誅殺につぐ誅殺、阿房宮・驪山の造営

 二世にせい皇帝こうてい公室こうしつしょ公子こうし)の誅殺ちゅうさつ大々だいだい的な殺戮さつりくか)をおこなわれました。


 これより公子こうし・十二にんがにわかに咸陽かんようくなられ(せしめに市場いちばころしたか?)、十の公主こうしゅ女性じょせい皇族こうぞく)が都市としめい)に磔死たくしされ(はりつけか?)、財物ざいぶつ県官けんかんけん官吏かんり)にはいり、(つみに)あいつらなり(けいに)およものかぞえることができぬほどでした。


 公子こうし將閭しょうりょ昆弟こんてい兄弟きょうだいか?)三にん内宮ないきゅうに(先に)とらえられ、そのつみはひとりのちされました。二世にせい皇帝こうてい使つかいをつかわして將閭しょうりょもうさせようとしました。


公子こうしわたし)は不臣ふしん不忠ふちゅう)にして、つみはまさにすべきにございます!ほうけい執行しっこう)をいたさせてください。」


 みずかえらばせようとしたわけです。


 しかし將閭しょうりょもうしました。


けつてい(それぞれ朝廷ちょうてい)のれいは、われわたし)はいまだかってあえて賓贊ひんさんめられた礼儀れいぎか)にしたがわなかったことはございません。廊廟ろうびょう(祖先の廟)のくらいは、われわたし)はいまだかってあえてせつ節度せつどか)をうしなったことはございません。めいうけ応対おうたい(応も、対も、答えること)し、われわたし)はいまだかってあえて言葉ことば)をうしなったこと(非礼ひれいはたらいたこと)はございません。なに不臣ふしんしんならず、不忠ふちゅう)とおっしゃるのか?ねがわくばつみ(の内容ないよう)をいてにたいものです!」


 使者ししゃもうしました。


しんわたし)ははかりごと審議しんぎ)にあずかるをえていません、しょ文書ぶんしょ)をほうじてこと任務にんむ命令めいれい)にしたがうのみにございます!」


 つまり自分じぶんらない、皇帝こうてい命令めいれいのみであるとげたわけです。


 將閭しょうりょはそこでてんあおいで「てんよ」と大呼たいこする(おおきくさけぶ、絶叫ぜっきょうする)ことたび、「われわたし)は無罪むざいである!」とおっしゃいました。昆弟こんていにんはみな流涕るていなみだながす)し、けんいて(けんで)自殺じさつされました。


 宗室そうしつ皇族こうぞくたち)はふるおそれました。


 公子こうしこうはしろう(逃走とうそうしよう)とされましたが、ぞくおさめられること(一族いちぞくみなごろし)をおそれ、そこで上書じょうしょされもうされました。


先帝せんてい始皇帝しこうてい)のつつがなき(恙き、健在けんざいの)ときしんわたし)はればすなわしょく(食べ物)をたまわることができ、ずればすなわ輿こしせていただきました。御府ぎょふ宮廷きゅうてい宝庫ほうこか?)のころもは、しんわたし)はたまわることができ、中廏ちゅうきゅう宮中きゅうちゅううまやか?)の宝馬ほうばは、しんわたし)はたまわることができました。


 しんわたし)はまさに(先帝せんてい始皇帝しこうていの)したがうべきにそうすることができず、ひととして不孝ふこうひとしんとして不忠ふちゅうであります。不孝ふこう不忠ふちゅうであるものは、無名むめいつことはございません(あらわれることはございません)、しんわたし)はいますに(始皇帝しこうていの)したがって、ねがわくば驪山りざんあしふもと)にほおむられんことを、ただじょう二世にせい皇帝こうてい)のさいわいにこのことを哀憐あいりんされんことを!」


 しょ(この上奏じょうそうぶん)が奏上そうじょうされ、二世にせい皇帝こうていおおいによろこばれ、趙高ちょうこうしてしょ文書ぶんしょ)をしめされ、おっしゃいました。


これきゅういそぎ)というべきだろうか?」


 趙高ちょうこうもうげました。


人臣じんしんはまさにうれうにいとまがありません、どうしてはかりごとえることができましょう!」


 二世にせい皇帝こうていはそのしょ文書ぶんしょ)をとされ、せんまんたまわって、それでもって(公子こうしを)ほうむられました。


 また阿房あぼう宮の造営ぞうえいつづけさせ、驪山りざんつち崩落ほうらくしたのでこれも造営ぞうえいさせました。ことごとく材士ざいし勇敢ゆうかんひと)・五まんにん咸陽かんよう屯衛とんえい守備しゅびへい)として徴発ちょうはつし、しゃを教えさせました。


 (材士ざいしの)いぬうま禽獸きんじゅうべないといけないものえているもの)はおおく、もの糧食りょうしょく)はらず、調発ちょうはつ徴発ちょうはつ)をぐんけん命令めいれいをくだし、まめあわまぐさわら転輸てんゆさせて、みな(材士ざいしに)みずから(自ら)で糧食りょうしょくをもたらさせたので、咸陽かんようの三百うちはそのこく穀物こくもつ)をべることができなくなるほどでした。


 次章じしょうに、これらのけへの反動はんどうしるされます。

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