第3話 決心する
西海
(なんとか間に合った・・)
「おはようございます!!」
社長
「おはよう!」
小宮山
「西海さんギリギリっすねーw」
この会社は遅刻1分につき
100円罰金を取られる。
つまり6分で俺の実質時給はなくなる。
優香
「西海くんおはよう!」
西海
「あ、おはよう!」
(あー今日はレッスンの日か)
芸能事務所の収入源は
タレントの売上とスクール生の
レッスン費だ。
芸能界への夢を見て
オーディションに応募し、
合格したものはレッスン費50万を支払い
事務所のレッスン生になる。
応募したもの全てが
合格するオーディションだ。
優香もその一人である。
もちろんそんなことは
口が裂けても言えない。
小宮山
「西海さん、先週の売上とキャストの給料計算お願いします。」
西海
「了解。」
俺は電車の中で
思いついたことを考えていた。
出会い系(2014年頃はマッチングアプリという言葉は定着していなかった)
で客を集める。女が店に誘導して酒を飲ませ男に奢らせる。
会計はいくらがいいだろうか。
いくらでも請求はできるが
高ければ客と揉める可能性が上がり
警察に駆け込まれることが増えるだろう。
法律面ではどうか。調べてみると
ぼったくりはメニューに金額が掲示されていれば問題ないらしい。
該当するのはおそらく風営法違反だ。
2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金。
西海
(2年以下か・・・)
初犯なら罰金で済むと思うが、確証はない。
詐欺や窃盗などに比べれば刑は軽いが
風営法違反で実名報道されることもある。
確実に儲かる自信があったが西海は迷った。
視線が気になり顔を上げると
社長と目があう。
何を考えているのか読まれている
気がして恐ろしくなった。
西海
「・・・自分開店作業いってきます!」
社長
「了解!」
麻布十番にある事務所から
歩いて六本木に向かう。
高級車が走り、高そうなレストランで楽しそうに食事をするカップル
芸能人の家と噂で聞いた豪邸。
西海には手に入らないものが
街には溢れていた。
そのとき足元に小さな赤い点が自分の前を動いていることに気がつく。
西海
「・・・レーザー?」
どこから来ているか辺りを見回すと
高級マンションのバルコニーからこちらにレーザーを向けている男が見えた。
男女でパーティをしているようだ。
『この虫けらが』
そう言われた気持ちだった。
西海
「このクソが!!俺も絶対に金を稼いでやる」
この時さっきまで考えていた
ぼったくりバーを
実行に移すことを西海は決めた。
西海は今まで警察のお世話に
なったことがない。
刑務所に入ることは嫌だが
今の生活はそれと同じくらい
みじめで辛くて嫌だった。
西海
「もしもし、ユウタ?」
ユウタ
「おー!どうしたの?」
西海
「次の日曜空いてる?飲みに行こう」
ユウタ
「いいね!行こう!」
ユウタは中学からの付き合いで
西海が心をひらける数少ない友人だ。
ユウタも今仕事を辞めたいらしい。
一緒に仕事をしてくれるか
相談することにした。
~2014年2月の日曜~
西海
「おーい遅えよw」
ユウタ
「悪い悪い!遅くなった!」
西海
「渋谷くるの久しぶりだわー」
「どこいく?」
ユウタ
「0軒目酒場でよくない?」
「金ないし」
西海
「そうだな!」
2人とも金がないので
激安居酒屋に行くことにした。
店内は若者やおっさんで溢れかえっていた。
ここには金のネックレスをしている人も
キラキラのダイヤが入った時計を
している人もいない。
西海
(なんか落ち着くな)
ユウタ
「とりあえず生でいいっしょ!』
西海
「おう!てか失恋パテシエ見てる?」
ユウタ
「あー見てる!!
石里原美めっちゃ可愛いよね』
西海
「あれはマジでやばい!可愛すぎる!」
ユウタはスケボーが好きで
ストリート系のファッション。
俺と同じく不良でも真面目でもない。
俺たちは時々こうして会って飲んでいた。
少ない休日の開放感とこれから起こることの
ドキドキで酒が進んだ。
ユウタ
「てかさっきから何でスマホいじってるの?』
西海
「あーごめん!」
「面白いもの見せてあげるから
ハチ公前行こう!」
ユウタ
「なんだよそれw』
「店変えるついでに行ってみるかー』
酔っ払った足でハチ公前が
見える駅ビルに向かう。
西海
「ここなら見えそうだな」
ユウタ
『え?マジで何?w』
西海
(黒の帽子に茶色のダウンで下がデニム・・・)
「あ!あいつだ!!」
ユウタ
『??』
西海
「ほらあそこに居る茶色のダウンのやつ!」
ユウタ
『それがどうしたの?』
西海
「俺が出会い系で女のフリして呼び出した!」
【実話】マッチングアプリぼったくりバーの男の末路 ピーナッツ @piinut
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