第13話
どのようなことがあって、どう感じていたのか伝えることが目的なのに、記憶を思い出そうとしてみたものの、ほとんどそこでの記憶がないのが面白い。殴られたのか、怒鳴られたのか、それすらも。
だから記憶のある部分から書こうと思う。
結果として、僕は、連れ戻されてからその日の内に逃げ出した。今考えてみても、ものすごく巧妙に逃げ出したと思っている。
風呂に父親たちが入っている隙に逃げ出したのだ。その方法は窓からである。ベランダから逃げ出すと窓が大きく鍵が開いてればすぐにバレてしまう。もちろん、玄関からも一緒だ。
だから僕は靴をはいて、子ども部屋として使っていた場所の小さな窓から抜け出した。そこには柵が窓の外に設けられていたが、そこを上からすり抜けて脱出した。計画的にやったのか、チャンスと思って行動したのかは定かではない。
とにかくまた走った。どうしてかはわからないけど、徒歩30分程にあるファミレスに気が付くと入っていた。
そこに置いてあった公衆電話で祖母の家に電話をして、逃げてきたことを伝えた。迎えにきてくれるようで、ファミレスに入って待った。
そこの光景は鮮明に覚えていて、ドリンクバー横の四人がけの席に案内されて座った。
母親が後から来ることを店員さんに伝えたと思う。僕はセルフサービスの水を飲みながら母親を待った。
今考えると、ものすごく迷惑な客だし、お店側もよく通報しなかったなと思う。本当にあの時の従業員の方たちには感謝している。
しばらくすると母親がタクシーで来てくれて、そこからそのお店でご飯を食べた。母親は店員さんに感謝を伝えていた。あの時のハンバーグは美味しかったなとこれを書きながら思い出に浸った。
今を全力で楽しむこと 甘鯛 @pinapon
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