2.藤田という男
私と絵美は、当時はまだあまり一般家庭には普及していなかったパソコンを持っていて、インターネットも使っていた。私と絵美は音楽の趣味も同じで、同じアーティストのファンサイトを通じ、そのオフ会に度々出向いていた。そして、その男と出会ったのだ。
彼のウィットにとんだ会話や、スマートな身のこなしに、私と絵美はすぐにのめり込んだ。同じ男を好きになってしまったのだ。藤田は、まだ男慣れしていない女子高生二人を虜にするには十分過ぎる魅力の持ち主だった。
「
藤田は、私に積極的に働きかけてくるようになった。親友同士が同じ男を好きになっている。その状況の危うさに気付かなかった私は、瞬く間に藤田に転がされていった。
***
「ごめん絵美。藤田さんから告白されて付き合うようになった」
そう、絵美に宣告したのは高校二年のある夏だった。
「そう。無雲だったら許せる。幸せになってね」
絵美は、この時も怒らずに微笑みをたたえてそう言った。年若かった私は、絵美のその微笑みをそのままに受け止め、彼女は理解してくれたのだ、とそう解釈した。
しかし、それは私の思い込みであり、大いなる誤解であったのだと後々気付く事になる。
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