ネクロニカ関係で書いたやつ

花の話(ネクロニカ)

ひとつ、お話をしましょうか。

これは、終わった世界の片隅で咲いていた花達のお話。

花の名を冠した、少女達のお話です。


寿の象徴にも謳われる紅白、その花の名を冠した少女がいました。

少女は感情を表に出すのが苦手でした。常に眉を潜め、言葉は素っ気なく、兵隊を思わせるその見た目と合間って、姉妹達と馴染むことにも時間を要しました。通じあったのちは手にした鉄の筒から放たれる弾丸で少女はひたすら姉妹に奉仕しました。彼女達が笑ってくれるなら、自らを進んで犠牲にしたのです。


その花は穢れを知らない純白のその姿にだれよりも執着していました。




陶酔するほどに甘い香りのする薄桃、その花の名を冠した少女がいました。

幼い容姿と奔放な言動とは裏腹に、少女は姉妹達への悪意をひたすらその身に受けることを良しとしました。自分以外の誰かが傷つくくらいなら痛みも苦しみも全て自分で背負って笑顔で塗りつぶす。少女のそれは覚悟ともいえる代物でした。


その花は何にも染まらず自らを貫く純白のその姿にだれよりも憧れを抱いていました。



とある国家で儚く散る薄紅、その花の名を冠した少女がいました。

柔らかな物腰を心掛ける少女は、実は激情をもって敵を殲滅する核弾頭でした。姉妹達の鉾であることこそ自分のいきる意味。自らが突っ込むことで姉妹達の道が早く開けるならこれ以上の幸せはありませんでした。


その花は折れることを知らない純白のその姿にだれよりも恋をしていました。












純潔の象徴たる純白、その花の名を冠した少女がいました。

泣き虫で気弱で寂しがりで怖がりで、少しずるい少女は色を持たない白子でした。姉妹達に見捨てられるのを何よりも恐れていた少女は考えに考えて、そしてひらめきました。そうだ、彼女達の求める私になろう。姉妹達の理想の体現たる自らたれ、そう考えた少女は早速行動を起こしました。幼さの残る顔には化粧を施し、ほほに浮かぶよぶんなめは装飾に紛れ込ませ、武骨なアームバイスには手袋を履かせました。「優雅」さと「負けない心」を持った凛と強い「少女」を演じました。「冷静」な「助言」で姉妹達を助け、「看破」した敵の意表をついて「号令」をかけました。密やかに交わす「内緒話」と照れたように見せる「輝くような笑顔」は姉妹達に「癒し」を与えました。

少女はひたすら姉妹達の理想をなぞりました。憧れを抱かれ、執着され、恋心を向けられ、姉妹達が自らを必要としてることに少女は安心しました。





少女は考えないことにしました。

姉妹達の視線がどこを向いているかなど。

答えを得てしまえば、自らを保っていられない。その確信がありました。









そしてそんな、とてもとても愉快な出来事は快悦に飢えた観客にとって、まさに求むべき御馳走でしかありませんでした。








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反射や発作でかいたモノ集めただけ。 @bay193

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