UNLEASHED②

 2章でも涙目だったのに6章とかマジ泣きたい。

 ニックの一人称は語彙と時代と放送禁止用語不適切な言葉の制限がほとんどないので縦横無尽に書ける分、注釈で死ぬ。



 6-1

「The Oath of Tyndareus」

 →“テュンダレオースの誓い”。

 求婚者の多かったヘレンは誰と結婚しても、選ばれなかった者が彼女を攫うおそれがあったため、彼女の父スパルタ王テュンダレオースが求婚者全員に「誰が選ばれようが、ヘレンが誘拐されたら彼女を取り返すために軍事援助をする」と誓いを立てさせた。



 6-4

「ジェヴォーダンでは残していただろう」

 →1764〜67年、南フランスのジェヴォーダンで、狼のような生き物が百人以上の命を奪ったとされる“ジェヴォーダンの獣”事件。未解決だが、オカルト的な一説では人狼の仕業ではないかと言われていることから。


「十三人の呪われた女のサークル」

 →魔女のカヴンの人数が13人とされることから。12人+悪魔のこともある。



 6-5

「『レビ記』第二十章十三節」「あるいは第二十章十五節」

 →「女と寝るように男と寝る者は、ふたりとも憎むべき事をしたので、必ず殺されなければならない。」、

「男がもし、獣と寝るならば彼は必ず殺されなければならない。あなたがたはまた、その獣を殺さなければならない。」

 …これがスラっと出てくるって、結構エグいな。


「悪魔でさえ聖書を引用する――身勝手な目的にね」

 →シェイクスピア『ヴェニスの商人』より。


「まぬけなブラウニーみたいな答え」

 →ブラウニーはイングランドやスコットランドの妖精。

 住人が寝ている間に家事をしてくれるなど人間を助けてくれることが多いが、たまによこしまな意図を持って近づいてくることがある。その時に名前を尋ねられた人間は用心して「私は、私自身だ」と答える。その後、人間に手痛いしっぺ返しをくらったブラウニーは復讐しようと仲間に言いつけに行くが、「誰にやられた」と聞かれても「“私自身”だ」としか言えないため、「自業自得だ」とされて終わる妖精物語が多くある。


「地獄中の悪魔を動員してでも復讐をしたがっている」

 →シェイクスピア『ヘンリー五世』の「地獄じゅうの悪魔を動員してでも、この仕返しをしてやるぞ」より。


「心を袖につけている」

 →wear one’s heart on one’s sleeve

 シェイクスピア『オセロー』より。“心情をあらわにする”の意。もともとは中世の馬上槍試合トーナメントの際、騎士が自分が賛美する貴婦人の袖(当時の袖は取り外しができた)を槍の穂先に結びつけたことから。


「誰も思考ので罰を受けることはない」

 →ローマ法起源の格言。心の中で姦淫を犯しただけでも思考のかどで罰せられるキリスト教との相違。


「同じ意図をもってつながった二匹の悪魔」

 →これもシェイクスピアからの引用なのですが、細かい出典がどうしても見つからず…💧 ご存知の方は是非ご一報ください(他力本願)。


熱狂的な説教師サヴォナローラ

 →イタリアのドミニコ会修道士ジローラモ•サヴォナローラ(1452〜98)。峻烈な説教で、メディチ家支配下の腐敗したフィレンツェ共和国の改革を敢行したが、教皇を非難したために破門され火炙りにされた。ニックの同時代人ですな。



 6-6

「七人兄弟とはまた呪われた数」

 →七番目に生まれた子は吸血鬼になるというルーマニアの伝承より。


「犬の殺しかたは吊るすだけではない」

 →There are more ways of killing a dog.

 実際にこういう諺がある。ひとつの目的を達成するためにも様々な方法があることのたとえ。



 6-8

「ろくでなしのセクストゥス」

 →貞淑な人妻ルクレティア(ルークリース)をローマ王の王子セクストゥス•タルクィニウスが強姦したことから、暴君タルクィニウス父子に対する民衆のクーデターが勃発し、共和制ローマが誕生した。

 〈神慈悲〉ⅢのPrologue 1-3でニックが言っていたこととⅣのPrologueの引用がここでつながるんですよ、わーい←自己満足



 7-3

「恋愛と戦争においてはあらゆる手段が許される」

 →イギリスの劇作家ジョン•フレッチャーの言葉。



 7-4

「バナナ・スプリット」

 →血管拡張薬で、催淫薬などとして乱用されることもある亜硝酸アミルのスラング。吸引する時の匂いがバナナに似ていることから。



 8-2

「主は獅子ライオンの穴からもダニエルをお守りくださった」

 →旧約聖書『ダニエル書』より。虜囚の身だったが王に重用されたダニエルが、他の高官たちの嫉妬により、法を破ったとして獅子の棲む穴に放り込まれたが、神に守られて無傷だったというエピソードから。このダニエルはあのダニエルじゃないのよ…(笑)。

 あと、この直前のクリスのお祈り、何と言って祈ったのか、何で「右手」をとったのか…は、〈神慈悲〉Iの注釈と掛けているので気になる方はもう一度(笑)。



 8-5

「侮辱の言葉かと思ってひやっとした」

 →Kiss my ass!、直訳で「俺のケツにキスしろ」、ふざけるな、失せろetc.といったようなかなりきつい罵倒語と勘違いしている。ちなみに犬や狼は互いの感情を読み取るために尻のにおいを嗅ぎ合う。



 9-2

「毒があるからね」

 →ヨーロッパヤドリギにもアメリカヤドリギにも毒があるが、アメリカの方が毒性が強い。ヨーロッパヤドリギは鎮静効果のあるハーブティーにも使われる。


「だって、ヤドリギの下にいるだろ」

 →クリスマスの時期には、ヤドリギの下にいるにキスをしてもいいという風習がある。


「聖書的な意味で誰かと知り合いになる」

 →聖書にはよく「~を知った」という表現が出てくるが、「~とセックスをした」と同意義だと思ってよい。



 10-1

臆病者ビビリみたいに聞こえる。」

 →イギリスの俳優•劇作家のNoel Coward(1899〜1973)のことを言っている。cowardの綴りが「臆病者」と同一なため。

 Iからずっと、ディーンは自分が生まれる前のホラー映画のことを引き合いに出したりしているので、こりゃお父さんが映画好きで家にはDVDのコレクションがあったりしたんだな。

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