても試したくなったら私に言いなさいね。監督者の監視の下なら、実習という形で使用は認められているから」
「はい、ありがとうございます」
破れば家族だけでなく、職員さんにも監督責任が問われるだろう。恩師の信頼を裏切ることはすまい。春はすぐそこだ。しばらくは思いついたものをメモに書き残すに留めておこう。
入学式に向かう僕のリュックには、2冊目に入ったアイデアノートと、制服が届いていの一番に見せに行った時、職員さんと二人並んで取った写真が収められているのであった。
青雲春人の青春(短編版) 燕鳥高度 @entyoucord
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