時を横切る
第15話 揺られる
再び落ち着きを取り戻した列車の中で僕は揺られる。
もう動きたくないと愚痴を零しながら。
窓の外を見てみれば飛行機に乗った時のような雲と時計が並んでいて、空は青だった。
(あの世界線では轢かれたのか……)
ついさっきまでいた世界を思い出す。
車に轢かれかけたこと以外はいつもの日常のようだった。友達と下手くそな会話をして、特別なこともせずに有象無象に溶け込んでいた。
そんな世界で身を注げるほど面白いものはまだ発見出来ていなかったので、正直あのタイミングで死んでも、天国で30分もあれば落ち着いていただろう。
(『生きたい』と願っていた?)
そういえば自分が「生きたい」という気持ちを持っていたから乗せられたんだった。
(なんとなく死ぬのが嫌で、でも生きがいも無くて、でも世界は別に嫌いじゃなくて……)
考えていくうちに結局「生きたい」と思えてきた。どこまであの子らに知られているのが怖くなってきたが、そもそもあの子らは人では無いから、考えるだけ無駄だった。
神話にも載らないようなこの秘密の神秘的な世界でなんて平凡な思考をしているんだと思った。
少しずつ少しずつ、寂しくなってくる。
あの子ら以外はこの列車にいないのだろう。
この列車はルフエルの口ぶりからして、ボランティアだろうから、何もサポート的なのはつかなかったのだろうか。
1人でいると考えごとをしてしまう。
このままだと女心まで理解出来てしまいそうだ。
昔、近代文学の本を読んだことがある。
ライトノベルとは違い、大した笑いどころも無く、話が分かりにくかったが、解説サイトを見てみると、名作と謳われているものばかりだった。どれもこれも、簡単には伝わらない方法で何かを訴えていて、人に考察してもらうこと前提の文章に少し腹が立ったのを覚えている。オチもつかみも無くて訳が分からなかった。
言葉はハッキリ伝えた方が良いと思った。
話は面白い方が良いと思った。
先入観なんて無い方が良いと思った。
だから友達が少なかったのか。
時空を飛ぶ列車 朱汎 @shuhiropp04
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