第三章裏話

 本作には原案となる『オー・ソレ・ミオ』以外にも、かねてよりストックしていたアイデアが採用されています。

 中には、武侠と近代ファンタジーの融合を試みて書き溜めていた群像劇用の設定やエピソードも多くあります。


 第三章に登場する孟三兄弟もそんなアイデアの一部で、名前がダジャレなのは道化役として作り出されたことの名残りです。




・孟永年 (モン・ヨンニェン)


 長兄・永年は【人物】にもあるように過激な身の上の人です。

 妹を連れて家を飛び出してから十年後、永年は自分たち兄妹にかけられた養育費を試算し耳を揃えて親元に送りつけています。

 これは「一端の烈士として落とし前だけはつけておけ」と諭した老師の言葉を受けての行動でした。




・孟永和 (モン・ヨンホァ)


 決定稿では流星錘の使い手となった彼女。直前の稿までは縄鏢を武器にしていましたが、点穴の技が活かしづらいのと、流血描写が増えるのとで没になりました。

 澪よりも一段上の実力者なので、性格でデバフをかけてバランスを取りました。無慈悲を気取っていますが、澪にとどめを刺すのは躊躇したと思います。

 最後に見せた大技には一応〈抜山勁〉という名前があります。メインで使っている辰摩掌とは別の流派の絶招です。




・孟永定 (モン・ヨンティン)


 コミックリリーフ役を一身に請け負う末弟。本文でははっきり触れられていませんが、上の二人とは血がつながっていません。

 実は彼にはもう一つ大きな秘密があるのですが、明かされる機会は当分なさそうです(※後述)。


 ところで永定といえば、


「いぃ寄り切りィいい、ぅおぉいちばぁああァ――――ん!!」

「ほげぇえええェ――――ッッ!!」


 崖下へ道連れにされる際の献慈の台詞。「寄り切りィ~」だけでは物足りない気がしたので、それらしい文句をもう一言付け加えることに。


「千秋楽ゥ~」いや、まだ初戦ですし。

「大金星ィ~」そんな大した相手じゃないので (永定くん……)。

「大一番~ン」献慈にとってはまさに勝負どころなのでこれに決定。


 些細なシーンに些細な葛藤あり、という小話でした。




 ついでに余談をもう一つ。

 兄弟の口調があんな感じなのは、関西弁の抑揚 (とくに出だしの高低差)が中国語の声調と似ているな~という何気ない思いつきが元です。わざとらしく古風な喋りにしたり、京都弁のニュアンスを加えたりと、三人それぞれの性格を演出しています。




※追記 (2023/05/08)

 永定の秘密は、本作の続編『くにつほし九花烈伝』で明かされています。


◆くにつほし九花烈伝 ~鋼鉄レトロモダン活劇2~

https://kakuyomu.jp/works/16817330653807506663


★第12話「奇妙な男子会?」

https://kakuyomu.jp/works/16817330653807506663/episodes/16817330656777168741


★【人物】プロフィール:新月組+1

https://kakuyomu.jp/works/16817330653807506663/episodes/16817330656986833334

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