4.藤田の浮気

 藤田は、私と付き合っている最中に他の女に手を出した。私は、藤田の旅行の予定を他の女から聞いたのだ。


「最近藤田さんと連絡が取れないんだけど、どうしたんだろう。具合でも悪いのかしら」

「あら、知らないの? 藤田君なら友達と旅行に行くって言っていたわよ?」

「何故、それをあなたが知っているの?」

「だって、私、藤田君とは毎日連絡を取り合っているし」


 そう言って、沙也加さやかは意地悪く口端くちはを上げた。


 そうして聞いたのだ。藤田が手を出してきた女達の事を……。


***


「藤田と付き合ったのが絵美じゃなくて良かったわ。あいつは最低な男よ」

「それ、絵美に言っちゃ駄目よ?」


 共通の友人の芳子よしこはそう言ったが、私にはそれが理解できなかった。私は、藤田の浮気に苦しめられるのが絵美ではなくて良かったと思っていたのだ。


 女の扱いが上手い男は、他の女に対してもそうなのだ。誰にでも甘い言葉を囁き、そして寝る。その流れをもスマートにしてのける男、それが藤田だった。もちろん、沙也加とも寝たようだった。


 絵美はいつの段階まで藤田に恋をしていたのだろう。それを確認する事は無かったが、叶わなかったが故に見る夢というものはあるのだ。


 絵美にとって、藤田はいつまでもスマートでかっこいい男だったのではないかと思う。


そして私は、専門学校卒業の間際に体調を崩し、長い闘病生活に入った。

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