第15話

春が来て、私は大学生になった。大学に合格出来たのは秋川のおかげだ。

でも、合格した事を秋川に報告出来なかった。


形見にもらった秋川のスマホには私には送られてこなかったメッセージが残っていて、「大学合格おめでとう」の文字に笑ってしまった。


秋川、私が落ちているって思わなかったのかな。


「理桜 大学合格おめでとう。


理桜が俺についたウソで悩んでいた事は知っていたよ。

罪悪感を持つ事はない。俺は理桜のウソに最初から気づいていたから。

そのウソを利用したのは俺だ。悩ませてごめんな。


いつも生意気な理桜に担任として手を焼いていたが、電車で小さな子供に席を譲ったり、お年寄りの荷物を持ってあげたりする所を見て感動した。理桜は優しい子だな。俺が抱えきれない程の荷物を持っていた時も助けてくれたよな。いつの間にかそんな理桜に好意を持つようになった。


恥ずかしながら、俺は理桜に片思いをしていた。だから熱心に理桜の成績を心配し、他の生徒よりも長くお説教をした。嫌われてもいいから理桜を合格させてやりたかった。


彼氏になって欲しいと言われた時、断らなければいけないと思った。だが、誘惑に勝てなかった。理桜の告白は残り少ない俺の人生のご褒美だった。


理桜、彼氏にしてくれてありがとう。


俺は幸せな人生だった。

俺がいなくなっても幸せに生きろよ。勉強もしろよ。それから恋もしろ。俺以上にいい男を見つけるんだぞ。


理桜、好きって言ってくれてありがとう。俺も好きだよ」


私も幸せだった。

私は秋川の余命半年ウソだと思っていたよ。


ウソだったら良かったのに……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたと私のウソ コハラ @cat-myfavorite

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ