第三話 しんぽ

 何のことかと思ったら変なジョークを言い出すので、そこまで深刻なことじゃないんだと安心した。

「いやいやちょっと待て、笑わせるな」

「私は本気だよ?」

表情も真面目で、食い気味にいってきたことに認めざるおえなかった。

「僕には無理無理、他の人探しな」

料理なんてやったこともないしカップ焼きそばを作る時でさえ水切りもまともにできなくて火傷するやつに頼むのはやめた方がいいと感じたからだ。

「だよね、やっぱり自分勝手だよね...」

振り返ると、動いた瞬間涙がこぼれそうな顔をしていた瑠奈を見て流石に放っておくことができなかった。

「あー、もう手伝うよ最近暇だったし」

その瞬間、右腕で溢れそうだった涙を拭いて、

「ほんとに!?ベリー感謝!」

勢いよく手を握られて、テンパりつつも優しく握り返した。

「もうすぐ授業始まるから先行くね!」

そう言って元気で去っていった。

 まぁ教室に戻ると案の定めんどくさく、名前も知らない陽人間がこちらにきて何があった?とニヤニヤしながら話しかけてきた。

馬鹿みたいにさっき起こったことを話したらこちらとしては変なネタにされることは分かりきっていたので、ここは無難に行くことを決意した。

「女子の間で罰ゲームがあったらしいそれであんなことを言ったんだって」

そうすると、さっきの陽人間が険しい顔をして

いつものことかつまんね、と言い出して怒りながら去っていった。

こちらからしたら怒られる意味がわからず、寝てるふりをして無視していた自分にとっては、久しぶりにむかついたが反論するには抵抗があるらしく言い出せずに終わった。

 放課後校門を出ようとするとそこには堂々と

待ち構えていた瑠奈がいた。

「はい、行くよ!」

強く腕を握られて、家とは逆方面の方向へ

どんどん進んでいった。

「行き先くらい教えろよ!」

「着いたらわかるよ!」

「そういう問題じゃないんだって!」

どんどん知らない景色が広がっていくことに、少し優越感を得つつ、疑問を抱いていた。

「何で俺に頼んだんだ?」

こちらを振り向いて笑顔でこう言った。

「君が友達だからだよ!」

あっちにとっては大したことじゃないかもしれないが、自分にとってはとても嬉しかった。

そうして、目的地についた。

「家だぞ?」

「そう!ここは瑠奈家!」

「ちょっと待て!親がいるしまずいだろ、急に入ったら...」

「大丈夫!うちはシングルマザーでお母さんは今出勤中だから上がって上がって!」

渋々入って瑠奈についていくと、料理本やメニューについての紙が沢山あった。

「全員が感動する料理を作りたくてさ」

「料理すごく好きなんだね」

「そう!でも披露する場がなくてさ...」

「なんでだ?瑠奈の性格なら簡単なことじゃないのか?」

「私ね、一年生の時に文化祭で私の料理を発表したくて必死に頼んだんだよね、そしたら友達から鬱陶しいとか気持ち悪いとか言われてさ、

それ以来友達できなくなっちゃったんだよね、

馬鹿みたいだよね!自業自得なのに...でも諦めきれなくてさ、頼んじゃったんだよね君に」

「凄い」

「え?」

諦めずに必死に訴え続けることができるかっこよさに思わず言葉を吐いてしまった。

「僕もさ、調子乗って変な自己紹介して友達作れなくなって居づらくなってさ、でも今もそうやってしっかり発言できるなんて凄い、僕にはできないよ」

「ありがとう、じゃあやろっか!」

「え?なにを?」

瑠奈が指を刺した先には大きい用紙にどでかく

7月2日お祭り!!と書かれていた。

切り替えの早さに破天荒の極まりだと感じたが、そこはスルーした。

「このお祭りでどの屋台よりも人気が出る料理を作ることがまず第一の目標!」

「え、、まぁ言ったからにはやるか」

「よし、じゃあいくよーえいえいおー!ほら一緒に!」

「えい、えいえおー!!」

思いもよらぬ進歩をした、5月の終わりだった。








 



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99%の彼女と1%の僕で100% 仮ちゅーばー @taketakeabcdefg

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