本文
○マサヤの自宅アパートの近く(1日目・夜)
買物帰りでレジ袋片手に帰宅する主人公・マサヤ。
マサヤのナレーションが流れる中、自宅アパートまで向かっている。
㋮ 俺の名前は古木マサヤ。見ての通り彼女もいない、友人も数える程度しかいない侘しい大学生だ。今日はそんな友人にも・・・
○大学構内・学食(1日目・昼)
トシキ・シンジロー、話で盛り上がっている。
ト あー彼女欲しいー
シ え?お前筋肉が彼女なんじゃねえの?
ト 違えよ! いや、昨日俺はずっと独り身かとふと思っちゃってさ・・・
シ 心気くせぇな! お前ならすぐできるって!
ト そういうお前は?
シ ・・・いない
ト 人のこと言えねえじゃねえか! なぁマサヤ! お前も・・・
マサヤ、自身のスマホで「ようかいせつチャンネル」という動画を見ている。
「ようかいせつチャンネル」では近頃、吸血鬼による被害の急増を特集している。
よ ただいま見ていただいた映像では吸血鬼が人間を・・・
トシキ、マサヤのスマホを消す
マ ・・・何すんだよ。いい所だったのに・・・
ト お前な、大学生にもなってそんな動画観てんじゃねえよ!
マ 別に良いだろ。誰にも迷惑かけてないじゃんか。
シ え?何観てたの?
ト なんか妖怪を解説してる動画でさ・・・
シ あ~「ようかいせつチャンネル」か。
ト え、何有名なやつ?
シ え?逆にお前知らないの? うわー遅れてるわー
ト うるせぇ! ・・・ていうかこいつが一番結婚できないんじゃね?
シ 確かにな~ 人に興味なさそうだし、それに・・・
トシキ・シンジロー マサヤが結婚に向いていない点で盛り上がる。
マサヤ、気にせず再び動画を見始める。
○マサヤの自宅アパート・階段~自室前(1日目・夜)
マサヤ、ナレーションが流れる中、階段を上り、自室の前まで行く。
㋮ 言われたときは悔しかったが彼らの言う通りだ。今日もこれから一人で晩飯を食べ、一人で配信を観て・・・ ずっと一人で生きていくのかとこの時まで思っていた。
マサヤ、小さなため息をついた後、鍵を開ける。
マ (小声で)・・・ただいま。
? (大声で)おかえり~!!
マサヤ、異変に気付き、一旦外へ。
マ ・・・? 気のせいだよな・・・?
マサヤ、再び鍵を開ける。
マ (恐る恐る)・・・た、ただい
ミヅキ、懐中電灯で自身の顔だけ照らし、玄関に現れる。
ミ (幽霊のように)お~か~え~り~~
マ うわぁ!!
マサヤ、腰を抜かし玄関に座り込んでしまう。
ミ ん~と、明かり明かりっと・・・
ミヅキ、スイッチを押し、玄関の明かりをつける。
ミ ごめんね! 驚かすつもりはなかったんだけど・・・
マ (怯えながら)お前は誰だ・・・?
ミ あ!そっか!自己紹介するね!私はミヅキ!どこにでもいるごく普通の吸血鬼!好きなものは・・・
マ ・・・・・・・・・は?
マサヤ、開いた口が塞がらない。
ミ あれ・・・? 人間界ではこうやって名乗るって習ったのにな・・・ もう一回やるね!私はミヅキ!
マサヤ、座ったまま、この状況を飲み込めず、ミヅキの顔を黙って見ている。
ミヅキ、そんなマサヤを気にすることなく自己紹介を続けていく。
㋮ この日から、俺とモンスターの不思議な生活が始まった。
タイトル『僕の隣のモンスター』
○ マサヤの自宅・リビング(1日目・夜)
マサヤとミヅキ、2人で向かい合って座っている。
ミヅキ、笑顔でマサヤに話しかける
ミ ・・・というわけで少しは理解してくれた??
マ (食い気味に)してない。
ミ (がっかりして)え~ 分かりやすく説明したのに~
マ できるわけないだろ!「正体は吸血鬼で、実習のために人間界にやってきた」ってどんな設定だよ!
ミ 設定じゃなくて事実だもん!
マ というかどうやって入ってきた!
ミ えっと~ どこか泊めてくれる家はないかな~って探してたらたまたま君の家の窓が開いてたからそれで・・・
マサヤ、警察に連絡する
ミ ちょっとちょっと~ 通報しないでよ~
ミヅキ、マサヤからスマホを奪おうとする。
マサヤ、必死に抵抗しながら警察に状況を伝える。
マ もしもし警察ですか? ・・・はい。今吸血鬼って名乗る女性が家に・・・ いや、嘘じゃなくて・・・
マサヤ、電話を切られ落胆する。
マ ・・・そりゃ信じないわな。
マサヤ、ミヅキを見る。
ミヅキ、子犬のような眼差しでマサヤを見つめる。目で「泊めて欲しい」と訴えている。
マ (ため息)・・・わかったよ。そこの部屋開いてるから。
ミ ほんと!? ありがとうございます神様~!
マ (深いため息)・・・何だよこの状況・・・
ミ そんなため息ついちゃダメだよ!
マサヤ、無言で睨む
ミヅキ、平謝り。
マサヤのスマホに電話がかかってくる。トシキから。
トシキはシンジローと一緒で、飲み会の帰りなのか酔っ払っている。
ト よぉ~マサヤ~ 今からお前んち行くわ~
マ ・・・悪い。部屋散らかってるから無理・・・
シ (食い気味に)というかもう着いてまーす
シンジロー、インターホンを連打。
マサヤ、立ちながらもミヅキを2人にどう説明しようか必死に考えている。
ミ 誰?お友達?
マ ああ。お前はアイツらが帰るまで部屋にいろ。
ミ え~ 何で~?
マ (投げやりで)考えたらわかるだろっ!
マサヤ、玄関に行きトシキ・シンジローを部屋に入れる。
ト マサヤごめんな~ 何かこいつが急にお前に会いたいって言い出してさ~
マ ・・・連絡ぐらいしろよ。
シ 悪い悪い! お詫びに色々持ってきたからさ! あ、レンジ借りていいか?
トシキ・シンジロー 靴を脱いで上がる。
ミヅキ、部屋から出てきてしまう。
ミ こんばんはー!
トシキ・シンジロー 突然出てきたミヅキに驚く
マサヤ、ミヅキを部屋に閉じ込めようとする。
ミヅキ、そのまま自己紹介をしようとする。
ミ はじめまして!私はミヅキっていいます!普段は吸血鬼・・・
ト え? 吸・・・?
マ (大声で)あーー! こいつは九州に住んでる親戚!突然遊びに来てさー
ミ え、違うけど?
マ (食い気味に)とにかくお前ら部屋上がれよ! あ、シンジローレンジ使うんだよな!? レンジは台所の・・・
シ 知ってるわ!何回も来たことあんだろっ!
トシキ・シンジロー リビングへ
ミ (小声で)え、吸血鬼って言わない方良かっ・・・
マ あ・た・り・ま・え・だ!
マサヤ、ミヅキの頭を軽くはたく。
マ (小声で)これ以上余計なことを言うな!お前は部屋に・・・
トシキ、なぜか意を決した様子でミヅキの前に来る。
ト ア、アノ・・・ミヅキサン ボ、ボクラとイショニノミマ・・・セン・・・カ・・・?
ミ はい!ぜひっっ!!
ミヅキ、嬉しそうにリビングへ。
○マサヤ・自宅アパート・リビング(1日目・夜)
4人、各々飲み始めたりおつまみの準備をしている。
マサヤは不満げに、ミヅキは人間界のお酒に興味津々な様子で、トシキはミヅキに緊張しながら飲んでいる。
シンジローは電子レンジで持ってきたおつまみを温めている。
ミヅキ、トシキに絡み始める
ミ ねぇ~ 私に緊張してんでしょ~
ト ソ、ソンナコトナイ・・・
ミ 嘘だ~ マサヤ君!彼緊張してるよね?
マ ・・・まぁな。
シンジロー、おつまみを持ってくる
シ はい、おまちどお~
シンジローが持ってきたのは大判焼き。
マ お前・・・つまみでこれって・・・
シ バ先で余っちゃってさ~ しかも只の大判焼きじゃないぞ!
マサヤ、大判焼きを割る。中は茶色で肉まんのような具でぎっしり。
マ ・・・何味?
シ 期間限定「にんにくみそ」味だ!食ってみろよ!
マサヤ、シンジローの頭を軽くはたく。
シ ど、どうしたんだよマサヤ!
マ (小声で)バカ!ミヅキはにんにくが苦手で・・・
シ いや、見てみろよ・・・?
マ は?
マサヤ、ミヅキを見る
ミヅキ、おいしそうに大判焼きを頬張っている。
ミ これおいしい!!人間界ってこんな食べ物あるんだ~
ト ウ、ウン・・・
マサヤ、不思議そうに見たまま固まっている。
シ ・・・? お前どうしたんだよ?
マ ・・・ごめん。取り乱した。
マサヤ、自分が座っていた場所へ戻る。
ミヅキ、トシキが掛けていたネックレスに目を付ける。
トシキ、酔っ払っていたのか前後ろ逆に掛けていた。
ミ ・・・? ネックレス逆になってるよ?
ト ヒャッ・・・!
ミヅキ、トシキのネックレスを戻してあげる。
ネックレスには十字架がついている。
ミ これって・・・十字架・・・
マサヤ、ネックレスを外そうとする
トシキ、首が絞まり苦しそうにもがく。
シンジロー、マサヤを力尽くで止める。
シ おい!マサヤ!お前今日変だぞ!!
ミ そうだよ~ ねぇ大丈夫?
ミヅキ、トシキに近づく
ト ダ、ダイジョウブ・・・ デス・・・
マ いや・・・その・・・彼女が十字架苦手だから・・・
シ はぁ!?何バカ言ってんだ!吸血鬼じゃねえんだぞ!
ミ ? 私吸血鬼だけど?
皆、時が止まったかのように止まる。
マサヤ、頭を抱える。
ミ だからさっき言ったでしょ?私吸血鬼なの!
ト ・・・え?
シ ・・・マジで言ってる?
ミ うん!!証拠見せよっか?
トシキ・シンジロー 悲鳴を上げる。
○マサヤ・自宅アパート・リビング(1日目・深夜)
トシキ・シンジロー ミヅキから渡された学生証を見ている
ミヅキ そんな2人をおちょくるようにニヤつきながら眺めている。
マサヤ どうすることもできず、とりあえず缶チューハイを飲んでいる。
ト ・・・へぇ~ 魔界にも大学あるんだ・・・
シ 「吸血鬼学科」・・・なんか面白そう!
ミ でしょ!人気あるんだよね~ しかもうちの大学、学科だけでも100以上あって・・・
シ そんなあんの!?
ミ うん! だから同じ学部でも誰がどの学科なのかわからなくて・・・
マサヤ、テーブルを叩きトシキ・シンジローに怒る
マ 何でお前ら受け入れてんだよ!!
ト そう怒るなってマサヤ!
シ 証拠も揃ってんだし信じるしかないだろ!
ミ そーだそーだー
マ (ミヅキを睨み)お前が言うな! というか証拠だってこんなカードゲームみたいな・・・
マサヤ、学生証を手にする
ミ そういうデザインなの! カッコいいでしょ?
マ (食い気味に)褒めてない! ったく・・・もういいよ!
マサヤ、再び酒を飲み始め、ふてくされ、「ようかいせつチャンネル」を観始める。
ミ マサヤ君ってあんな感じなの?
シ まぁ頑固っていうか人を信じないっていうか・・・ ま、いずれは心開くんじゃない?
・・・それにしても、ニンニクとか十字架が平気って知らんかった!
ミ 昔は苦手だったらしいけどねぇ~ あと日光も水も平気! ぶっちゃけ私にんにく好きなんだよね! それに今、魔界で十字架が流行ってて~
ト ・・・吸血鬼なのに珍しいね。
ミ ・・・人間のイメージとは違うんですー! トシキ君古―い!
シ あ!そうだ! お前ミヅキちゃんに誰か紹介して貰えよ!
ト 紹介って相手は妖怪だろ!?
ミ そんなの関係ないって~ じゃあこの子は!? 黒髪ロングで古風な子・・・ あ、正体は呪いの人形なんだけど・・・
ミヅキ・トシキ・シンジロー 深夜だが大声を上げ、トシキの彼女捜しで大盛り上がり、
マサヤ、3人を無視して「ようかいせつチャンネル」を見続ける。
○マサヤ・自宅アパート・(2日目・朝)
マサヤ、いつの間にか眠っていたようでソファーで横になっていた。
起き上がると、ミヅキが手鏡を見ながらメイクをしていた。
ミ お!マサヤおっは~
マ ・・・お前鏡に映るんだな。
ミ あ、これ?魔界用だからね~ 鏡とかスマホのカメラは魔界用じゃなきゃダメなんだよ~ じゃなきゃ映らないんだってー
マ ふーん。
ミ え~ 何その反応~ あ、そうだ!今日の夜散歩行きたい!
マ ・・・今日は配信があるから無理。
ミ そんなこと言わないでさ~ ね~行こうよ~
ミヅキ、マサヤの腕を掴み振り回す。
マサヤ、ミヅキの力に耐えきれず渋々受け入れる。
マ 痛ぇな! ・・・もう、わかったよ・・・ 帰ってきたら行こうぜ。
ミ ほんと! やったぁ~
マ その代わり、帰ってくるまで家から出るなよ?
ミ え~ 退屈だよ~
マ なら散歩は無しだな。
ミ ! わかったよ・・・
マサヤ、大学へと向かう。
○マサヤ・自宅アパート・玄関前(2日目・朝)
マサヤ、鍵を閉める。
同時に隣人のヒロコも部屋から出てくる。
マ あ・・・ あの・・・昨日は騒いでしまいすみませんでした。うるさくなかったですか・・・?
ヒ いえ。別に・・・ 私もあなたに謝らなければ・・・
マ え?
○大学構内・学食(2日目・昼)
トシキ・シンジロー 仲良く話している
シンジロー、誰かとLINEをしている様子。
マサヤ、そんな2人に怒りながらやってくる。
マ お前ら!何勝手に人のLINEを・・・
ト やべ・・・ バレたか・・・
シ すまん!マサヤ!これには訳があって・・・
○マサヤ・自宅アパート・階段(回想・2日目・早朝)
トシキ・シンジロー 飲み過ぎたのか酔いながら階段を下りる。
シ あいつ羨ましいな~! だってあんな可愛い子がしばらく家にいるんだろ?
俺も誰か来ねえかな~!!
ト じゃあ俺行くわ。
シ お前以外で!なんでマッチョと住まなきゃ・・・ ていうかお前女にビビりすぎ!
ト それは・・・しょうがないじゃないか。
シ しょうがなくない!
2人、しょうもない話題で盛り上がる
○マサヤ・自宅アパート・ゴミ捨て場前(回想・2日目・朝)
2人、盛り上がったまま階段を下りきる。
シ じゃあこうしよう!今から一番初めに会った女性とライン交換しろ!いいな!
ト (あまり乗り気じゃなさそうに)・・・えぇ~?
ヒロコ、そんな2人の前にやってくる。
トシキ、既に緊張している。
そんなトシキを見かねてシンジロー、ヒロコに声を掛ける。
シ あのすみませんちょっといいですか?
ヒ ひゃっ・・・!(小声で)な、何ですか・・・?
○大学構内・学食(2日目・昼)
マサヤ、トシキ・シンジローの話を聞くも理解できていない様子。
マ ・・・お前らがLINE交換すんのはわかる。何で俺のまで教えてんだよ!
シ だってミヅキちゃんがいなくなったらまた1人で寂しくなるだろ?
マ ・・・余計なお世話だ!
ト でも今思うと真面目そうな人に良かったのかな・・・?
シ バカ! ああいうタイプが将来化けるんだって! ほら見ろよ!
シンジロー、マサヤ・トシキにLINEのトーク画面を見せる。
そこにはイメージとは真逆のLINE(小悪魔女子的なメッセージ)がミヅキから届いていた。
シ (自慢げに)な? なーんか彼女ビビッときたんだよな~
ト え?今日の夜に飯行くの? ・・・お前がぞっこんじゃん。
シ (少しテレながら)ま、まぁな・・・ あ、そうだお前らも来るか?
ト ごめん!俺ジムあるから・・・
マ 俺も・・・ ちょっと用事が
シ え? もしかしてデートですか?
マ 違えわ! ・・・何か人間界を知りたいみたいで・・・
ト (ニヤつきながら)へぇ~
トシキ・シンジロー、マサヤをイジる。
マサヤ、恥ずかしそうに昼飯を食べる。
○マサヤ・自宅近くのコンビニ(2日目・夜)
マサヤ・ミヅキ 夜のコンビニから出てくる。
ミヅキ、肉まんを両手に持ち嬉しそうに頬張っている
一方でマサヤは両手にパンパンのレジ袋を持ち、不服そうな表情。
ミ (幸せそうに)うっまーい! ねぇねぇマサヤ!やっぱり人間界っておいしい物ばっかりなんだね!
マ ・・・(ため息)
ミ ? どうしたのため息ついて? あ、君も食べたいのか~ じゃ半分こ・・・
マ (食い気味に)違ぇよ! 今月のバイト代が・・・(さらに大きなため息)
ミ ごめんて~ その代わり明日から家事するからさ!
マ というか、お前こんなに買う必要ねえだろ? いつまで居座る気だよ・・・
ミ んーと・・・ 「人間の血を吸えるまで」?
マ じゃあ今吸ってくれよ!
ミ え~ もうちょっとこの世界楽しみたいし~
ミヅキ、アセロラジュースを袋から出し、飲み始める。
マ ・・・トマトジュースじゃねえんだな。
ミ え? 吸血鬼ってそういうイメージなの?
マ ・・・まぁな。
ミ ふ~ん・・・
ミヅキ、公園を見つける。
ミ ねぇ、ちょっと休憩しようよ!
ミヅキ、マサヤを置いて公園へと走り出す。
マ ・・・おい!置いてくなよ!!
マサヤ、早歩きでミヅキを追いかける。
○ 公園 (2日目・夜)
夜の公園。キャッチボールをする大学生や酔っ払って寝る会社員など様々な人間が集まっている。
マサヤ・ミヅキ 2人で公園のベンチに座っている。
マサヤ、疲れたのか少しぐったりと座っている。
一方ミヅキは、公園の人々を観察し、不思議そうな表情を浮かべる。
ミ (深刻そうに)・・・ねぇマサヤ。
マ (怠そうに)ん。
ミ 人間も夜行性なの・・・?
マ ・・・・・・そういう奴らもいる。どっちかと言えば俺もそうだし。
ミ へぇ・・・ 教わった事と違うな・・・
マ ・・・そ。
ミ 人間って夜は休むから、夜に襲いなさいって習っててね。(悩む)ん~ じゃあいつ血を吸えばいいんだろ・・・
マ ・・・あのさ。お前が通ってる大学・・・「国立デーモン大学」だっけ?
ミ あ、覚えててくれたんだ~
マ ・・・あんだけ昨日言ったら覚えるっての。それでさ、卒業したらどうすんの。
ミ ん~ 魔界で仕事探してって感じ?
マ ・・・そこは俺らと同じなんだな。
ミ たま~~~に人間界に来る人もいるみたいだけど、かなりレア!
マ ・・・へぇ。
ミ マサヤはどうするの?
マ 俺は・・・まだ決めてない。
ミ じゃあさ・・・(小声で)魔界来ない?
マ 行くわけないだろ!
マサヤ、スマホで時間を確認。もう日付が変わる。
マ ・・・もう帰るぞ。
ミ え~ まだ居たいのに~
マ ・・・明日1限あんだよ。
ミ ・・・それは仕方ないね。
マサヤ、荷物を持ち立ち上がる。
ミヅキ、マサヤを見て何か思いつく。
ミ ! 持ってあげる!
ミヅキ、レジ袋を1つ持つ。
マ いいよ。重いだろ。
ミ いいの! わがまま聞いてくれたお礼! ほらっ!行くよ!!
ミヅキ、小さな子どものように楽しそうに公園を出る。
マサヤ、不安そうな表情。しかしどこか嬉しそうでもある。
○マサヤ・自宅アパート・階段前(2日目・夜)
マサヤ、自宅の部屋まで帰ってくる。
ミヅキ、先に公園を出たのにクタクタになって帰ってくる。
ミ 重いよ~ ねぇマサヤ~ 持ってよ~
マ お前が持つって言ったんだろ! ほら後もう少し!
ミ (頬を膨らませ)いじわる~
ミヅキ、文句をブツブツ言いながら玄関まで持ってくる。
すると、何者かがミヅキに声を掛ける。
? (心配そうに)あの・・・持ちましょうか?
ミ え!ありがとうございます!
○ マサヤ・自宅アパート・玄関前
マサヤ、玄関の前でミヅキを(なんやかんや)心配している
そこに、レジ袋を持ったミヅキとヒロコが現れる
ヒロコ、明らかによそ行き(というかデート)の服装である。
ミ ふぅ! ありがとうございました!!
ヒ ・・・いえ。これくらい何てことないですから・・・
マ え!?ヒロコさん!?(小声で)バカ!お前手伝ってもらうことないだろ!
ヒ 全然構わないですから・・・ ところで・・・その方は・・・
ヒロコ、マサヤとミヅキの関係を口に出して良いのか迷っている。
ミ あ!そっか!自己紹介してなかった!私はミヅキです!こう見えても吸血鬼・・・
マサヤ、ミヅキの手を強引に引き、家へ入れる
ヒロコ、少し驚く
マ すみません。コイツ変なこと言うクセがあって・・・ 失礼します!
マサヤ、扉を閉めようとする
ヒ あ、あの・・・ シンジローくんって良い子ですね・・・
マ ・・・ま、まぁ。あんなやつで良ければ仲良くしてあげて下さい・・・
マサヤ、扉を閉め部屋に入る。
ヒ 吸血鬼・・・!
ヒロコ、どこか嬉しそうに部屋に入る。
○ 住宅街(2日目・深夜)
トシキ、夜のトレーニングでランニングをしている。
すると、電信柱の陰でしゃがんでいる女性(リオ)を見つけ声を掛ける。
ト ア、アノ・・・ ダイジョウブ・・・デ・・・スカ・・・?
リ ・・・・・・・・・
トシキ、勇気を出しもう一度声を掛ける
ト あの!具合でも悪い・・・
リ(立ち上がって食い気味に)あの!この子知りませんか!?
リオ、スマホで探している女性の画像を見せる。その画像は何とミヅキ。
ト え!? この人知ってます! ミヅキちゃんですよね!?
リ ・・・はい。
ト ちょ、ちょっと待って下さいね!
トシキ、マサヤに電話を掛けようとする。
リオ、突然態度を豹変させ、嫉妬の表情を浮かべる。
リ ・・・あなた、ミヅキとどんな関係で?
ト え? まぁ友達の友達っていうか・・・
リ 嘘だ。きっとあなたはミヅキの彼氏であんなことやこんなことも・・・ 許せない・・・
リオ、トシキに近づいていく
ト お、落ち着いて下さい! 僕は本当に彼氏じゃ・・・
リオ、トシキを血を吸い襲う。
トシキ、住宅街に響くほどの悲鳴を上げ、マサヤの家に逃げることに。
リオ、トシキを追いかける。その姿を様々な人が見ており、スマホで動画を撮られている。リオは気付いていない。
○ マサヤ・自宅アパート・リビング(2日目・夜)
マサヤ、ソファーで横になりながらスマホを見る。
「ようかいせつチャンネル」のアーカイブを観ようとする。しかし都合により生配信が中止となっていた。スマホの画面を消し脱力する。
ミヅキ、シャワーから戻り、気持ちよかったのか上機嫌でリビングへ。
ミ あぁ~ 気持ちよかった~ あれ?アーカイブ観ないの?
マ ・・・中止だって。
ミ ほ~ん
マ っていうかあんまり吸血鬼だってこと言うなよ!!
ミ えぇ~ なんでダメなの~?
マ 何でって考えれば・・・!
マサヤ、ミヅキを叱ろうとする。
そのタイミングでインターホンが鳴る。
ミ ? お客さんかな?? はーい
ミヅキ、モニターを見る。
ミ え!? トシキ君!?
マサヤ、慌ててモニターを見る。
そこには、血だらけのトシキの姿が。
ト マサヤ・・・ た、助けてくれ・・・
マサヤ、慌てて玄関へ向かう。
○ マサヤ・自宅アパート・玄関(2日目・深夜)
マサヤ、急いで扉を開ける
トシキ、何とか立っているが相当辛そう。
マ トシキ!? お前何があったんだよ!!
ト だ、大丈夫・・・ 大丈夫だからさ包帯だけ借りて良いか?
トシキ、2人に会えて安心したのか床に倒れ込む。
マ いや病院行けって!
ト 今やってねえだろ・・・ それに「噛まれた」なんて信じて貰えないしさ・・・
ミ え?誰に噛まれたの?
ト それは・・・
リ 私だよ。
リオ、3人の前に現れる。不気味な笑みを浮かべている。
リ あ!ミヅキこんなところにいたんだ~ ・・・って横にいる男はだ~れ?
ミヅキ、突然現れたリオに驚き声が出ない。
リ あ、そっか~ 私には言えない関係か~ じゃあ・・・ 襲っちゃお・・・!
リオ、マサヤを襲おうとする。
ミ お姉ちゃんやめて!!
マサヤ、トシキ 固まる。
マ ・・・え?
○ マサヤ・自宅アパート・リビング(2日目・深夜)
リオ、平身低頭で3人に謝罪。
リ ほんっとうに申し訳ありませんでしたーー!!
トシキ、ミヅキから手当を受け横になっている。
マサヤ、あぐらで座り、リオの話を聞いている。
マ ・・・俺に謝られても。
リ あ・・・ あの・・・ 襲ってしまいすみませんでした・・・
ト いや・・・ 僕は別に・・・
リ 私・・・ ミヅキが心配になってしまって・・・ 人間界に来たけど、どこにいるかわからなくて・・・ それで・・・それで・・・私・・・
リオ、泣きそうになっている。
ミ お姉ちゃん!私は大丈夫だよって連絡したじゃん!
リ でも、でも~~
リオ、泣き出す
ミ もう・・・ マサヤ君、トシキ君ごめんね。お姉ちゃん昔から心配性で・・・
マ まさか・・・ 最近現れた吸血鬼って・・・
ミ たぶん・・・
リ (泣きながら)ほんとうにごべんなさい・・・
リオ、落ち着くためにアセロラジュースを一口飲む。
マ ミヅキ、噛まれた人間って・・・
ミ 大丈夫大丈夫! このくらいなら血はすぐ止まるし、何日か腫れるくらいかな?
マ あ、そうじゃなくて噛まれた人間って吸血鬼になるとか・・・
ミ それは無い!・・・よね?
ミヅキ、リオを見る
リオ、涙目でうなづく
ミ 今の私たちはそこまで強くないからね~
ト よ、よかった・・・ あ、じゃあ俺はこれで・・・
トシキ、起き上がり帰ろうとする
マ お前、今日は泊まってけよ。
ト いや、いいんだ・・・ 明日も講義あるし・・・
リ あの・・・ 本当にごめんなさい・・・
ト (照れて顔を真っ赤にしながら)・・・気にしてないんでっ! じゃマサヤまたな!!
トシキ、猛スピードで家へ帰る。
ミ ・・・? トシキ君何かあったのかな?
マ ・・・・・・さあ。
リ ・・・あの、私もそろそろ帰ります。お騒がせしました。あ、そうだミヅキ・・・
リオ、ミヅキを呼び寄せ、マサヤに聞こえないようひそひそ話。
ミ ・・・?
リ 実習上手くいきそう?
ミ う~ん。何とかなるよ!たぶんだけど。今はもう少し人間界を楽しむつもり!
リ ・・・ミヅキ。人間界は怖い世界でもあるからね。気をつけてね。
ミ うっそだ~! みんな優しい人ばかりだよ?
リ ・・・そうだといいけど。 ・・・じゃね。
リオ、一瞬で姿を消す。
ミ マサヤ今日はごめんね!
マ いや・・・ 別に気にしてないし・・・
ミ 疲れたっしょ! もう寝よっか!
マ ・・・おう。
2人、寝る準備をする。
○ ヒロコ・自室・机
全体的に暗く怪しい雰囲気で包まれた部屋。ヒロコの家。
ヒロコ、一連の流れを聞いていた。(というより聞こえていた。)
ヒ ・・・やっぱり。
ヒロコ、日記帳のようなノートに何かを書き溜めている。
LINEが届く。シンジローから。「今日はありがとうございました」的な返信。
ヒロコ、小さなため息をつき、小悪魔女子が送りそうなLINEで返す。
すぐにシンジローからスタンプ。小さく微笑む。
○ マサヤ・自宅アパート・リビング(3日目・朝)
マサヤ、起床しリビングへ。
ミヅキ、何かを探している。
マ ・・・何探してんだよ。
ミ あ、おはよ・・・ マサヤ~ 私の学生証知らない?
マ 知らねぇよ・・・ 昨日どこかで落としたんじゃねえの。
ミ お~い 出てきてよ~
ミヅキ、学生証を探していると、偶然テレビのリモコンを押してしまう。
テレビが付き、朝のニュースが流れている。
アナ 続いては特集です。まずはこちらの動画をご覧下さい。
リオがトシキを襲っている動画が流れる。
アナ こちらは昨晩「吸血鬼」と見られる怪物が人を襲う現場を捉えた動画でした。このように「怪物による被害」が多発しており・・・
マサヤ、慌ててテレビを消す。
マ (ミヅキを心配して)・・・・・・これって昨日の
ミ ・・・うん。
マ 「怪物による被害」って・・・
ミ (興奮して)ね!テレビに出たって凄くない!? さすがお姉ちゃんだなー! ああ見えても魔界では優秀な吸血鬼で・・・
マ (呆れて)お前は能天気だな・・・
ミ へ? なんで?
マ ・・・もういいわ。大学行ってくる。
マサヤ、大学へ向かう。
ミヅキ、笑顔でマサヤを見送るも居なくなった途端どこか寂しくも悔しくも表情を見せる。人間界で「吸血鬼=悪者」となりつつあるのを感じとっている。
○ 大学構内・玄関前(3日目・午前中)
マサヤ、大学に到着。
大学では、自治会サークルが学生にポーチに入った何かを配布している。
学生の列も出来ている。
女 ただいま無料で「吸血鬼対策セット」を配布していまーす! あ、お兄さんもぜひ!
マサヤ、無理矢理受け取らされる。
中身を見ると、小さなボトルに入った水(聖水の代わり)・十字架・ニンニクチップ
マサヤ、いらないのはわかっているもののとりあえず受け取りその場を立ち去る。
マ ・・・・・・いらねぇな・・・
○大学構内・教室(3日目・午前中)
大学の講義があり、3人掛けテーブルに横並びで座るマサヤ・シンジロー
シンジロー、LINEの送信に夢中。目線もスマホだけに集中している。
マサヤ、「吸血鬼対策セット」をまだ持っている。ずっと見たまま。
周りを見渡し始める。まだ暑い時期にも関わらず長袖が多い。
マ ・・・・・・なぁ。
シ ん。
マ 長袖多くね?
シ ・・・・・・お前ニュース見てねえの? 吸血鬼対策には長袖が効果あるんだと。
マ ・・・はぁ。
マサヤ、再び見渡す。ネックウォーマーまでする学生もいる。
半袖なのはマサヤとシンジローくらいでかなり少ない。
マ ・・・俺ら浮いてるよな。
シ ・・・・・・。
マ おい、無視すんなよ
シ (食い気味に)うるせぇなぁ! 今、ヒロコ・・・さんとLINEしてんだよ!邪魔すんな!
マ ・・・・・・ごめん。
微妙な空気が2人に流れる。
マサヤ、シンジローをチラ見する。
シンジロー、左手首に包帯を巻いている。やや赤く(というかピンクに)見える。
マ なぁ、シンジロー、お前左手・・・
マサヤが聞こうとすると、タイミング悪くトシキがやってくる。
ト よ!遅れるとこだったわ~ まだ教授来てない?
マ ・・・ああ。
ト 良かった~ この講義出席厳しいから・・・
マ (食い気味に)お前、何ともないのか!?
ト え? おう! 吸血鬼なんて怖くねぇって!
教室が一瞬静寂に包まれる。トシキに視線が集中
マ (軽く頭を叩き)バカ!声でけぇって!!
マサヤ、平謝り、再びにぎやかな教室のムードとなる。
ト 今さっきもさ、学生部に色々聞かれてさ~ 噛まれた跡見せろとか、後遺症はどうってあるわけ・・・
トシキ、シンジローの包帯に気付く。
ト ? お前左手どうした?
シ ・・・・・・やけどだよ。
マ は? やけど?
シ ・・・・・・昨日、バイトでやらかした。別にたいしたことねぇよ。焼印が当たっただけだ。
ト おいおい・・・ 結構重症だってそれ・・・ なぁ、ちょっと見て良いか?
シ いいって・・・!
シンジロー、トシキが見ようとするのをやや乱暴に拒否。
トシキ、それでもシンジローの左手を見ようとする。
マサヤ、「吸血鬼対策セット」を再び見る。だんだんとミヅキの事が心配になる。
ト ・・・マサヤ? 何ボーッとしてんだよ?
マ あ、ごめん・・・
ト ・・・・・・まぁ、そうなる気持ちもわかるよ。でも俺らはミヅキさんたちの味方だからな。なぁ?お前もそうだろ??
シ ・・・・・・おう。別に悪い奴らじゃないしな。
マサヤ、2人に軽く会釈するもまだミヅキのことが心配。
トシキ、シンジローの油断を突き、再び左手を見ようとする。
○ マサヤ・家への帰り道(3日目・夕方)
マサヤ、家へ帰っている。
周りはすっかり吸血鬼対策モード。十字架を持ち歩く人もいれば、玄関にニンニクを吊してある家も多い。
小学生男子、話をしながらマサヤの前を横切る
男 なぁ! 吸血鬼捕まえたらお金貰えるって!
男 マジで!? 見つけるしかなくね!!
マサヤ、ミヅキが心配になり家へと急ぐ。
○ マサヤ・自宅アパート・リビング(3日目・夕方)
マサヤ、慌てて帰宅。
しかし、ミヅキの姿はない。
マ ・・・! おい! ミヅキどこだ! いるんだよな!? 返事しろ!!
マサヤ、家中を探す。しかし、いない。
ベランダに飛び出す。するとヒロコの部屋から苦しそうなミヅキの声が聞こえてくる。
ミ ・・・ちょ! やめてよヒロコさん・・・!
マサヤ、ベランダで固まる。
ヒロコがミヅキを襲っている様子が目に浮かんでしまう。
○ マサヤの想像
ヒロコ、不気味な笑みを浮かべ、ミヅキを隅々まで調べている。
ヒ へぇ・・・ ほんとに吸血鬼なんだぁ・・・
ミ や、やめてよぉ・・・ 助けて・・・ マサヤ君・・・!
○ マサヤ・自宅アパート・ベランダ(3日目・夕方)
マサヤ、ヒロコの部屋へ突撃することを決意。
マ ・・・!
マサヤ、ヒロコの部屋へ一目散に駆けつける。
○ ヒロコ・自宅アパート・玄関前(3日目・夕方)
マサヤ、ヒロコの部屋のインターホンを連打。
ヒロコがインターホンに出る。
ヒ ・・・はい。
マ あの! 古木です!
ヒロコ、ドアを開ける。
マ すみません! そちらにミヅキさんいますよね! 確認してもいいですか!
ヒ ど、どうぞ・・・
マ 失礼します!
マサヤ、リビングへ急ぐ。
その間もミヅキの悲鳴が聞こえる。
○ ヒロコ・自宅アパート・リビング(3日目・夕方)
マサヤ、ドアを開ける
マ ミヅキ!! お前大丈夫・・・
ミヅキ、TVゲーム(ゾンビ系)をやっていただけ。
ミ ヒ、ヒロコさん~ このゲーム怖い・・・ってなんでマサヤいるの?
マサヤ、安心してへたり込む。
部屋をよく見ると「ようかいせつチャンネル」で見たことある小物がちらほら。
マ ・・・え?
○ ヒロコ・自宅アパート・リビング(3日目・夕方)
マサヤ・ミヅキ ヒロコからお詫びとしてお菓子(ミルク寒天)とコーヒーを出される。
ヒ ミルク要りますか。
マ いえ・・・ ブラックでも全然・・・
ミ おかわり!
ヒ ・・・わかりました
マ おい。人の家だぞ・・・
ヒロコ、一旦席を立つ。
ミ あのね!ヒロコさん、すっごく私たちのこと詳しいんだよ! ほら!本も借りちゃった!
ミヅキ、嬉しそうに「怪物図鑑」をマサヤに見せる。
マ ・・・まぁ、部屋見たらわかるよ。
ヒロコ、戻ってくる。お盆にはミヅキがお替わりで頼んだコーヒーと、自分用のホットミルク。
ヒ ・・・まさか視聴者がこんな近くにいたなんて・・・ ありがとうございます。
マ いや、僕の方が驚いてます。「ようかいせつチャンネル」ってここで撮影してたとは・・・
ヒ ・・・・・・勝手にミヅキさんをお借りして申し訳ありませんでした。
マ あ~・・・ それはこいつが勝手に外へ出たのが悪いので・・・
ミ だってぇ~ 暇なんだも~ん
マサヤ、ミヅキの頭を掴み強制的に謝らせる。
ヒ 「吸血鬼」のニュースを見て彼女が頭をよぎって・・・ 心配してたら彼女に会ったので、真相を確かめたくて・・・ つい・・・
ミ そうそう! 吸血鬼のこと全部話したの! それでなんやかんやあってゲームしてたらマサヤが来たって訳!!
マ ・・・・・・こいつを部屋に呼ぶのは全然良いんです。ただ一言連絡を・・・
ヒ ・・・すみませんでした。
3人、沈黙。
マ ・・・・・・あの、なんで「ようかいせつチャンネル」を作ったんですか?
ヒ ・・・それは・・・ 私が妖怪とか怪物が好きっていうか・・・ もっともっと魅力を人間に知ってもらおうと思いまして・・・
マ なるほど・・・
ヒ 今だって吸血鬼が血を吸っただけで大事になってるじゃないですか。自分の仕事をしただけでどうして嫌われなきゃならないんだって思うとやるせなくて・・・
ヒロコ、ホットミルクを一口飲む。
何か思いつく。
ヒ ・・・! ミヅキさん! 声だけでも良いので今日の生配信出てくれませんか!?
ミ えっ!いいの!?
ヒ 吸血鬼の実態を知ってもらえば、人間達が騒がなくなりますよ!
ミ 確かに!!
マ ・・・でも、そんなに上手く行きますかね。
ヒ ・・・私に任せて下さい。
ミ じゃ、準備してこよ~っと!
ミヅキ、(声だけ出演なのに)メイクをしにマサヤの部屋へ戻りに立ち上がる。
服の内ポケットから学生証が落ちる。
学生証は床に落ち、学生証の裏面(カードゲームみたいな柄の方)が上になっている。
ヒロコ、学生証に気付く。
ヒ ・・・学生証落としましたよ。
ヒロコ、落ちた学生証の辺りを指さす。
ミヅキ、一旦戻り、拾い喜ぶ。
ミ え? あ~!!なんだ~ポケットに入ってたのか~ ありがとうございます!
ミヅキ、ご機嫌でマサヤの部屋へ。
○ 大学構内・ベンチ(4日目・午前中)
大学にあるベンチに3人並んで座るマサヤ・トシキ・シンジロー。
シンジローはまたもやヒロコにLINE。昨日よりも血眼になっている。
ベンチの反対側に置いてあるゴミ箱には「吸血鬼対策セット」が大量に捨ててある。
外を歩く学生も半袖が多い。(何人かは長袖はいる)
ト ・・・昨日は何だったんだろうな。
マ ・・・・・・夢でも見てたんじゃね。
ト 「ようかいせつチャンネル」ってすげぇな。な!シンジロー!
トシキ、ヒロコが動画制作者であることを知っているかのようにシンジローに話しかける。
シ や、やめてくださいよ・・・
ト ・・・お前さ、なんでさっきから敬語なんだよ。
シ これは・・・ ヒロコさんが「就活で使うから今のうちに」って・・・
ト ・・・なんか気持ち悪ぃな!
シ べ、別にいいじゃないですか!!
マサヤ、じゃれる2人を見て穏やかな表情を見せる。
ト ・・・マサヤ、お前ってそんな顔すんだな。
マ え? ま、まぁな・・・
○ マサヤ・自宅アパート・リビング(4日目・夜)
マサヤとミヅキ、ソファーで横並びに座っている。
ミヅキ、「ようかいせつチャンネル」に自分が出た動画(昨日の生配信アーカイブ)を見て嬉しそうな表情を浮かべる。
ミ ねぇ!見て見て!再生回数すごいよ!!
再生回数はずっと増え続けている。
マ ・・・ほんとすげぇな。
ミ だよね! 私もヒロコさんに教わってYouTubeやろっかなぁ~ ね!マサヤも一緒に出ようよ!!
マ ・・・やだよ。
ミ ほんとは出たいんでしょ~
ミヅキ、マサヤにいつも以上にダル絡みする。
ダル絡みしている内に、スマホに手が当たり、画面がメールの確認画面になる。
画面には「実習短縮のお知らせ」の文面が。大きな赤い字で「明日までに戻れ!」と書いてある。
マサヤ、目にしてしまう。
マ ・・・え?お前、これって・・・
ミ あ! 人のスマホ勝手に見ないでよ!!
マ 「明日までに」って・・・
ミ ・・・・・・あーあ。感動の別れ方考えてたんだけどな~ ごめんマサヤ! 帰ることになっちゃった!
マ ・・・そうか。
ミ え? 何その反応! あ、そっか!いなくなると寂しいから強がってんでしょ!!
マ ・・・違えよ。・・・明日から静かに過ごせるなって思うと嬉しくてよ。
ミ (わざとらしく怒ったように)ひどーい!! もういいよ!!
ミヅキ、頬を膨らませながら自室へ。
マサヤ、何かを思い出したようにミヅキの部屋の前へ。
○ マサヤ・自宅アパート・ミヅキの部屋の前(4日目・夜)
マサヤ、扉をノックする。
ミ あ!ちょっと開けるの待って!
マ ・・・あのさ。お前吸血鬼なんだよな。
ミ 当たり前じゃん!
マ ・・・実習って「人の血を吸うまで」が期間なんだよな。
ミ そう・・・だったかも。
マ (1呼吸)・・・俺の血で良かったら吸ってくれないか。
ミ は!?
マ ・・・変なこと言ってごめん。
ミ ・・・別に謝る事じゃないでしょ!てか何でそんなこと思ったの?
マ ・・・・・・お前さ、お姉さんみたいな吸血鬼になりたいんだろ?
2人、ドア越しではあるが無言の間が生まれる。
ミ ・・・・・・いいよ。入って。
マ ・・・・・・おう。
○ マサヤ・自宅アパート・ミヅキの部屋(4日目・夜)
マサヤ、部屋の真ん中で横になっている。
ミヅキ、マサヤの横で座っている。
マ ・・・・・・本当に吸血鬼にはならないんだよな?
ミ うん!それは安心して! あれ?ビビってんの?
マ ・・・お前が言うな!!
ミヅキ、深呼吸。血を吸う決心をする。
ミ ・・・・・・マサヤ。短い間だったけどありがとね。
マ ・・・・・・こちらこそ。
ミ ・・・立派な吸血鬼になってまた人間界に遊びに来るから待っててね!
マ ・・・・・・がんばれよ。
ミ ・・・・・・ありがと。
ミヅキ、マサヤの首元に顔を近づける。
ミ ・・・・・・・・・あとさ、
マ いいから早く吸え!
ミ ・・・・・・・・・はーい。
ミヅキ、首元を優しく噛みつき、血を吸い始める。
○ マサヤ・自宅アパート・ミヅキの部屋(5日目・朝)
マサヤ、目が覚める。少しだけ首元が赤く腫れており痛みもある。
マ ・・・痛ぇ。
マサヤ、周りを見渡す。もちろん部屋には一人だけ。
机にミヅキが借りていた「怪物図鑑」と置き手紙が。
「ヒロコさんに返しといて」とのこと。
マ ・・・・・・ったく。
マサヤ、ヒロコの部屋へ向かう。
○ ヒロコ・自宅アパート・玄関前(5日目・朝)
マサヤ、インターホンを押す
ヒロコ、扉を少しだけ開けて応対する。姿は見えず声だけが聞こえている。
マ おはようございます。 あの・・・ これミヅキが借りてた本なんですが・・・
ヒ ・・・ありがとうございます。あれ? もしかしてミヅキちゃん魔界に戻りました?
マ え? まぁ・・・はい。 昨日話したんですか?
ヒ 少しだけですが。 ・・・私もお渡ししたい物があるので中へどうぞ。
マ ・・・? わかりました。
○ ヒロコ・自宅アパート・玄関
マサヤ、玄関に立って待っている。
壁に貼ってあるカレンダーをチラ見。今日の10時から「シンジロー♡」とピンク文字で書かれている。よく見ると「コウタ♡」「キヨシ♡」など他の名前もちらほらある。
マサヤ、何かを察知しわざとらしく理由をつけて帰ることに。
マ あ! ヒロコさんすみません・・・ ちょっと用事を思い出して・・・ また今度受け取りますね! では・・・
マサヤ、左腕に何かチクリと刺された感触。
マ ・・・ん?
左手甲を見るとハートの紋章が。
催眠術に掛けられたように立ったまま動けなくなり、目もうつろに。
背後から、いつものジャージ姿とは打って変わってセクシーな衣装を身にまとったヒロコが現れる。ヒロコの背中からは黒い羽根が生えている。
ヒ ごめんねマサヤ君。私、君に嘘ついてた。私もミヅキちゃんと同じ「怪物」なの。
マ ・・・・・・
ヒ ま、「学科」は違うんだけどね!(耳元でささやきながら)ね、仲間になってくれるよね?
マ ・・・・・・もちろんです。ヒロコ様。
ヒ (いたずらっぽく)ふふ! 人間ってちょろ~い!!
マサヤ、玄関に立ったまま。
ヒロコ、高笑いしながらリビングへ。
ヒロコの正体は・・・。
僕の隣のモンスター 続く・・・?
僕の隣のモンスター あじふらい @ajifu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます