本編 #1
突然のことだった。
まず初めに、二時間後に世界が終わる、ということだけを理解した。
次に、幼馴染みであるユメも俺と同じ確信を持っていたことを知った。
二時間。たったの二時間だ。
世界が二時間後に終わると知って、できることはいくつあるのだろう。
直感的に、限りなく少ないと思ったし、高校二年生という身分である俺たちには為せることもまるでない。
第一、信じてすらもらえない。
そんななかで、俺たちはまず教室の窓から〝世界が終わるという原因〟となるものがないかを見渡した。授業中に突如として生まれた直感から、授業と授業の合間の時間の話だった。
もし外的要因で世界が終わりを迎えるとして、二時間。もしかしたらすでに外には、それをもたらしうる非日常があるかもしれない。
もしそんな存在があれば、それを証拠にこの確信を突き出すことで、一定の信憑性を得られるのではないかと考えたからだった。
「……宇宙人とか、隕石とか」
「地震、噴火、天変地異?」
平和な校庭と青空だった。今から二時間後に終わりを迎える空とは思えない色だった。
野生の動物、例えば鳥などが変に騒がしいわけでもなく、空におかしなものも見当たらず、異常気象の今日でなければ、これからもずっと続いていきそうな日常の様。
この段階で、俺たちの持っているこの確信を、誰かと共有することは難しいと知った。
信じてもらうことは限りなく不可能に近いと思った。
次の時間。本日最後の授業は、国語だった。
四十分ほど無駄に縛られたあと、再び授業の合間に集合した俺たちは、変人に見られても仕方ないと思いながら、二人で担任の教師に事実を持ちかけることにした。
「これから一時間後、世界が滅ぶかもしれないんです」
「信じてください先生!」
「は?」
誠実な訴えかけは、馬鹿げていると簡単に一蹴された。
時間は刻一刻と立ち、世界は終わりへと歩んでいる。
このままじゃダメだと思った。
少しずつイライラしている自分を自覚した。
「どうしようマコト……誰も信じてくれない……」
「せめて、せめて仲良い奴らには真実を伝えたい」
残り一時間を切り、些細なことでもいいからできること。まさか世界の終わりを阻止しようなんて思えないが、このまま本当に終わるならば、数少ない親友には真実を伝え、悔いのないと言ったら思い残ししかないようなまだ高校生の俺たちだけど――まあ、無駄にしないために。
貼り付けた「#拡散希望」の文言と共に鳴らした警鐘の140文字は、誰からも相手にされず沈黙していた。
「いやだから、嘘じゃないって言ってんだろ!」
「なんで逆ギレしてんの?」
誠心誠意にも友達にした警告も、冗談のように茶化されて、相手にもされていないんだと知った。
そして放課後。
もう三十分も残されていない。
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