第1章 英雄たちの時代(二世皇帝の時代)

趙高の策

 二世にせい皇帝こうていはいるまえに、その即位そくい経緯けいいしめされているのでふれておきましょう。


 さきにもべたとおり、始皇帝しこうていもう氏一族を尊寵そんちょうし、もう氏を信任しんにんしていました。


 蒙恬もうてんにんぜられて外將がいしょうとしてあり、蒙毅もうきつねなかにいて謀議ぼうぎ参画さんかくし、忠信ちゅうしんとせられました、だから諸將しょしょうといえどもそれぞれあえて彼等かれらあらそうことはありませんでした。


 趙高ちょうこうは、うまれて隱宮いんきゅう宦官かんがんにせられた、けいによってとちゅうにはあります)されたものです。


 趙高ちょうこうは、ちょうくに王家おうけ疏遠そえん親族しんぞくであったようです。 そのため趙高ちょうこう昆弟こんてい(一族か、宗族そうぞくと考えられる?)たちすう人は、みなうまれて隱宮いんきゅうされ、その母は刑僇けいりくされて、世世よよずっと卑賤ひせん境遇きょうぐうにおらされました。


 始皇帝しこうていはその強力きょうりょくにして、獄法ごくほうにつうずるを聞き、げてもっ中車府令ちゅうしゃふれいとし胡亥こがいごくけっするを教えさせました。


 胡亥こがいきの宦官かんがんとして、行動をともにするようになったわけです。


 胡亥こがい趙高ちょうこう寵幸ちょうこうしました。


 さて趙高ちょうこうつみがあることがあって、始皇帝しこうてい蒙毅もうきにこのことをさばかせました。蒙毅もうき趙高ちょうこうほうによればまさにすべきであるとしました。始皇帝しこうてい趙高ちょうこうことびんであるとし、趙高ちょうこうゆるし、復官ふくかんさせました。


 趙高ちょうこうはすでにもとよりさいわいを胡亥こがいにえており、またもう氏をうらんでいましたので、すぐさま胡亥こがいき、いつわって始皇帝しこうていめい扶蘇ふそちゅうして胡亥こがいてて太子たいしとすることをいました。


 胡亥こがいはそのけいしかりとしましたので、趙高ちょうこうは申しました、


丞相じょうしょうはからなければ、恐らくはことることはできないでしょう。」


 すぐさま丞相じょうしょう李斯りしにまみえて申しました。


じょう皇帝こうてい)は長子ちょうし扶蘇ふそ)にしょとをたまい、みな胡亥こがいさまのところにあります。太子たいし皇太子こうたいし)をさだめるのは、君侯くんこう李斯りし)と趙高ちょうこうくちとにあるのみでございます。ことはいったいいかがいたしましょう?」


 ここは大きな歴史の転換点だったのかもしれません。


 しんの歴史上、長子ちょうしでない人物が政争せいそうせいしてくらいぐことはこれまでからもありました。しかしここで始皇帝しこうていのあとを長子ちょうしである扶蘇ふそいでいれば、歴史はどう変わっていたのかわからないところです。


 李斯りしは申しました。


「どうして亡国ぼうこくげんをえん!これは人臣じんしんのまさにすべきところにないはずである!」


 趙高ちょうこうは申しました。


君侯くんこう李斯りし)の材能ざいのう謀慮ぼうりょこうの高きこと、うらみなきこと、長子ちょうしの信じること,この五つのものの、みないずれが蒙恬もうてんよりまさっていますか?」


 李斯りしは申しました。


およばざるなり」


 趙高ちょうこうは申しました。


「そうであるならば、長子ちょうし即位そくいされれば、かなら蒙恬もうてん丞相じょうしょうとされるでしょう、君侯くんこうはついに通侯つうこういんいだかないで郷里きょうりに帰ることはきらかではございませんか!」


 趙高ちょうこうは続けます。


胡亥こがいさまは慈仁じじん篤厚とくこうであり、もって後嗣こうしとなることができます。願わくばきみがつまびらかにはかりてこれをさだめんことを!」


 丞相じょうしょう李斯りししかり、そのとおりだと考え、そこでたがいにはかり、いつわって始皇帝しこうていみことのりけたとし、胡亥こがいてて太子たいしとしました。


 さらにしょつくって扶蘇ふそたまい、ひらこうてることあたわず、士卒しそつを多く消耗しょうもうし、上書じょうしょ直言ちょくげんして誹謗ひぼうし、日夜にちや、仕事をめて帰り太子たいしとなることをえないことを怨望おんぼうしていることをせめました。


 将軍・蒙恬もうてんについては(太子たいしを)矯正きょうせいせず、そのはかりごとを知っていたことをせめました。たまい、へい裨將ひしょう王離おうりたくすようにしました。


 ここに趙高ちょうこうの演出のもとか、歴史は動き始めます。

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