速報 カタールワールドカップ あの選手がサプライズ選出！

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カタールワールドカップ あの選手がサプライズ選出！

　2022年カタールワールドカップに向けた日本代表26名が発表された。

「最後の一人はカヅ、丹浦カヅです」

　記者会見の場で、サプライズ召集された日本サッカー界のレジェンドの名前が発表された時、会場にいた百名を越す記者席がどよめいた。その選手の名前は 丹浦嘉數芳 （にうら・かづよし）。サッカーファンなら誰でも知っているであろう。キングカヅの愛称で親しまれる選手である。

　55歳のカヅは現在、Ｊリーグの一部どころか、二部でも三部でもなく、その下のＪＦＬに所属している。昨年、自身の持つＪ1リーグ最年長出場記録を54歳で更新したカヅだったが、試合出場はその一試合のみ。今シーズン、出場機会を求めて移籍を表明すると、Ｊ2、Ｊ3など複数クラブからのオファーがあった。その中からカヅは敢えて、資金難にあえぐセミプロのチームを選択。年俸面は関係なく、本当に自分を必要としてくれるクラブを探したと、その時の心境をメディアに語った。

　カヅがプロとしてのキャリアをスタートさせたのは19歳の時。ブラジルの名門チームだった。15歳でプロを夢見て単身海を渡った少年は、自らの力で夢を叶えた。1993年、日本でＪリーグが発足すると、開幕戦からスター性を発揮、サッカーファンの拡大と日本サッカーの発展に大きく貢献。同1993年、日本中がサッカー熱に沸く中、国民の期待を一身に背負ってワールドカップ予選を戦い、ギリギリで出場を逃す『ドーハの悲劇』も経験。2002年ワールドカップ日韓共催が決まり、何としてもその前に自力で出場しなければならなかった1998年フランス大会予選では、日本のエースとして獅子奮迅の活躍。日本をワールドカップ初出場へと導いた。

　しかし、31歳のカヅが1998年フランスワールドカップのメンバーから落選すると、次の日韓ワールドカップでも、その後も選ばれる事はなかった。2000年の代表召集を最後に、日本代表からも遠ざかり、今年55歳を迎えた。最早カヅをワールドカップの舞台で見る事はないだろう。誰もがそう思っていた。そのカヅが、今回2022年カタールワールドカップで、日本代表のメンバーに選ばれたのだ。会見の席で、日本代表の武藤勇城 （むとう・ゆうき）監督は召集の意図をこう述べた。

「丹浦嘉數芳、カヅは、日本サッカー界を長く支えてきた功労者の一人で、間違いなく日本のレジェンドの一人です。そのカヅが一度もワールドカップに出場しないまま現役を引退するというのは、日本サッカー界にとって大きな損失です。自分は常々、そう考えていました。今回、カタールワールドカップ開幕にあたって、ひとつの変更がありました。従来、ワールドカップでは召集メンバーが23名、ＧＫ3名プラス、フィールダー20名となっていました。幸いと言うべきでしょうか、コロナ禍の影響もあり、今大会では登録メンバーの枠が3名拡張され、26名になりました。バックアップメンバーではなく、本登録で3名も増員されたのです。26名の中には、ＧＫ以外にも出場する機会のない選手、言い方は悪いかも知れませんが、遊びの枠、使われない選手というのが出てくるでしょう。戦術的なもの以外で、累積警告や怪我、大会中にコロナ陽性になるなど、不測の事態に備えた遊び枠です。55歳のカヅは、恐らく現役サッカー選手として出場の可能性がある、最後の大会、最後のワールドカップになります。この土壇場で3人も遊び枠が出来ました。神がカヅをワールドカップに連れて行くために用意してくれたのだと自分は思います。もちろん、若い選手を連れて行って欲しいとか、万が一の時に必要な選手を入れるべきだとか、得点が欲しい時に、守り切らなければいけない時に、色々な状況下で使える選手を入れろと、そういうご指摘ご批判もあるかも知れません。ですが私は、これがカヅをワールドカップに連れて行ける最後の大会であり、最大のチャンスであると、そう思うわけであります」

―――カヅが出場する可能性はありますか？

「はい。今回は交代枠も、従来の3から5に拡大されています。カヅの豊富な経験は必ずチームのためになりますし、どんな状況でも最後まで戦ってくれるでしょう。ロスタイムの残り1分でも、必ずカヅをピッチに送り出すと約束します」

　サッカーを愛し生涯を捧げた少年が、最後の夢舞台に挑む。（山崎信一郎）