第6話信長オンライン

実はこれは信長が用意してきた第2の仕込みだった。これまた情報を仕入れてきた信長が炎を属性の耐性が必要だと知り、この為に炎耐性+5の最強の装備「南蛮甲冑 (マント付き)」を徹夜で手に入れたいた。




 相手の攻撃を封じる事ができた信長。しかし、攻撃の手段がなければじり貧である。だが、覇道を行くこの男に死角はなかった。鞘から刀を抜く。




「水刀 不動行光ふどうゆきみつ」




 それは水遁最強の刀である。これも例にもれず増税によって手に入れた刀だ。




「お前たちよ。これから儂は舞踊に入る。守りは任せたぞ」




 その声は精神的にボロボロになったパーティを立ち直らせた。




「ハイ!」


「まかせろ!」


「承知!」




 この世界では、高度な刀の技を発動するには舞踊を踊りきる必要がある。高度な技になればなるほど舞踊の時間が延びるのだ。その間は無防備になってしまう。




「三千世界の~烏を殺し~」


「お主と朝寝が~してみたい~」




 舞踊を踊るノブ、そのノブに時鳥が襲い掛かる。




「キンッ!」と間一髪でパリィをするあけっち。タイミングを掴んだのか反撃までは、できないまでも守ることはできた。




「ノブ殿には触らせないでござる」






 舞踊を踊る信長を必死にサポートするパーティ。それを信頼して、舞踊に集中するノブ。お互いがお互いを信頼し合う、理想的なパーティだった。




 響く琴の音色、楯の金属音、空を斬る刀の音。それはまるで、一つの舞台のようだった。




「水剣 秋時雨」




 舞踊が完了したノブはそう唱える。その瞬間、天から雨のように水弾が降り注ぐ。




 さしもの、時鳥も無数に降る雨には無力だった。初めは、避けていたが一つの水弾がカスリ、


体勢を崩し水弾の直撃を受けて、地面に叩き落とされた。




 水弾が一通りあたりに降り注ぎ、燃え移った火も全て消え去った頃、雨はやみ太陽が顔を出した。




「雨が降り、全てを流した後に日はまた昇る」




「それが日いづる国、この国そのものよ」




 意味が分かるような、分からないような言葉を発するノブ。なにはともあれ時鳥は討伐されたのだ。




 ノブの元にあつまるパーティ。このゲーム最大の強敵を倒し喜びを分かち合っていた。




「やったでござるな」




「これでまたノブの名があがっちまうなあ」




 ノブを讃える二人、これで一件落着かと思ったが……




「きゃあああああああああああああ」と蘭子の叫び声。




「どうしたでござるか?」




 時鳥の死骸の前で座り込み泣きじゃくる蘭子。




「時鳥の涙が……涙が……ドロップしなかったぁ!」




わーんと泣く蘭子。




「ドロップ率何パーセントよそれ」




「0.1%」




「落ちるわけねえだろ!」




二人からそう突っ込みを受ける蘭子。




「だってぇ……」




「落ちなかったんもんはしょうがねえ、諦めるしかねえわな」




「残念ですがそうするしかないでござるな」




「うええ……やだ、諦めたくないぃ」




「わがままだなあ」




 蘭子のなく姿と会話をノブは無言で見ていた。




「ノブ様~」


「ノブ殿、どうするでござるか?流石にまた時鳥を討伐するのはノブ殿の負担になるし……」




 話の途中でくるっと背を向ける。




「帰るぞ」と一言ノブは行った。




「ふぐう…」




「もう泣くなよ、別のアイテム探せばいいだろう」




「泣かぬなら……」




 背を向けたまま、ノブがそうつぶやく。




「え?」




「泣かぬなら、泣くまで狩ろう、ホトトギス」




「ノ、ノブ殿つまりそれは!」




「何をしておる、早く帰って、もう一度討伐任務を受注するぞ」




「ノブ様ーーーーー!」


「ノブ、お前って奴は…」


「ノブ殿ーーーー!」








 ここはオンラインゲームが流行った世界。それは皆幸せに暮らしていたとさ。






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戦国時代にインターネットが普及したら織田信長がネトゲ廃人になって年貢が半端ない。 長門 一 @sakotsuboy

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