7 心地よい夜風

「それじゃお二人さん、私はこっちだからここで別れるね。また明日♪」


「ん、お疲れさん」


「色々ありがとう」


「いえいえ♪」


 小鳥遊と別れた俺達は夜風を浴びながら家路についていた。



「これで生活は少しは楽になりそうか?」


「多分ね。下着の機能も着てみないと分からない事も色々あるんだってわかったし面白かったよ」


「そっか、それならいいか」


「…あの時のお前の顔、多分一生忘れないわ」


「へ?」


「完全に盛った猿みたいな顔してたよ…」


「おま…!」


「へへへ…♪でもいいんだ、あの時の君の顔を見て、あぁ…僕本当に女になったんだなって実感が湧いてきた」


「なんか…すまん」


「怒ってはないんだよ、なんか今の自分を受け入れる準備がデキてきてるっていうか…」


「…」

 こういう時にどういう言葉を吐いて良いのかわからずただ黙って蒼の言葉を聞くしかないのがなんとも情けない。


「ありがとな、やっぱ涼真を誘ってよかったよ…」

 夜風にあてられ適度に熱気が落ち着いた蒼の顔は仄かに赤らみ、その笑顔はとても優しい表情に満ち溢れていた。


「いや、こういう事しか手伝えないからな、正直何ができるかまったく分からん」


「そんなことないよ、すっごい嬉しい」

 すーっと一呼吸を置いて蒼が続ける。


「女の子になって正直、ちょっと怖かったんだよね。拒絶されるんじゃないかって」


「でも涼真は色々付き合ってくれるし相談にものってくれるから、安心できるんだ」


「短い付き合いじゃないもんな、俺達」

俺は夜空を見上げながら過去を振り返る。


「…だからちょっとずつ慣れていこうと思う。医者の先生には『男性の体に戻れるかどうかはまだわからないので、しばらくはこの状況が続くと思ってください』って言われてさ」


「!!初耳だぞ」


「まだ決まってる事じゃないしね。言うのも怖かった」


「考えればそうか、色々抱えるわけだもんな…俺はお前から逃げたりしないから安心してくれ。お前の助けになるから」


「…うん、ありがとう」


「しばらくはこの体を楽しむよ」


「たのしむぅ?」

反射的に上ずった声を出し、エロい妄想をしてしまう自分が恥ずかしい。

俺の背中をバンッ!と蒼が叩くとボソッと囁いた。


「涼真のスケベ…!」


「悪い…」


赤面しながらもはにかんだ蒼の顔はとても可愛く尊かった。

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幼馴染が女の子になって俺のドキドキが止まらない! KRM @nekojyarashi

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