第4話 緊張

 階段を登りきると、総合案内の職員が言ったように左右に向かう通路にあたった。


「あっちだよね」


 通路に出て右方向へ視線を向けるといくつもある扉のうち一つの扉の前に職員が一人立っている。


「よしっ、行こう」

「うんっ」

 

 扉の近くまで来ると、こちらに気がついた職員に会釈して二人は急ぎ足で扉の前まで向かう。


「おはようございます」

「おはようございますっ」


「おはようございます。案内の前に職員証の確認をしますので、提示をお願いします」


 職員に言われると、タナカは胸ポケットから、ガーベラは鞄から職員証を取り出す。

 

 職員証を確認した職員は「ありがとうございます」と言うと、手もとのバインダーに視線を落とし挟めてある用紙にチェックを入れる。


「タナカさんとガーベラさんですね。開式まで着席にてお待ち下さい」


「わかりました」

「はいっ」


 二人の返事に職員は笑顔を見せて木製の扉を開く。


 式場に入ると、まだ少ないが二人と同じ新人達がそれぞれ着席しその時を待っている。


 早く来る人もけっこういるんだ。

 式場内の綺麗に間隔の整った列の空いてる席の間を抜け、まだ誰も座っていない先頭から四列目の真ん中に腰を下ろす。


 中に入っても後ろを離れず付いてきたガーベラはタナカが座ったのを見てからモジモジと空いている隣の席へ視線をチラチラと送る。


「・・・隣いいよ」

「あ、あざます」


 失礼なのはわかってるけどさ。この子、本当にあの面接試験を乗り越えたの?

 

 緊張が心臓に根を張っているのかと思えるくらいずっとソワソワしてる。

 

 それも含めてかわいいけど。

 ほら、今も視線がめちゃくちゃ忙しい。

 

「・・・!?」


 タナカが見ていると偶々視線があったガーベラは苦笑いを浮かべた後俯いてしまう。


 ここは同期としてなにか一言言ったほうがいい気がする。

 

 他の人の迷惑になるといけないとガーベラの肩を軽くつつく。


 うわぁ・・・。


 顔を上げたガーベラの顔色は悪く、とても見てられない。


 想像以上の表情にガーベラかけようと思っていた言葉が飛んでしまう。


「・・・大丈夫」


 な、情けねぇ・・・。


 大丈夫じゃないからこの表情なんじゃんか。

 

「こいつ何いってんだ」くらい思われてもしゃーない。

 

 思っても見なかった言葉をかけられたガーベラは口を僅かに開く。


「・・・うん」


 小さく頷いたガーベラは再び俯いてさっきより心なしか肩を狭くしてしまった。


 お、おぅ・・・。

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