子どもについて思うこと、思ったこと

うつりと

れお

よく、子どものことを考えた。


妊娠中、検診に行くと、診察室で必ず行われる検査がある。NST、「ノンストレステスト」と呼ばれるものだ。センサーを母親のお腹に当て、胎児の心音を聞く。赤ちゃんの元気度を測る検査だ。集計機は、グラフを印字していく。診察室に、赤ちゃんの鼓動が響く。時間にして、十分〜二十分くらいだろうか。


そのときに、よく、子どものことを考えた。


彼の鼓動が聴こえる診察室で、何ヶ月か後に会える、その人のことを想像した。

白黒のエコー写真は不鮮明で、赤ちゃんの性格を想像するのは難しかった。

わたしにはNSTの彼の心音が心地よく、また、「どんな子かな」という想像がしやすかった。無邪気で、気ままな彼がお腹の中にいることが、ありありと手に取るように感じられた。


「逢ひみての のちの心にくらぶれば 昔はものを 思はざりけり」


恋愛の歌だが、よくこの歌を思い出してもいた。

「会って、目を合わせてみなければ、『どんな子か』なんてわかるはずがない」

そのように自分を戒めていたつもりである。


でも、子どもの心音を聞いたときの、心が踊る感じ、小さいながらも生を寿いでいる感じ、体までも浮き立つような、軽やかな彼のリズムを感じたときの、嬉しくなる感じや、楽しい感じのするほうに、わたしは賭けていた。



「ほぎゃー」

という彼の第一声を聞いた時、(ほら、やっぱりそうだった)と思った。


心音から感じ取って想像していた、彼の産声と、一緒だった。

(ああ、この泣き声だった)と、初めて聞くはずの彼の声に、難しいパズルがやっと解けたような感じがし、ほっとした。



訳あって、いまは離れて暮らしているが、彼は本当に自由人だと思う。

気ままで、無邪気。子どもなんてみんなそんなもの、と思う人もいるかもしれない。でも、会うたびに、(ああ、会いたかったのはこの子だったんだな)という思いを新たにしていく。


誕生から一年以上経ち、別人のように成長した彼だが、泣き声さえもわたしには快く感じる。相性がよい、というよりは、波長が合う、という感じだろうか。


今はまた一緒に暮らしていくことを目指している。


楽しい彼と、楽しく暮らして行きたい。

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