わが始めにわが終りあり

 ここでひとかたまりで出てくる引用は、全て旧約聖書『箴言』です。


「わが始めにわが終りあり」

 →T.S.エリオット『四つの四重奏』「リトル・ギディング」からと、

『ヨハネの黙示録』第21章6節「わたしはアルファでありΩオメガである。初めであり終りである。」のもじり。

 もともとαアルファβベータΩオメガというのは狼の生態研究で、各個体の群れの順位ポジションを指すのに使われていた記号なのですが、今はBLのオメガバース(気になる方は検索して下さい…)の方が有名かも…ですよね…。ちなみに私はオメガバース書きではないので、ソッチ方面が好みではない方はご安心(?)ください。



 1-2

「停止を求められた車の助手席から飛び降りて逃げた」

 →停止を求められた車のドライバーに逮捕状が出ていたりなど何らかの後ろめたい事情がある場合、容疑者が“ウサギ”と呼ばれるおとりを放つことがある。ウサギは同乗者で、逮捕状は出ていない未成年であることが多く、警官がウサギを追っている間に当人は逃げおおせるという算段。

 Ⅱで出した通りラッセルさんちの家業は車輛窃盗(と盗難車の販売)なので、もちろんこのときの車は盗んだもので運転手は兄。「家の仕事の手伝い」の中にこれが含まれている。

 クリスはこんな犯罪手段までは知らないので、単に「何かの犯罪に巻き込まれたのかも」くらいは思ったかもしれないが。



 1-4

「カップケーキ」

 →この件で、アメリカではトッピング用アラザンが非・食用だと初めて知りました。売ってはいるけど食べちゃだめ。理由は銀が食品添加物として認められていないから…って、ディーンが食ったらマジで死ぬわ! 危なく知らずにキャラ殺すとこだった…。

 どうでもいいんですけど、結構犬って「それ食ったらお前死ぬぞ」っていうもの(チョコレートとかタマネギとか)を気にせず口にするんですよね。動物としてどうかと思う。

 ディーンは一応(?)人間だから、銀色のものを見たら「これ食ったらヤバいかな?」って考えるとは思うんですが。でもお菓子の上に載ってたら何も考えずにかぶりつくかな…。

 最初トッピングのひとつとしてアラザンを振っていて、公開直前になってひょんなことから知ったんですが…オカルト書いてるとこういうこと普通に起こるからちょっと怖い。「求めよ、さらば与えられん」を地でいくというか。



1-5

「一匹の迷子の羊を探しに行っているあいだ」

 →『マタイによる福音書』第18章12節

「ある人に百匹の羊があり、その中の一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。」から。

 サリヴァン校長はカトリックではない(プロテスタント)という設定ですが、たぶん子供の頃は日曜礼拝とかに真面目に通っていたんでしょう。



 1-6

「彼の番人でいるわけでも」

 →旧約聖書『創世記』第4章9節

「主はカインに言われた、「弟アベルはどこにいますか」。カインは答えた、「知りません、わたしが弟の番人でしょうか」」から。カインは人類最初の殺人者。

 「他人のことまで責任は持てない」の意。



 1-7

「自分がしてほしいように他人ひとにもしてあげなさい」

 →いわゆる黄金律。例の「山上の垂訓」の一節。

 『マタイによる福音書』第7章12節

「何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。」

 学校で説教してんじゃん、と思いますが、もう欧米の表現て、石を投げたら聖書かシェイクスピアに当たるんですよ…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)


口汚くののしったシャワー・オブ…

 →shower of shit. 文字どおり“クソのシャワー”。

 クリスはSワードまでは言ってない。



 1-8

 何だこの章、補習は終わったはずなのに、まだ授業か。


「『あとは静寂』」

 →The rest is silence.

 言っている通りシェイクスピアの『ハムレット』から。

 「何かが終わって静かになった」というような意味合い。「もうお前に言うことはない」みたいな感じでしょうか。


首の皮一枚でつながった歯の皮のみで逃れた

 →旧約聖書『ヨブ記』第19章20節

「わたしの骨は皮と肉につき、わたしはわずかに歯の皮をもってのがれた。」

 この頃からガンガンにこういうたとえを聞かされているんだとしたら、ディーンの英語の成績もっと上がってもいいと思うんですけど…。



 2-3

「あなたが空腹のときに食べさせ…」

 →『マタイによる福音書』第25章35-36、40節

「そのとき、王は右にいる人々に言うであろう、『…あなたがたは、わたしが空腹のときに食べさせ、かわいていたときに飲ませ、…獄にいたときに尋ねてくれたからである。』」

「すると、王は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく、わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。」のもじり。



2-4

「コリアンダー」

 →パクチーのこと。

 〈神慈悲〉ⅢのLa Llorona篇で「コリアンダーをぎゅうぎゅうに詰め込まれたみたいな感じ」といっているのがそれ。

 セロリが嫌いだったりパクチーが苦手だったり…においの強い香味野菜がキライなんだな。ブロッコリーは食べる。


「もとはロザリオの先につけられていた」

 →…言おうかどうしようかずっと迷っていたのですが、これだけは言わせてください。

 たとえ作中で私のキリスト教理解にどれほど誤りがあったとしても、これだけは胸を張って言えます。

 ロザリオは首からかけるものではありません(断言)。←ここ太字にしたい

 そもそもそういう発想がない。あれは仏教でいう「数珠」ですから…。それにあれ実際にかけたらすごくジャマだと思うんですけど…素材によっては刺さりそう。

 この話を読んで「ここまで言われてるロザリオって何だ?」と思われた方は、普通に「ロザリオ」で検索してみると色々素敵なデザインのロザリオ(売ってる)を見ることができますよ〜。こりゃあ首にかけたくなるのもわかるな、みたいな(笑)。

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