本編 #3

 あと五分。あと五分だ。


「お互いに言いたいこと、最後に言っていこうぜ」


「いいよ」


「……まずユメから」


「逃げたでしょいま」


「気のせいだ」


「んー。高校デビューして髪型変えたのに未だに何も言ってくれないところ」


「おまっ、はあ? それが言いたいこと?」


「うん」


「……かわいいと思うよ」


「ふぅん?」


「お前な……。まあでも、ほんとに。女の子っぽくなりすぎて、むしろちょっと接しにくくなってた。かわいいわお前」


「んふふ」


「なんだよくっそー……」



 三分。



「……これも、今までずっと言えてなかったことだけど」


「ん?」


「いつも俺の相手をしてくれて、ありがとう。楽しかったわ」


「うん。こちらこそ」


「これで本当は世界が終わることなんてなくて、もしも続いたら、まじで笑いもんだけどな」


「どうなんだろうね」


「まあもしそうなったら、二人で笑って。もし続いたらさ」


「うん」


「恋人にならね?」


「……うん」


「そっか」


「泣いちゃいそう」


「泣いてもいいんじゃね?」


「うん、うん」


「俺もちょっと、苦しいわ。つれえし、後悔しかしてねえ」


「ごめんなさい」


「もしまた機会があったら、今度は時間がなくなる前に。ちゃんとお前に、告白しようと思うわ」


「うん」


「ごめんな」


「ううん」


 残り、一分しか俺たちにはなかった。

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