第4話 Wicked day of the witch ①

2022年4月7日 07:30頃 とある家にて


汰百たいと、朝だよ〜!」


「んんぅ…そうかあ…眠い…おやす…」


「もー今日は入学式だよ〜、最初が肝心なんだから早く起きて、かっこよくいかなきゃ〜」


姉の透花とうかの声で目が覚めた。カーテンの隙間からからは朝日が漏れている。


「あ!!そうだった!!やべぇ!!」


「あと30分で学校行かなきゃだよ〜!」


「なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ!!」


「だって、汰百の寝顔が可愛くてさ〜」


姉は所謂、ブラコンだ。ブラザーコンプレックス。俺の事を溺愛している。別に嫌な訳では無いが、なんというか高校1年にもなると、少し…いやかなり恥ずかしい。


「もー、透華はうるせーな朝から。」


「ご飯できてるよ〜」


俺は部屋から台所へ降りた。

料理は透華が作っていた。というよりも、作るのが透華しかいないのだが。

両親は、俺が幼い頃に亡くなったらしい。顔写真も無ければどんな人かもわからない。

1年前までは、親戚の家で過ごしていたが、透華が俺を連れていつの間にかここに住んでいた。


「今日の朝はフレンチトーストで〜す」


透華はニコニコと、フレンチトーストとホットココアを食卓に並べた。


「せーの、いただきます!」


「…いただきます」


「入学式、いけそうにないけどごめんね〜。バイト休めなくてさ〜」


透華はこちらに引っ越してきた頃から近くのコンビニでアルバイトをしている。お金の面については苦労はしていない。親戚の叔母さんから毎月仕送りも来ており、俺の学費も親戚の叔母さんが、支払ってくれていたようだ。


「いいよ来なくても、別に。」


俺は来ない方が嬉しいという気持ちを抑えて、返事をした。


「も〜、もっと悲しんでよね!」


俺はフレンチトーストを食べホットココアを一気に飲み干し、洗面所へ向かった。


────15分後


「汰百!先に私出るから、鍵を閉めてってね!入学式楽しんで〜!!」


俺はバタバタと制服を着て、髪を整え、カバンを持ち


「おっけい!俺ももう出るから!!!」


俺は急いで玄関に向かい、靴を履いた。

焦れば焦るほどなかなか靴を履けずにさらに焦って


「ああ!!くそっやべぇ遅れる!!!」


「落ち着いてよね〜、行くからね!」


ばたばたと靴を履き終え、外に出て鍵を閉めた。


ガチャ


透華はコンビニへ、俺は学校へと急いで走っていた。俺は携帯を取りだし、同じ高校に進む友人にメッセージを「ダッシュでいくから待ってろ!」と待ち合わせしている友人2人に飛ばした。


───5分後


「汰百!待ったぜ!遅せぇよ!」


体格がよく、いかにもスポーツ男子です!と言わんばかりの見た目の少年。


「本当、相変わらずだねっ」


大人しそうで、優しい印象の少年。


「はぁ…はぁ……すまねぇ……寝坊しちまった。」


寝坊して、走ってきた少年。


「よし、走ってくぜ!」


「はぁ…そうだな……ふ……」


俺の2人の友人。狩屋 拓真かりやたくま荒巻想あらまきそう

狩屋拓真は、小学生からの中だ。スポーツ男子という言葉がピッタリのリーダー気質で、皆から慕われるタイプの人間だ。運動神経も抜群で、キックボクシング大会で優勝していた事もあった。

もう1人、荒牧想は保育園の頃からの付き合い。いわゆる爽やかイケメンってやつだ。ジェラシーを感じる。以上。


「よしっ、なら競走だね」


爽やかな笑顔で想が、言い


「用意!オリャァア!」


拓真は、そういうと一目散に走り出し


「ま…まてよ!ドンだろ…そこは」


俺は、汗ダラダラで拓真に続き走り出した。


「僕も行くよっ」


想もあとを追い、走り出した。


────7:59 学校校門前


「はぁ…はぁぁ…もう走れねぇよ」


「汗ダラダラだぁ……」


「俺が1番だぜ!!」


3人は今日入学の東京都立零上学園とうきょうとりつれいじょうがくえんへ着いた頃だった。

そこへ、スーツを着て背が高くて短髪の体格のいい、見るからにして熱血体育教員であろう男が


「おい!!ギリギリだぞ!!急げ!!!遅刻すんぞ!!」


すると、その男の隣にいたスーツを着て後ろでショートヘアの20代前半くらいの、大人しそうで丸メガネの女が起伏のない口調で


倉野くらの先生、この子達は新入生なので案内とIDカードの発行をお願いします。」


「ぁああー!お前ら新入生か!!にしても遅刻すんぞ!!」


するとこちらの、熱血野郎予備軍の拓真が


「先生!でもまだ59分です!遅刻じゃありません!!そんなこと言う前にはやく案内お願いします!!!」


「っなんだと!!!5分前行動じゃあ!!!」


と、威勢よく言っ放った時だった


キーンコーンカーンコーン


汰百、想は初日から何してくれいるんだと言う気持ちを前面に押し出した表情で拓真を無言で見つめた。


「……」


「……」


それを見ていた熱血教師倉野は、それ見た事かという勝ち誇った表情で


「チャイム鳴ったぞおおおおおお急がんかァァァァ!!!」


怒声が響き渡った。

その隣で至って冷静に、倉野の怒声をなんの気遣いもなく無視し


「では新入生の皆様はIDの発行を行うので名前を教えてくれるかしら?」


「はい!!!!狩屋拓真です!!趣味は筋トレです!!」


拓真は勢いよく返事しID発行を行った。


「お前らも早く来いよ!!……ち…遅刻すんぜ…!」


ボケているつもりなのか、拓真は昔から破天荒な部分が目立つ。


「もうしてるよ」


と、想が、つぶやき俺たちも続いてID発行を行なった。


「では、生徒会の先輩方に案内してもらってください。」


「了解しました!!先生!!」


と拓真が返事をし、俺達は生徒会の先輩について行った。



──────3人がそれぞれクラスに向かった頃。


「倉野先生!視鳴しな先生!」


と校門前の教師2人に1人の生徒が


「先程の3人の案内は終わりました!」


「よーし、ご苦労だったな!新入生の案内も終わった事だし…他の生徒会の皆にも教室に戻るよう伝えといてくれ!」


「…あ、えーとその、まだあと1人来ていないんです。」


「ほおる誰だ?…全く今年の1年はどういう事だ?」


倉野がそう言うと、隣の丸眼鏡教師の視鳴が


「倉野先生、ID認証システムアプリを確認してください。1年1名、2年2名、3年0名。現時点で学校に登校していない生徒です。」


倉野は少しうろたえた口調で


「あ、ぁ、体育教員で、あまり機械は分からなくてなぁ……」


「登校していない生徒のうち2年の2名は病欠の連絡が届いています。なので本日は1名、1年1組1番 藍上琉歌さんのみになります。」


視鳴は、相変わらず起伏のない口調で倉野に説明をする。


「連絡を今すぐにするぞ!ほんとに今年の1年は!!」


と倉野が言ったと同時に


駐車場に、1台の明らかに高級車であろう白の長めの車が入ってき、そのまま校門前で停車した。


ガチャ


「すいません、遅刻しました。朝方まで私用がありまして。」


と黒髪で長めの髪の毛を後ろで結んでおり、女優のような顔立ちをした少女が後部座席から降りてきた。


「な、なんだと!朝方?なにをしていたんだ!?…ともかく、連絡をよこせ!そもそもここは校門前だ、駐車はあちらでお願いします!!」


「うわ…声大きいすぎ。たかが数分で連絡するなんてめんどうじゃない…」


と琉歌という名の少女が呟いた時、運転席側から物腰の柔らかそうな男が降りてきて


「申し訳ございません。わたくし堀田裕二ほりたゆうじと申します。琉歌ちゃ…琉歌様のサポートをしております。車もすぐに停め直しますので。」


「裕二さん、謝らなくていいってー、無事に着いたんだし。じゃあ今日は迎え要らないから。」


すると熱血教師倉野は


「そういう問題ではない!!!!学校というのはな!!!!」


そう言っている倉野を他所に視鳴は


「では藍上琉歌さん、ご入学おめでとうございます。IDカードを発行するのでこちらに来てもらえるかしら?」


「了解しました!」


「視鳴先生!!もっと厳しく言ってください!!」


「倉野先生、この時代、無闇に怒るだけでは何の解決にもならない事が多いんです。見て聞いて考えて、その子の主張を最低限尊重し次に繋がる解決策を見つけていくんですよ。」


「むむぅ…」


そのやり取りを聞いた、琉歌は


「物分りのいい先生がいて嬉しいです」


と、倉野を横目で見ながら、笑っていた。


「では、藍上琉歌さん、生徒会の先輩方に案内をしてもらうからID発行をします。」


顔を真っ赤にして爆発しそうな顔をした倉野をよそに、ID発行が終わり、生徒会の生徒の1人が琉歌を連れて校内へ入っていった。

視鳴は倉野に対して


「倉野先生も大変ですね。私は誰かのために怒ったり、腹を立てたり、そういう事が出来る先生が羨ましかったりします。」


そう言われた倉野は、なんだかなんとも言えないような表情をして、先程とは声色も声量も小さく


「視鳴先生…あんまりからかうのはやめてくれよ…」


「からかってはいませんよ。ただ本音が漏れただけです。」


そう言って、その2人はそのまま校門のゲートを閉じ入学式の準備へと向かった。





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