第14話 加速


「トロッコ問題って知ってる?」

ルフエルがそう話かけてきた。

わずかに目が曇っているが、重要な話だなと感じた。

時空線が安定してる事を確認した後、私はルフエルに向き、話を催促した。

「トロッコ問題ってのはね?暴走したトロッコに自分が乗ってて、二つのレールを入れ替えるだけのレバーだけが目の前にあるの」

それだけ話すと、ルフエルは顔色を伺ってくる。

大丈夫、理解してる。

そんな目で返事をする。

そしてまた話す。

「そして自分の延長線上に何か人だったりものがある。それを自分の判断でどっちを犠牲にするかを選ばないといけないという問題。」

少し説明が足りないように感じたが、そもそも言い出せなかっただけで、説明しなくてもそれは知っていた。

私がコミュ障なことをさらに自覚してしまった。

だからここにいるんだっけ?

「リノエル?」

「あ、ごめん」

少し考え込んでしまった。

少し間を置いてルフエルがまた話す。

時空の龍の鳴き声が聴こえるような静寂の中。

「それでね?何が言いたいかと言うと、創夜君が生きている世界線に行けても、創夜君以外の誰かが死んでいる可能性があるんじゃないかなって…」

説明が終わると、ルフエルは私を見る。

大丈夫、怒ってない、そんなことかって思った。

「うん、言いたいことはわかったよ」

この世界はどこか変なルールがある気がする。

"誰かを無理やり生きらせると、生きているはずの誰かが死ぬ"ってのは十分ありえる。

生きている世界線が全く見つからない創夜が生きている世界はどうなっているのだろうか。

私たちがやっていることは正しいのだろうか。


考えたくもない疑問だ。


「私たちがやっていることがちゃんとその人ためになればいいね」


世界の時計が動いたような気がした。

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