第5話 空気
ガーベラへのフォローもできずに続々と集まる同期達を眺めながら思考する。
それっぽいこと適当に選んで声かけても意味ねぇよなぁ。
緊張してしまうのは分かるけど・・・。
ずっと俯いたままだし。
やる気がありすぎて逆に「めちゃくちゃ緊張している」なんて、しょーもない理由なわけないし、絶対に何か他に理由あるだろ。
まぁ、それこそこの職業に対するただならぬ思い?があるんだろう。
そんなん今聞いてどうするよ。
「空気読めない奴」とかのレベルじゃない。
より質の悪い「空気読まない奴」認定されちまう。
「こいつなんで、人のプライベートな内容に口突っ込んできてんの?キモ。しかもここどこだと思ってんのよ」
って嫌われちゃうやつでしょ。
タナカは表情こそ崩さないが脳内で目一杯思考に耽る。
勝手な仲間意識押し付けることにはなるけど、同期だからこそ何かしてやった方がいい気がする。
まぁ、何かしてやるのは今じゃないんだけど・・・。
とりあえず二、三日顔合わせて対して変わってなかったら、仕事終わりに飯でも誘うかー。
仕事も終わって気持ちも少し楽になってるだろう。
もしかしたら少しくらい話してくれるかもしれないし。
いや、別に下心とかで飯に誘うわけではないからね?
ワンチャンとかマジで考えてないからね?
ガーベラさんは確かにかわいいけどさ、考えてみ?
女子はそういう対象だって思われていい気がするわけないじゃん。
物凄く当たり前のことじゃん。
ただの同期くらいの立ち位置が一番いいに決まってる。
「皆さん、お待たせしました・・・」
いつの間にか、開けっ放しになっていた扉の向こうから最後に入ってきた職員のよく通る声が耳に入る。
このことは帰ってからでも考えればいいや。
タナカは切り替えて背筋を少し伸ばすと、隣がなにやら動いたのが視界の端に入る。
ガーベラさん顔上げたのか。
それならいいんだけど。
異世界来たのでギルド職員なってみた〜フツメンは異世界でフツーに暮らします 東ノ山 @248ma
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