第11話 最後の攻防
やけどの痛みが少し引いた頃の昼前に、また、狼が赤ずきんちゃん宅にやってきました。
狼は玄関先で、「嫁ぇ~、新婚旅行を予約してきたじょぉ~‼婚前旅行でもいいじょぉ~‼」とつぶやき、ゴム手袋で、ドアノブを握って、ドアを開けて赤ずきんちゃん宅に入ります。
すると、屋内アナウンスが流れてきました。「来客の方は、赤外線ゴーグルを装着してください。」
狼は、「一応、つけておくかぁ~。」と言って、赤外線ゴーグルを装着しますが、何となく空気がいつもとは違う違和感を抱きました。
まあ、赤ずきんちゃんのおばあちゃんが来ているのかもしれないし、すんなり赤ずきんちゃん宅に入れることもあるのだろうと気持ちを落ち着けながら、狼は2階へ向かいます。
赤外線をかいくぐっているときにも、赤ずきんちゃん独自の作戦変更も、その日はありませんでした。
狼は、その点にも不信感を抱きますが、赤ずきんちゃんに来客があったのであろうと自分に都合の良いように、頭の中で解釈しました。
それでも、違和感は残ります。
狼は、順調に赤外線エリアを突破し、2階の赤ずきんちゃんの部屋の前まで到着しました。入る時も、防犯設備が稼働しているはずでしたが、今日は稼働していませんでした。
赤ずきんちゃんの部屋の前に立つと、自動的にドアがスライドしたのです。
狼は、今までにないことに驚きますが、目の前の女性の存在に思わず、「赤ずきんちゃん、やっと会えたね。」と言って、後ろから抱き着きました。
すると、「キャ~。誰⁉」と女性の悲鳴が上がり、部屋で寝そべっていた男性が「どうした⁉」と身を起こしました。
狼の抱く違和感は続きます。彼は、「赤ずきんちゃん、ちょっと、太ったぁ⁉」と言いました。
「赤ずきんちゃん⁉違うわよ‼」と女性が振り向きます。
狼の方もびっくりしましたが、「誰⁉」と問います。
女性は振り向きましたが、お互い面識はなく赤ずきんちゃんではありませんでした。
女性は向き直って、「いつまで、抱きついてんのよ‼(# ゚Д゚)」と言って、狼をしばきます。
狼は、「あぁ、ごめんなさい。あなたのように小太りの人なんて、眼中にありませんよ。」と言いました。
女性は、「なんですってぇ~!!(# ゚Д゚)」と叫び、狼をしばき倒します。
その様子を見ていた男性がとりなすように、「彼は、素直なだけなんだよ。」と言いますが、女性は「はあ!!(# ゚Д゚)とりあえず、お前ら、正座!!」と余計にいきり立ちます。
それはともかく、赤ずきんちゃんの行方を知りたい狼。
「なぜ、ここにいるのですか?赤ずきんちゃんは?」と言う狼。
その言葉に応じて男性が「赤ずきんちゃん⁉ああ、前の人ね。もう引っ越したよ。この家は、防犯設備フル装備分譲住宅として売りに出されていたんだよ。それで俺たちが買ったってわけ。」と答えました。
狼は、目が点になり、「赤ずきんちゃんが引っ越したぁ~⁉俺に断りもなくぅ~‼」と言いますが、ポンポンと肩をたたかれます。
彼が振り向くと、警察官が立っていました。部屋の男女が狼としゃべっている間に、不審者侵入を感知した防犯設備フル装備分譲住宅のパソコンが勝手に通報したのでした。
警察官は狼に向かって続けます。「ほな、行こか。」狼の両手に手錠がかかります。
狼は肩を落としませんでした。「俺は、絶対あきらめないじょぉ~‼」と雄たけびと共に叫びます。
赤ずきんちゃんと懲りない狼 道鬼 @dohki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます