宝島
よし、まだ見ぬ宝物を掘り起こすのだ。本屋と書いて宝島と読むその場所へ到着したのは夜の八時半。残された時間はわずかだけれど、それも良い刺激になって私の探査アンテナの感度を上げる。そんな気がした。
「いらっしゃいませ」
店員さんの物腰柔らかな挨拶も好きだ。軽く会釈して奥へと進む。
私にとってそこは未知なる知識で溢れ、知らない世界を見せてくれる場所。仕事に追われて何かを失くしそうになった時は、こうして宝島を彷徨いたくなる。過去の探検では美術史にハマったり、時短メニュー料理本の実用性に感動したこともある。旅行記を手に取り空想に耽ることも。新しい出会いを求めて本屋さんをまわる時間は、その後の日常の感触をまろやかにしてくれた。
「袋にお入れしますか?」
「いえ、そのままで」
そして店を後にした。
今回の決め手は表紙。ふと立ち止まり見つめていると、行きより夜風が心地よく感じられ満月も「よかったね」と微笑んでいるよう。月影に照らされた新たな宝物、その名を「月刊もふもふ」。ああ、これだからやめられない。
まよなか書房(短編集) 木之下ゆうり @sleeptight_u_u
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