第二章裏話

 今回は人物の裏設定というよりも、制作上の裏話が中心になります。


 『マレビト来たりてヘヴィメタる!』に『オー・ソレ・ミオ』(以下『オーソレ』)とという原案があることは本稿の前書きで触れたとおりです。


 異世界に転移して来た献慈が「ミオ」と出会い、その後精霊使いカミーユと吟遊詩人の青年が旅の道連れとして加わる流れは、両作ともに共通しています。作品の土台として意識的に踏襲した要素の一つです。


 以下に述べる二人 (の前身)は、当時の作者の未熟さゆえ持て余してしまった、不遇のキャラクターでありました。




・カミーユ・シャルパンティエ


 『オーソレ』での名前はカミーユ・シュランベルジェ。今作とは違った清楚系で、いわゆる当て馬ヒロインでした。

 しかしこのプロトタイプ・カミーユ、あろうことか魅凰 (澪の前身)を意識する前の献慈と先にくっついてしまうのです。しかもそのショックで魅凰がパーティを離脱したまま『オーソレ』自体が未完となってしまいます。

 開き直った作者は『マレ来た』でのカミーユを初めから憎まれ役として設定します。ただし、献慈と澪の恋路を決して邪魔しないと取り決めたうえで、です。

 その結果がどうなったのかは――ぜひ本編の続きをご覧ください。




・ライナー・フォンターネ


 『オーソレ』での名前はフォンテイン・ラム。献慈やカミーユとは同年代でした。今作では年齢を引き上げ、パーティの最年長として一歩引いたポジションに就いてもらっています。

 前身であるフォンテインは、カミーユの元彼でありながらビジネスパートナーという立ち位置でした。しかし親友となった献慈は上述のように元カノと結ばれるわけで、こちらもなかなか因果な役どころでありました。




 自分の力量不足はもちろんですが、当時海外ドラマをよく観ていた影響もあるのでしょう、やたら込み入った恋愛や超展開ばかり描きがちだったように思います。

 その反省も込めて『マレ来た』は自分なりの王道ファンタジー (+ラブコメ)を目指し、可能な限りベタな展開・シチュエーションを盛り込む指針を立てたのでした。


 旅の序盤にゴブリンと戦うのも王道ファンタジーのお約束かもしれません。




・千代田両児 (ちよだ・りょうじ)


 おあつらえ向きに作られた、パーティ外のトラブルメーカー役。本作構想の最初期からいるキャラクターの一人です。

 実は腕っぷしも悪くはないのですが、あくまで一般人なので、相手取れるのはせいぜいゴブリン二体程度です。

 彼自身は半獣人、三人の商売仲間たちは羊人・犬人・兎人で、それぞれ名前や容姿などの設定もあったりします……が割愛。




 獣人種にはいずれ本編でも軽く触れることになるでしょう。

 その前に、第二章で登場した五大種族についての裏話を。


 リコルヌ族と魔人族は『オーソレ』にもあったオリジナル種族「有角族」「魔族」を原型としました。

 鬼人族は和風の世界観を活かすため、今作より創出。鬼・河童・天狗は定番ですよね。

 エルフ族は当初出す予定はなかったのですが、ヘヴィメタルがテーマなのに「エルフ」を無視する手はないだろうと、登場させることに決めました。メタラー諸氏にはおわかりいただけると思います。


 さて、ここまで言及されていない主要キャラが一人だけいます。




・シルフィード


 とくにモデルとなったキャラクターはいません。そして――忘れているだけかもしれませんが――これといった誕生秘話もありません。

 いつの間にかいた、というのも不思議ですし非常に珍しいのですが、まさにそんなキャラクターです。

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