La Maledetta①

 この話(とそれ以降)、なにしろ聖職者2人とあって、かなり宗教色濃いめです。

 …おっかしいなあ、私、伝道するつもりなんて更々ないんですけど…そのつもりで書いたりとかもしてないんですけど(大体、神学これっぽっちも理解してないし)…。

 この話が呪われたシリーズになりそうってなった時に、戒めのために、右手に聖書、左手にリチャード・ドーキンスの『神は妄想である』(無神論者のバイブル)を置いて始めたのに…。どうしてこうなった。

 もはや聖典が日常になってしまった感があるせいで(混雑したエレベーターに乗るたびに「後に来た者が先になる」ってこういうことか?と思ってる←違う くらい)おそらく気づいていない注釈漏れがあると思います。ですので、「あ、これも入れとこう」となったら増える可能性があります。

 


 1-1

「悪魔の殉教者」

 →“飛んで火に入る夏の虫”。カッコ悪いのでここだけ日本語にルビふるのやめました。


にっちもさっちもいかなくなったスキュラとカリュブディスのあいだにはさまれたら、」

 → “前門の虎後門の狼”。スキュラもカリュブディスも古代ギリシャの詩人ホメロス『オデュッセイア』に出てくる海の怪物。


「少なくとも飲酒可能な年齢」

 →(州によって異なるが)21歳以上だよね、と言っている。



 1-2

「ポルフィリン症患者かなにか」

 →「ポルフィリン症を発症すると、光線過敏症のために夜間の生活行動を好むようになり、特に先天性造血性ポルフィリン症の患者の場合は顔が青白くなり歯茎が痩せ細って歯が牙のように見えることがある。このような症状ならびに患者の生活習慣が吸血鬼伝説のもとになった可能性が推測されている。」

 〈神の慈悲なくば〉Ⅰでニックが警察に対し「持病があると言い張って」いた「持病」がこれ。


「フォースタス博士」

 →シェイクスピアと同時代人クリストファー・マーロウの『フォースタス博士』。同じモチーフのゲーテの『ファウスト』と異なり、フォースタス博士は地獄に堕ちる。



 1-3

「ティーポットの中でうたた寝するヤマネ」

 →『不思議の国のアリス』より、ネムリネズミのこと。ただ、原作ではヤマネはお茶会のテーブルについたまま居眠りしていて、そのあとティーポットに「押し込まれて」いるので、ニックの勘違いか、あるいはディズニー映画でも観たのかもしれない。


「聖アントニウスが激怒した」

 →荒野で独り修行生活を送る聖アントニウスを、悪魔が蠱惑的な女の姿で誘惑した(ら、聖アントニウスが怒って女を追っ払った)というエピソードから。そりゃ欲求不満による幻視じゃないの、ということを言っている。


「ウォーレン・バフェットより気の長いほう」

 →言わずと知れた“投資の神様”。長期投資をする人で、短期的売買はしない。



 2-1

「Ein Jurist ein bösen Christ.」

 →“法律家は悪いキリスト者”。ドイツ語の格言。


「聖ステファン教会の」

 →聖ステファン(ステファノス)はキリスト教最初の殉教者。この人も助祭。


「幅広の肩はまさにアトラスの」

 →アトラスはギリシャ神話で天空を支える巨神。



 2-2

「ジェレマイア・ブレナン」

 →旧約聖書『エレミヤ書』の預言者、「声のでかいエレミヤ」から(笑)。Jeremiahは日本語では「ジェレミア」と表記されることが多いようですが、米語読みで「ジェレマイア」。

 ちょうどこれを書き始めた頃に、日曜の朝8時台から聖書をネタにした〈スーパーブック〉というアニメをやっていたのですが、流し見してたらエレミヤが出てきて、かなりファナティックだったので大爆笑してしまいました。やっぱりこの名前にして正解、と(笑)。

 Brennanの意味は「罪人の手を焼く仕事についていた人」。やりそう。



 2-3

「旅人に身をやつした天使かも」

 →旧約聖書のソドムとゴモラのエピソードで、ソドムにいるロトを“旅人に身をやつした天使”が訪れるところから。そのあと両都市は神の降らせた「硫黄と火」で滅ぼされた。


「求道者」

 →キリスト教における「求道者」は、「洗礼を受ける前の人」「聖書に基づいて祈りを捧げる人」といった意味。ディーンはどちらでもない。



 3-1

「あいにくあれはバチカンの鍵のかかる棚の中に」

 →マキャベリ『君主論イル・プリンチペ』が一時期バチカンで禁書扱いされていたことを指す。


「The Pilgrim’s Progress」

 →バニヤンの『天路歴程』。聖書の次くらいに売れたキリスト教的小説。

「吸血鬼がそんなものを読むなんて気でも狂ったの?」


「口に土を詰められている」

 →吸血鬼が墓の中で屍衣を噛むことで親類縁者に害を及ぼすのを防ぐ目的で、死者の口に土やコインなどを詰める風習がある。


売春宿ルーペイナからは」

 →ラテン語が語源のフランス語。“雌狼”の意味もある。


「深い落とし穴のような」

 →『箴言』から、遊女の暗喩。



 3-2

「しとやかな女は誉を得る」

 →『箴言』


「他人に干渉する者として」

 →『ペトロの手紙』第4章15節

「あなたがたのうちだれも、人殺し、泥棒、悪者、あるいは、他人に干渉する者として、苦しみを受けることがないようにしなさい。」

 これ同列列挙する?


「ソロモンの裁きを」

 →ソロモンは旧約聖書に出てくる賢王。日本で言うところの“大岡裁き”。



 3-3

「『レビ記』の第十八章二十二節みたいなこと」

 →「女と寝るように男と寝てはならない。それはいとうべきことである。」

 (男性)同性愛の罪。


「もし第十八章二十節だったら」

 →「人の妻と寝て、それによって身を汚してはならない。」

 不倫。


「『レビ記』第十九章十五節が座右の銘」

 →「あなたたちは不正な裁判をしてはならない。あなたは弱い者を偏ってかばったり、力ある者におもねってはならない。同胞を正しく裁きなさい。」



 3-4

「十一番目のいましめみたいに」

 →Thou shalt not flog the dog.“汝、犬を鞭打つなかれ”。Thouはyouの、shaltはshallの古語(文語)。聖書にはこんなこと書いてない。

 flog the dogに「オナニーをする」の意味があり、カトリックでは“そういう行為”が禁じられていることから、厳格なジェレミーだったら「十戒」にもうひとつプラスするよね、くらいのニュアンス。さすがに十戒くらいは聞いたことがあるがディーンは聖書を読まないので、「マスターベーションしちゃだめ」がどこに書いてあるかは知らない。

 ちなみにそもそもの語源になったのが、旧約聖書『創世記』第38章9節

「オナンはその子孫が自分のものとならないのを知っていたので、兄に子孫を与えないように、兄嫁のところに入る度に子種を地面に流した。」

 これはどちらかというと膣外射精(古代の避妊)では…?


「病者の塗油」

 →最初に出てきた「終油の秘蹟」は、臨終を迎えつつある信者の額に聖油を塗る儀式で、生前の罪について神に許しを得て、無事に天国に旅立てるよう祈るためのもの。病気の時などは「病者の塗油」という名でも呼ばれる。ニックはもう死んでるし…死んでるけど健康って…??



4-1

「彼に石を投げる資格はない」

 →『ヨハネによる福音書』第8章7節

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい。」

 さすがにこれは日本でも人口に膾炙しているのでは…?と思ってスルーしようかと思いましたが…え、違う? この先、呼吸いきをするみたいにこういうたとえを入れてくるのがクリスだけど大丈夫??


 4-3

紫苑シオン

 →聖書に出てくる地名“シオン”に掛けて。



 5-1

 ここ引用合戦になっちゃってるので、もはや何を参照したか探すのもめんど…いえ、わからず、あえて注しません。ディーン同様「こいつら何言ってっかわかんねえ」と思ってください…。


「戻った者は…」

 →スラヴの作家プレドラグ・マトヴェイェーヴィチの言葉。「放蕩息子」のたとえと掛けている。



 5-2

「死者はすべて…地上の一切に関わることはない」

 →旧約聖書『伝道の書』第9章6節

「彼らはもはや日の下に行われるすべての事に、永久にかかわることがない。」のもじり。


「わたしのくびきを負って…」

 →『マタイによる福音書』第11章29節

「わたしは柔和で謙遜な者だから、わたしの軛を負い、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたは安らぎを得られる。」


「主の御名はむべきかな」

 →旧約聖書『ヨブ記』第1章20節

「主が与え、主が取られたのだ。主の御名はほむべきかな。」

 プロテスタントが葬儀のときに引用する。


























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