7.本当の友達なら

「本当の友達ならさ、ここは頑張れって鼓舞してくれると思うし、元気になった今こそ積極的に関わってきてくれるものなんじゃないか?」


 ある日、そう江田島から言われた。


「そうかしら? 絵美はいつも私を気にかけてくれて、優しく笑ってくれたわよ。もう二年くらい連絡が無いけど、元気かしら?」

「そう思うなら、自分から連絡してみたら?」

「そうね。でも──」


 私は、病気療養が一段落してから、ある違和感を抱いていた。就職し、世間に揉まれていく内に、人間の本音と建て前が見える様になってきていたのだ。


 絵美から連絡は一向に来なかった。しかし、私も連絡をしなかった。私は確かめる事が怖かったのだ。絵美の真意を。絵美の本当の想いを。


 私が病気療養している時、絵美はいつも微笑みをたたえて私に甘い言葉を囁いてきた。


「頑張らなくて良いのよ。そう、無雲は頑張らなくて良い……」


 私は、三十代半ばでの就職活動に大分苦労したし、若い時にもっと積極的に病気と闘って、早く克服していれば良かったと痛感していた。


 あの時、頑張らなくて良い。世間など知らなくても良いと言われて、私は頑張る事を放棄する事を正当化していた。しかし、それは私を確実に就職困難へと導いていた。江田島はそっと私の就職活動を見守ってくれていたが、もっと早く頑張っていたら、ここまで就職が難しくなる事もなかったろうと思うのだ。

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