第12話

 それは突然起こった。

 学校が終わり、いつものように祖母の家に帰るため、バス停へと向かった。

 その日は、母親とバス停で待ち合わせて、駅前の焼き鳥屋で焼き鳥を食べる約束をしていた。

 もしかしたら、この生活に慣れてきてしまっていたのかもしれない。あれ程警戒していたのに学校の校門を出て少しして後ろから腕を掴まれた。

 父親に待ち伏せされていたのだ。これ程後悔したことはなかった。

 前までは校門を出る前に廊下から外を覗いたりして慎重に行動していたのに。ましてや、一つ角を曲がれば母親が待っているのに。

 何もできず、ただただ家に連れ戻された。その時も逃げ出そうと思えば逃げ出せたはずなのに、恐怖で何もできなかった。

 何を話したのか、何をされたのか家に連れ戻された時の記憶は残っていない。兄弟ともその時会ったはずなのにその時の情景も覚えていない。

 覚えているのは、僕が使っていた机の上に散乱した、壊された僕のゲーム機やプラモデルの残骸の光景だけだった。

 

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