序章 秦・始皇帝の時代

戦国七雄のうち、六國、滅ぶ

 まず、戦国時代のおわり、しんの全国統一から物語をはじめたいと思います。


 戦国時代、しん以外の六国で、最後にのこったのがせいの国でした。この時点で、かんちょうえんなどの国はしんの国にほろぼされています。


 齊王せいおうしんからのさそいや、家臣のさそいがあったのでしょう、まさに属国ぞっこくになろうとしようとしましたが、雍門ようもんという地の司馬しば(軍事の役人)がすすみて申しました。


 せいの将来をあやぶんだのでしょう、諫言をしました。



「王が立たれたわけは、社稷しゃしょく(国のまつり、国家)のためですか、王のためですか?」


 王はおっしゃいました。


社稷しゃしょくのためである」


 司馬は申しました。


社稷しゃしょくのために王はたれたのに、王はなんのために社稷しゃしょくをすててしんに属されるのですか?」


 齊王せいおうさとられることがあったのでしょう、くるま(乗り物)をめぐらしてかえられました。


 また即墨そくぼく大夫たいふ(政府の高官)が、この雍門ようもん司馬しば諫言かんげんがききいれられたことを聞き、また齊王に謁見えっけんして申し上げました。


 大夫たいふは申します。


せいは四方が数千帯甲たいこう兵士へいし)は数百まんございます。


 それさんしん(韓・魏・趙の国、すでに滅ぼされていた)の大夫たいふたちはみなしんを正しいとしておりません。そしてけんのあいだの地域にあるものは百数(たくさん)でございます」


 大夫は説いていきます。


 けんはいずれもせいの都市です。賓客ひんかくとしてこれらに(国をほろぼされた)さんしん、つまり韓・魏・趙の国の大夫たいふたちがせていたのでしょう。


 話は続きます。


おうがこれらを採用して百万人のしゅうをわけてあたえ、さんしんのもとの土地をおさめようとさせれば、すぐさま臨晉りんしんかんしん関所せきしょ)も彼らの力ではいることができるでしょう。


 また(国をほろぼされた)えんえいもとの国の領地)の大夫たいふたちはしんちからになろうとはのぞんでいません、そのために南城なんじょうせいの領地、領域りょういきに近い場所)のもとに身を寄せておるものはたくさんおります。


 王がこれらのものをおさめて百万のぐんをわけあたえられ、の元の領土をおさめさせれば、すぐさま武關ぶかんせっするしんの関所)も彼らの力で入ることができるでしょう。


 このようであれば、そこでせいの威を立てることができ、しんの国をほろぼすことができるのです、どうしてただその(せいの)国家こっかをたもつのみでございましょう!、全ての国に益があるのです」


 しかし齊王せいおうはこの策を採用されませんでした。


 秦王しんおうせい(のちの始皇帝)の二十六年(B.C.二二一)


 王賁おうほんしんの将軍)がえんより南下してせいを攻め、にわかに臨淄りんしせいの首都)に入りました、民であえてたたかい、抵抗するものはありませんでした。


 奇襲きしゅうけても、せいではたたかうものがいなかったのです。


 しんは人をして齊王せいおうをいざなわせ、封ずるに五百の地をもってすることを約束しました。


 齊王せいおうはついにくだりました。


 しんは王をきょうという土地、もとにある都市としでしたが、にうつし、王をしょうはくのあいだ(松の木と柏の木の林か?)にいて、えでなせました。


 せいの人はせい王・けんの早くに諸侯しょこう合従がっしょうしなかったこと、しんに味方する奸人かんじん賓客ひんかくに意見をきいて、そしてその国をほろぼしたことをうらみました。


 そこでこのことを歌ってもうしました。


「松よ、柏よ、けんきょうの街に住まわせたものはかくであったことよ!」


 王・けんの客、賓客ひんかく、外部の人材、を用いることの適切でなかったことをにくんだのです。


 ここにせいほろびました。しんの統一はここになったのです。

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