封禅と齊の八神の祭場

 封禅ほうぜんについて、しょじゅしゃ)のあるものが申しました。


「いにしえは封禪ほうぜんは、蒲車ほしゃをつくりました。山の土石どせき草木そうもくをそこなうをにくめばなればです。地をきてまつり、せき葅秸そかい(農作物のくきでできた座席・座布団ざぶとんのようなものという)をもちいます。」


 蒲車ほしゃとはかやの車輪のくるま、とちゅうにはあります。


 (意見)はそれぞれの儒生じゅせい儒学者じゅがくしゃ)で乖異かいいしていました。始皇帝しこうていはその施用しようもちいる)しがたきがために、これがために儒生じゅせいをしりぞけました。そしてついに車道しゃどう(車の通る道)をはらい、太山たいざんようみなみ)よりのぼっていただきにいたり、いしててとくしょうしました。いんきた)のみちよりくだり、梁父りょうほ山にぜん封禅ほうぜん)しました。


 そのれいはすこぶる太祝たいしゅく官職かんしょくか?)のようしんのかつての国都こくと)の上帝じょうていまつるにもちうるところをもってし、そして(その内容は)封藏ほうぞうふうおさめる)してみなこれをし、世間せけん)はえてしるすことができませんでした。



 さて封禅ほうぜんにつづき『通鑑つがん』はしん皇帝こうていの旅行と祭祀さいしのことをつづっていきます。政治的な事件や、制度の運用、反乱などの様子もありますが、多くはないようです。皇帝の行動をおっていきます。


 ここにおいて、始皇帝しこうていはついにひがしにいって海上にあそび、名山めいざん大川たいせん及び八神はっしん禮祠れいし(礼でまつる)しました。また僊人せんにん仙人せんにん)・羨門せんもん仙門せんもん)のぞくもとめました。


 八神はっしんについては、『史記しき』の封禪ほうぜんしょを『通鑑つがん』はいていますので本文の方から紹介します。



 八神はっしんというのはいにしえからあったもので、人が言うには、「太公たいこうたって作った、せいせいたるゆえんのもので、『天齊てんせい』というものである」、ということです(『天齊てんせい』とは天の中央というような意味)。


 そのまつりはいつごろこったかの時を知るものはなかったとされます。


 八神はっしんとは、いち天主てんしゅ(天の主か?)とい、天齊てんせいまつります。天齊てんせいえんすいが、臨菑りんしみやこ南郊なんこうさんもとにあります。


 地主ちしゅ(地の主か?)とい、泰山たいざん梁父りょうほさんまつります。


 さん兵主へいしゅ(兵(軍)の主)とい、蚩尤しゆうまつります。蚩尤しゆう東平とうへいの街の陸監りくかんきょうにあられ、それはせいの西のさかいになります。


 よん陰主いんしゅ(陰の主)とい、三山さんざん海中かいちゅうにある三つの山ではなく、参山さんざんという山だという)をまつります。


 陽主ようしゅ(陽の主)とい、之罘しふさんまつります。


 ろく月主げっしゅ(月の主)とい、之萊しらいさんまつります。


 なな日主にっしゅ(日の主)とい、成山せいざんまつります。


 はち四時主しじしゅ(四時の主)とい、琅邪ろうやさんまつります。


 八神はっしんそれぞれに一牢いちろう具祠ぐし(祭礼の道具の様式でしょう)をもちいるが、巫祝ふしゅくしゅくなどの、まつる者)の(祭りの道具を)そんじたりしたりするところがあり、けいへい(それぞれ祭りの道具か?)などの雜異ざつい(混じる)するものをもちいるようです。



 ここにはせいについてくに全体が広大こうだい祭場さいじょうであったことがべられており、いくらかはぶきましたが、八箇所はっかしょ祭祀さいしおこなわれていたことがべられています。


 せいとは『天齊てんせい』のせいで、てんの中央という意味でもあり、神聖な場所であったとも考えられます。そしてそれらの八神はっしんしんになって、始皇帝しこうていによりまつられたわけです。



 さて始皇帝しこうていみなみにいって琅邪ろうややまのぼり、おおいにここに楽しみ、三月みつきのあいだとどまり、琅邪台ろうやだいをつくり、石をたてて徳をしょうし、をえた(皇帝となり、天下を治めていることか?)ことをあきらかにしました。


 琅邪台ろうやだいというのは元々もともと越王えつおう勾践こうせんがたてた台館だいかんがあったようですが、それにくわえて、しんだいをつくったようです。またひとをうつし、琅邪ろうやまちかたちにもしたとしるされています。


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